日々の業務で得た知見をもとに、知財や契約に関する内容を中心に備忘録としてまとめています。
あくまで一知財部員の主観を含む内容のため、参考程度にご覧ください。
動画でも知財・契約関連の事例を取り上げています。
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以前、取適法(旧下請法)に関して「発注前の作業依頼や取引額の減額は常に問題?」というタイトルで記事にしている。 発注前の作業依頼や取引額の減額は常に問題? 2026年1月より、下請法(下請代金支払遅延等防止法)が取適法(製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律... ここで取適法対象取引の場合、発注前の作業依頼や取引額の減額だけでなく、支払期日についても注意が必要である。 取適法では、委託事業者に対して、中小受託事業者から成果物を受領した日から60日以内、かつ、できる限り短い期間内に支払期日を定める義務が課されている。 ここでは、取適法における支払期日のルールについて整理する。 現金払いが原則 旧下請法では、支払期日を60日以内に設定することに加え、一定の要件の下で手形によって下請代金を支払うことも認められていた。 これに対して、取適法では手形による支払が一律に禁止された。 したがって、取適法の対象となる取引については、手形ではなく、現金による支払が必要となる。 「成果物の受領」が60日ルールの起算点 60日ルールでは、成果物を受領した日が起算点となる。 ここで注意したいのが、納品後の検収に要する期間も60日の中に含まれるという点である。 したがって、「検収完了日から60日以内」というように、検収の完了を起算点として支払期日を設定することは認められない。 また、企業によっては「請求書を受領してから支払処理を開始する」といった社内ルールを設けている場合もあるだろう。 しかし、請求書の提出を支払処理の起点とすること自体は社内手続上の問題にすぎず、それによって取適法上の支払期日を後ろ倒しにすることはできない。 例えば、成果物を7月1日に受領したにもかかわらず、請求書の提出が8月になったことを理由として支払日を遅らせる、といった運用は避ける必要がある。 公正取引委員会も、社内手続上、受託者からの請求書が必要な場合には、受託者が請求額を集計して通知するための十分な期間を確保しておくことが望ましいとしている。 さらに、請求書の提出が遅れた場合には、速やかに提出するよう督促し、支払遅延とならないよう代金を支払う必要があるとしている。 つまり、「請求書が届いていないから支払えない」という事情によって、60日ルールを超えてよいわけではないということである。 「60日ルール」は当事者間の合意でも変更できない 取適法の支払期日に関する規定は、当事者間の契約によって自由に変更できるものではない。 例えば、契約書に「成果物の受領日から90日後に支払う」と定めていたとしても、取適法の対象となる取引であれば、そのような定めによって60日ルールを超えることはできない。 したがって、契約書を作成する際にも、取適法の支払期日に関する規定と矛盾しないよう注意する必要がある。 「月末締め翌月末払い」は問題になる? では、継続的な取引でよく見られる「月末締め翌月末払い」という支払条件はどうだろうか。 一見すると、月初に納品された場合、受領日から60日を超えてしまう場合があるようにも思える。 例えば、7月1日に成果物を受領し、7月末締め・8月末払いとした場合、単純に日数を数えると61日後の支払となる。 しかし、公正取引委員会は、このような月単位の締切制度について、「受領後60日以内」を「受領後2か月以内」として運用している。 そのため、31日の月をまたぐことで、暦日ベースでは61日目や62日目の支払となる場合であっても、月単位の締切制度に基づく支払であれば、直ちに支払遅延として問題となるわけではない。 したがって、「月末締め翌月末払い」という支払条件自体が、取適法上ただちに違法となるわけではない。 ただし、取適法では支払期日について別途、**「できる限り短い期間内」**という要請もあるため、単に「60日以内なら何でもよい」と考えるのは適切ではない。 支払期日は具体的な日を特定できるように定める 取適法では、支払期日について、単に「○日以内に支払う」という期限だけを示すのでは足りない。 具体的な支払期日を特定できるように定める必要がある。 公正取引委員会のQ&Aでは、例えば次のような支払期日の定めについて説明されている。 ①「○月○日まで」 ②「納品後○日以内」 ③「○月○日」 ④「毎月末日納品締切、翌月○日支払」 このうち、①と②は支払の期限を示しているだけで、具体的な支払日が特定できないため認められない。 一方、③は具体的な支払日が特定できるため認められる。 ④についても、月単位の締切制度を採用することで具体的な支払日を特定できるため、認められる。 なお、定められた支払期日より前に代金を支払うことは問題ない。 したがって、「納品後○日以内」といった定めではなく、実際の支払日を特定できるような契約条件にしておく必要がある。 できる限り短い期間で支払う ここまでを見ると、「60日以内であれば、60日目に支払えばよい」と考えてしまうかもしれない。 しかし、取適法の条文は、単に60日以内に支払期日を定めればよいとはしていない。 第三条 製造委託等代金の支払期日は、委託事業者が中小受託事業者の給付の内容について検査をするかどうかを問わず、委託事業者が中小受託事業者の給付を受領した日(役務提供委託又は特定運送委託の場合にあつては、中小受託事業者からその委託に係る役務の提供を受けた日。以下同じ。)から起算して、六十日の期間内において、かつ、できる限り短い期間内において、定められなければならない。 このように、条文には**「できる限り短い期間内」**という文言がある。 したがって、取適法の対象取引では、「60日以内ならよい」と機械的に考えるのではなく、事務処理上可能な範囲で、できる限り早く支払うことが求められている。 例えば、通常の社内処理で30日後に支払えるにもかかわらず、特段の理由なく一律に「納品から60日後」と設定するような運用については、この「できる限り短い期間」という要請にも注意する必要がある。
「特許」と聞くと、最先端の技術や複雑な機械など、高度な発明をイメージする人が多いだろう。 しかし、実際の特許公報を見てみると、「こんなものまで特許になるのか?」と思わず驚いてしまうような発明も存在する。 アクティブタイムバトル(特許第2794230号 ファイナルファンタジーシリーズで有名な「アクティブタイムバトル(ATB)」である。 ATBは、キャラクターごとに時間が溜まり、一定量に達したキャラクターから行動できるようになるゲームシステムである。 従来のターン制バトルに比べてリアルタイム感のある戦闘を実現しているのだが、出願当初は特許庁から「これって単なるゲームルールでしょ?」と拒絶理由を受けている。 特許法上、ゲームのルールなど人為的な取り決めそのものは、自然法則を利用した「発明」には該当しない(特許法29条1項柱書)。 これに対して出願人は、タイマや計時制御手段、キャラクタ制御手段などをコンピュータのハードウェア資源と協働させて具体的に実現するものだと反論し、最終的に登録に至った。 なお、現在は権利満了となっている。 恋愛ゲーム(特許第5710187号) こちらは、恋愛シミュレーションゲームに関する特許である。 プレイヤーの選択によってヒロインの好感度が変化し、一定以上になるとヒロインから告白される。 そして告白を受け入れればエンディング、断れば以降そのヒロイン関連のイベントが発生しなくなる。 一度振った相手とは、その後の関係がなくなるという、妙に現実的な仕組みである。 さらに「耐久パラメータ」も設定されている。 何度も告白を断るとパラメータが低下し、最終的には本来望んでいない相手からの告白を断れず、なし崩し的に受け入れてしまうという展開になるというわけである。 驚くべきことに、発明者には秋元康さんの名前があり、おそらくAKBの恋愛ゲームに採用されているシステムではないかと思われる。 ゲームのストーリーや演出も、コンピュータ上で実現する具体的な仕組みとして構成すれば、特許の対象になり得るのである。 なお、明細書はかなりしっかりと記載されているようで、図面はデータ構成やフローチャートも含めて35個も掲載されている。 体モノマネシャツ(特許第6366202号) 芸人・秋山竜次さんが発明者となっているユニークな特許である。 シャツの裏側に、モノマネ対象となる人物の顔を上下逆さまにプリントしておき、裾を持ち上げることで、その顔が演者自身の顔と重なって見えるようにする。 お面などの小道具を持たずに顔を変化させられるので、観客に意外性を与え、盛り上がる発明とされている。 しかし、実は出願前から秋山氏自身がこの芸を披露していたWeb記事が存在したため、新規性が問題となっていた。 そこで、シャツの星マークの位置を工夫し、プリントされた顔と演者の顔が適切に重なるような構成を加えることで、権利化が認められている。 「面白いアイデア」であるだけでなく、従来技術との具体的な違いを構成として示す必要があることが分かる事例である。 地球の温暖化防止方法(特許第3742868号) ここからスケールが一気に大きくなる。 この発明は、長さ数百メートルのヒートパイプを雲より高い位置まで地表から垂直に立て、地表の熱を上空へ放出することで地球温暖化を防止するというものである。 問題となったのは、「本当にそんなものを実施できるのか」という点である。 特許庁からは、「建設費や建設場所などを考えると、実際上実施することが困難ではないか」として拒絶理由が通知された。 これに対し出願人は、「地球の破壊を防ぐためなら、どれだけ費用がかかっても、建設が難しくても、それを克服する努力が必要だ」という趣旨の反論を展開した。 まさに根性論ともいえる反論であるが、その熱い想いが審査官に通じたのか、最終的には拒絶理由が解消され、特許登録に至っている。 故人の弔い装置(特許第2655018号) さらに壮大なのが、月を墓地にしてしまう発明である。 故人の遺品を入れたカプセルを月に打ち上げ、地球から見える月の表側に着陸させ、そのカプセルを墓標とする。 さらにカプセルには故人の写真や音声を記録しておき、あらかじめ設定した日時になると、地球上の家族へ送信する。 命日に家族が仏壇の前に集まると、月の墓から故人の声や写真が届くというわけだ。 ここでも「本当に実施できるのか」が問題となった。 明細書には、カプセルを月まで飛ばす具体的な方法が十分に記載されていなかったためである。 これに対して出願人は、百科事典を根拠に、「月にロケットを飛ばす技術自体は既に存在しているから、実現もそんなに難しいことではない」と反論した。 そして、この発明も最終的には特許登録されている。 月にカプセルを飛ばし、かつ墓標にする技術は、相当難しい気がするのだが・・・。 ゴルフシミュレーター(特許第4041197号) 「画面に風速10m/sと表示されても、実際にどんな風なのか分からない。それなら本当に風を吹かせればいいじゃない!」という発明である。 ゴルフ練習打席を取り囲むように空気ダクトを設置し、複数の吹き出し口を制御することで、ゲーム内の風向きや風速を実際の風として再現する。 画面で見るだけだった「風」を、身体で感じられるようにしたわけである。 そして、発明者には孫正義さんも名を連ねている。 孫さんは19歳のときに音声付き電子翻訳機を発明して企業に売却し、事業資金を得たという逸話もあり、発明家としての一面も持っている。 ワンクリック特許(特許第4959817号) 次は、Amazonの「ワンクリック注文」に関する特許である。 あらかじめ住所や決済情報などを登録しておけば、商品を1回クリックするだけで注文できる。 入力や確認といった面倒な操作を省略できるため、ECサイトでの購入を大幅に簡単にした。 さらに、同じユーザーが続けて行ったワンクリック注文を、サーバー側で一つの注文にまとめる仕組みも含まれている。 一見すると非常にシンプルな発明だが、消費者の利便性を大きく向上させた点に価値がある。 AppleがAmazonから特許ライセンスを受け、Apple Storeでも同様にワンクリックでの注文を可能としていた経緯からも、その価値の高さが伺える。 この特許は2018年に権利満了しており、現在では同様の仕組みを他社が採用することも可能である。 シンプルな仕組みだからこそ、特許として成立すると強い権利になり得るという好例だろう。 揚げ出し卵豆腐(特許第2051580号) 特許は、なんと料理にも存在する。 この発明は、その名のとおり「卵豆腐を油で揚げてなる揚げ出し卵豆腐」である。 明細書はわずか2ページほどで、卵豆腐を油で揚げることで、風味、香り、舌触りが良好になると説明されている。 「これで特許になるの?」と思ってしまうが、特許になるかどうかは、発明の見た目ではなく、新規性や進歩性などの要件を満たすかどうかで決まる。 もし権利が存続していれば、料理店が業として揚げ出し卵豆腐を提供する行為について、特許侵害が問題になる可能性もある。 一方、自宅で作って自分で食べるような行為は、原則として「業として」の実施には当たらない。 なおこの特許権はすでに消滅しているので、お店でも気兼ねせずに揚げ出し卵豆腐を提供することができるので、安心してほしい。 令和を表現する花火(特許第6990856号) 発明者は、発明家として有名なドクター中松さんである。 外側に数字の「0」を模した花火、その内側に円形の花火を打ち上げることで「令和」を表現するという発明である。 そのロジックは、外側の「ゼロ」=「零」、内側の円=「輪」として、「零輪」=「令和」とするもの。 まさかのダジャレである。 さらに、この花火によって新時代の到来を告げ、観客を楽しませ、集客・増収につなげるという効果まで説明されている。 花火の発光に合わせて「レイワー」という音声を流せば、さらに効果が高まるという。 「たまやー」ではなく「レイワー」というわけだ。 二次元コード付きネイルシール(特許第6232548号) 一見するとファッションや広告に関する発明に見えるが、その目的は認知症患者の安全確保である。 徘徊中の患者が保護された際に身元を確認できるよう、二次元コードを身につけてもらう。 しかし、衣服や靴では患者が脱いでしまう可能性があり、身体に直接コードを書くのも人間の尊厳という観点から問題がある。 そこで着目したのが「爪」である。 爪なら簡単には取り外せず、時間が経てば伸びて切り取られるため、身元確認用の情報を保持する手段として適しているというわけである。 一見すると奇抜なアイデアだが、その背景には患者や家族の安全を守るという、非常に真面目な課題がある。 斜めに傾く靴(米国特許第5255452号) 最後は、知っている人も多いかもしれないが、マイケル・ジャクソン氏の有名なダンスに関する米国特許である。 「Smooth Criminal」で披露された、身体を大きく前方に傾けるパフォーマンスを実現するための靴である。 靴のかかと部分に特殊な切り込みを設け、ステージから突き出したピンに引っ掛けることで、通常なら転倒してしまうような前傾姿勢を可能にする。 発明の名称は「Method and means for creating anti-gravity illusion」、つまり「反重力のイリュージョンを作り出す方法および手段」。 非常に格好いい名称である。 発明者にはマイケル・ジャクソンのほか、衣装や小物を手掛けたマイケル・ブッシュ氏、デニス・トンプキンス氏も名を連ねている。 「こんなものまで特許に?」から見えてくること こうして紹介してみると、ゲームから料理、月面の墓、花火、ダンス用の靴まで、特許の対象となる発明が非常に幅広いことが分かる。 もちろん、「面白いアイデアなら何でも特許になる」というわけではなく、新規性や進歩性、実施可能性など、様々な要件をクリアする必要がある。 ...
任天堂株式会社および株式会社ポケモンが、パルワールドをリリースしている株式会社ポケットペアを相手取り、特許権侵害訴訟を提起した。 2026年8月現在、本件は東京地方裁判所に係属中である。 「なぜ著作権ではなく特許で戦ったのか?」 「分割出願ってそんな使い方ができるの?」 今回は、これまでの両者の動きを知財の観点から整理してみたい。 なぜ著作権侵害を問わなかった? 巷では「パルワールドはモンスターデザインやボールでモンスターを捕獲するシステム等がポケモンと似ている」と言われており、著作権侵害で争う方が自然にも思える。 しかし、知的財産権の観点から見ると、特許権を選択したことには合理的な理由があるように思われる。 ゲームシステムは著作権の保護対象外 まず、ゲームシステムやルールは基本的に「アイデア」である。 著作権法が保護するのは「創作的な表現」であり、「捕獲アイテムを投げる」「捕獲したモンスターを仲間にする」といったゲームシステムそのものは原則として著作権の保護対象にならない。 もしアイデアまで保護してしまうと、そのアイデアからゲームを作ること自体が難しくなってしまうことから、自由な創作活動を守るべくアイデアは保護の対象外としているのである。 例えば、「ボールを投げてモンスターを捕まえる」というシーンを描いたイラストやゲーム画面であれば、著作権の保護対象となる。 作風・画風そのものは保護対象ではない 次にキャラクターデザインだが、「色使い」「タッチ」「構図」といった作風そのものも、著作権の保護対象とはならない。 もし作風そのものまで保護してしまうと、作風に触発されることで生じる新たな創作や表現を阻害するおそれがあるためである。 つまり、一見「あの作品のキャラっぽい」と感じられたとしても、単なる作風の類似に留まるのであれば著作権侵害とならない。 著作権侵害が認められるには、作風の類似に留まらず、既存キャラクターの「表現上の本質的な特徴(※)」までも類似する必要があるため、思った以上に高いハードルとなる。 ※「単なる事実の記載」「ありふれた表現」「表現でないアイディア(作風・画風)」は含まれない 任天堂は著作権侵害で戦えるのか パルワールドのモンスターは「ポケモンっぽい」と言える程度に作風は似てるのかもしれないが、登場キャラクターの大半で著作権法上の類似性が認められるかというと、個人的にはハードルがかなり高いのではないかと思う。 上述の通り、作風が似ているだけでは著作権侵害とはならない。 また、例えば「大きな顔」「短い手足」「丸みを帯びた胴体」といった表現はありふれていることから、たとえこれらの表現が類似していても、類似部分を「表現上の本質的な特徴」と主張するのは苦しい。 もちろん、一部のモンスターについては表現上の本質的な特徴までも類似しており、著作権侵害が成立するケースはあり得る。 しかし、それならそのモンスターだけを削除したり差し替えれば済む話なので、モンスターが200種類以上登場するパルワールド自体の販売差止めに繋がるとは考えづらい。 したがって、現時点で著作権で争うことは、必ずしも得策ではないと任天堂が考えた可能性がある。 特許権による戦い 著作権とは異なり、特許権はゲームシステムを具体的な技術的構成として権利化することが可能である。 例えば、 プレイヤーの操作方法 捕獲アイテムの使用条件 モンスターの召喚方法 捕獲モードと戦闘モードの切替方法 などの構成を出願していれば、(特許性があるかという問題はあるが)ゲームシステムそのものを保護対象にできる。 そのため、状況によっては、著作権よりも特許の方が強力な武器になる場合がある。 もちろん任天堂が著作権ではなく特許権侵害訴訟を選択した理由は公表されていないが、ゲームシステム自体を保護対象とし得る特許権の方が、ポケットペアに対する差止請求や損害賠償請求を行いやすいと判断した可能性はある。 分割出願という戦略 任天堂は、権利行使にあたって分割出願制度を活用としている。 分割出願とは、係属中の特許出願(原出願)から別の特許出願を派生させる制度である。 特許出願は**「どこまで権利として認めてほしいか」を記載した「請求項」と、その内容を詳しく説明した「明細書」**から構成される。 つまり、請求項に係る発明が権利範囲となるのであって、明細書に記載された発明の詳細な説明すべてが権利範囲となるわけではない。 しかし、明細書には出願当初の請求項に記載された発明以外にも、将来別の請求項として利用できる技術内容が記載されていることが多く、分割出願をすればその技術内容についても後から権利化できるというわけである。 そして分割出願のメリットとして挙げられるのは、分割出願の出願日は、原出願の出願の時にしたものとみなされる点である。 つまり、特許出願後に競合製品が出てきたら、競合製品の中身を調査した上で、その製品が特許権を侵害するように請求項を検討して分割出願を行う、という運用が制度上可能である。 もちろん、元の明細書に記載されている内容の範囲内でしか分割できず、新しい技術事項を書き足すことは認められない。 しかし逆に言えば、最初の明細書を十分広く記載しておけば、市場に登場した競合製品を見ながら、それに近い権利範囲へ請求項を組み替えることも制度上は可能である。 「後出しジャンケンじゃないか!」と感じる人もいるかもしれないが、この手法は日本の特許実務では珍しいものではなく、有効な知財戦略の一つとされている。 なお、任天堂は2026/8/1時点で1つの原出願から7つもの分割出願を行っており、しかも一部は特許庁に係属させることで更なる分割出願の余地も残している。 設計変更とのいたちごっこ とはいえ、特許権も万能ではない。 特許は請求項に記載された構成が権利範囲となるため、その一部を変更すれば侵害を回避できる(但し、一部例外もある)。 例えば、 ボールを投げる モンスターを召喚する モンスター同士を戦わせる からなる特許発明があったとき、最初の「ボールを投げる」構成を「杖を振る」といった構成に変えれば、「モンスターを召喚する」「モンスター同士を戦わせる」構成が共通でも権利侵害を免れることができる。 ポケットペアも、パルワールドの仕様を以下のように変更することで、特許権の侵害を回避しようと試みている。 「ボールを投げてモンスターを召喚する」機能を削除し、代わりに「プレイヤーのそばに直接召喚する」仕様へ変更 モンスターを呼び出して空を滑空する代わりに、アイテムのグライダーを使用して行う方式に変更 特に装置、機器、物質、医薬品とは異なり、物理的な実体を持たないソフトウェアは基本的に設計変更が容易である。 ポケットペアがバージョンアップを行った結果、変更後のソフトウェアについては、当該特許権の侵害を回避できる可能性が高くなる。 その後も、任天堂は分割出願を継続していることから、設計変更後のパルワールドも視野に入れた権利範囲の構築を試みている可能性がある。 仮に任天堂がゲームのコアとなる基本的な特許を保有していれば、ポケットペアによる設計変更による回避も難しくなり、もっと事情は変わってきていたと思われる。 だが、本来ならゲームとして一般的な「モンスター捕獲・召喚」「モンスターに騎乗して空中移動する」といった演出を、その操作方法等を具体的な技術的構成として権利化していたため、設計変更も比較的容易であったと思われる。 任天堂の反論は通らず 分割出願なら後出しジャンケンも可能だが、もちろん「競合製品をカバーしたい」という発想だけでは特許は取得できない。 例えば、既知技術を単純に組み合わせただけの発明であれば特許として認められないところ、任天堂の分割出願の1つも同様の拒絶理由が通知されていた。 ところが、この審査で少し意外な展開になる。 何と任天堂は、**特許庁が引用した動画を「ポケモンの著作権を侵害するゲーム動画」だと主張し、「審査官がわざわざ侵害品を正規品のように誤った認定をしているのは極めて不適切」**と強い表現で反論した。 これに対し、審査官は「著作権侵害の有無が進歩性判断に影響するとの定めはない」とばっさり切り捨て、拒絶査定を通知した。 拒絶査定の内容だが、「特許実務家にとって標準的な考え方」「非常識な誤解」など、審査官もかなり踏み込んだ表現を用いている。 この件は、筆者も審査官の意見に同調する。 著作権の侵害品であろうと無かろうと、ひとたびその動画が世に出回ればその発明は世の中に公開された技術になるものだから、当たり前だと思う。 この件では、「何で特許の話に著作権侵害を持ち出したのか」「なぜ特許審査で著作権侵害を主張したのか」と疑問視する声も見られている。 任天堂も「著作権侵害品を野放しにしないぞ」という姿勢を見せる意図があった可能性も考えられるが、あまり無理のある主張を展開すると、外部から厳しい評価を受けることもあるのが怖いところである。 レピュテーションも知財戦略の一部 近年はSNSの影響力が非常に大きくなっている。 法的には正当な権利行使であっても、「人気ゲームを潰そうとしている」という印象を一般ユーザーに与えてしまえば、企業イメージに影響する可能性がある。 一方で、権利行使をしなければ、「この程度なら真似しても大丈夫」というメッセージを競合へ与えてしまうおそれもある。 つまり、知財戦略とは単に勝訴を目指すことではなく、 模倣の抑止 ブランド価値の維持 ユーザーからの評価 企業イメージ まで含めてうまく立ち回っていくべき経営判断だと言える。 この裁判がどう決着するかはまだ分からない。 しかし、この事件は「知財は権利を取れば終わりではない」ということをよく示している。 どの権利を取得し、いつ、どのように使うのか。 その戦略次第で、企業の競争力やブランドイメージまで左右される。 パルワールド訴訟は、そんな知財戦略の難しさを考えさせられる、非常に興味深い事例だと思う。
日本の特許権の効力は、属地主義の原則により「日本国内においてのみ認められる」とされている。 そのため、発明の構成要素の一部を国外に配置することで、特許権を容易に回避できるのではないかという問題があった。 例えば、日本でサービスAを提供するプログラムについて特許権を取得していたとしても、国外のサーバから日本国内の利用者へサービスAを提供した場合には、日本の特許権は及ばず非侵害となる可能性があった。 しかし、2025年の最高裁判決では**「一定条件を満たす場合には、実質的に日本国内で行われた行為と評価され、日本の特許権侵害が成立し得る」**との判断が示された。 本記事では、この最高裁判決の概要を紹介するとともに、その背景にあるドワンゴの特許取得戦略についても考察する。 ドワンゴ対FC2事件最高裁判決 ドワンゴは動画配信サービス「ニコニコ動画」を提供しており、動画再生時間に合わせてコメントが流れる機能は、多くの人が目にしたことがあるだろう。 ドワンゴはこのコメント表示機能について特許権を取得しており、日本向けに動画配信サービスを提供していたFC2(米国法人)に対して、2件の特許権侵害訴訟を提起した。 そして、2025年3月3日、それぞれについて最高裁判決が下されている。 詳細については、以下の判決を参照いただきたい。 第1訴訟:令和5年(受)第14号、第15号 特許権侵害差止等請求事件 令和7年3月3日 第二小法廷判決 第2訴訟:令和5年(受)第2028号 特許権侵害差止等請求事件 令和7年3月3日 第二小法廷判決 本件では、FC2の動画・コメント配信用サーバが米国に設置されていたことから、属地主義の下でも日本の特許権侵害が成立するかが主要な争点となった。 判決の概要 最高裁は、国外のサーバから日本国内の利用者へプログラムを配信する行為であっても、一定の場合には日本の特許権を侵害し得るとの判断を示した。 具体的には、 利用者が動画視聴ページにアクセスすると自動的にプログラムが配信されること そのプログラムにより、日本国内の端末上で発明の効果(動画とコメントの表示範囲を調整し、コメントを読みやすくする機能)が実現されること 特許権者の利益に経済的な影響を及ぼすこと(経済的利益が日本国内に及ぶこと) を重視しており、その上で最高裁は プログラムの発明:国外サーバから日本国内への配信は「電気通信回線を通じた提供」(特許法2条3項1号)に該当する 装置の発明:日本国内で装置を完成させるためだけに用いられるプログラムを国外から配信する行為は、間接侵害における「譲渡等」(特許法101条1号)に該当する システムの発明:国外サーバから日本国内へプログラムを配信し、日本の端末と国外サーバとを含むシステムを構築することは「生産」(特許法2条3項1号)に該当する と判断した。 判決文からの抜粋 参考として、第1訴訟判決の一部を抜粋する(第2訴訟にも同趣旨の判示がある)。 ・・・電気通信回線を通じた国境を越える情報の流通等が極めて容易となった現代において、プログラム等が、電気通信回線を通じて我が国の領域外から送信されることにより、我が国の領域内に提供されている場合に、我が国の領域外からの送信であることの一事をもって、常に我が国の特許権の効力が及ばず・・・とすれば・・・特許法の目的に沿わない。そうすると、そのような場合であっても、問題となる行為を全体としてみて、実質的に我が国の領域内における「電気通信回線を通じた提供」に当たると評価されるときは、当該行為に我が国の特許権の効力が及ぶと解することを妨げる理由はないというべきである。・・・ 近年では、インターネットサービスのサーバが海外に設置されていることは珍しくない。 本判決は、そのような技術環境を踏まえ、サーバの所在地という形式面だけでなく、実質的に発明が日本国内で利用され、特許権者の日本での利益に影響を及ぼしているかという実態を重視した点に、大きな意義があるといえる。 特許権取得の戦略 上記の通り、ドワンゴは動画配信サービスにおけるコメント表示機能に関する特許権を取得していた。 もっとも、大元となる原出願(特願2007-053347)では、配信サーバ側に第1のコメント情報記憶部を設けるとともに、端末装置側にも第2のコメント情報記憶部を設け、それぞれのコメント情報記憶部から表示情報を読み出す構成がクレームに記載されている。 つまり、サーバ側と端末側の内部処理まで含めて規定したクレームとなっているため、第三者のサービスを外部から観察しただけでは侵害の有無を判断することは容易ではなかったものと考えられる。 そこでドワンゴは分割出願を活用し、特許性を維持しつつ、第三者に対して侵害を立証しやすいクレームへ補正を行っている。 しかも、分割出願を何度も繰り返すことで、(原出願の出願当初/分割直前の明細書等に記載された事項の範囲内である必要はあるものの)社会情勢や競合他社のサービスを踏まえて権利範囲を調整できるように維持していたあたりは実に周到である。 第1訴訟、第2訴訟で講師された特許権はいずれも分割出願によって権利化されたものであり、それぞれ次のような特徴を有している。 分割出願(第1訴訟) 特許第4734471号 動画に対するコメントの少なくとも一部を、動画表示領域の外側かつコメント表示領域の内側に表示する点を特徴とするよう補正をしている。 これにより、コメント自体が動画に含まれているものではなく、ユーザによって投稿されたコメントであることを利用者が容易に認識できるという効果を主張している。 分割出願(第2訴訟) 特許第6526304号 動画中を水平方向に移動する第1コメントと第2コメントの表示位置が重ならないよう調整する点を特徴としている。 分割出願についての考察 これら2件の分割出願に共通する特徴は、他社サービスの画面表示を確認するだけで侵害の有無を把握しやすいクレームとなっている点である。 また、第2訴訟で行使された特許については、FC2のサービス内容を踏まえた形でクレームが調整された可能性も考えられる。 さらに、これらの特許については、その後も分割出願が継続されており、権利範囲を調整できる体制を維持していたことがうかがえる。 もっとも、分割出願を繰り返したとしても特許権の存続期間が延長されるわけではない。 そのため、これらのファミリー特許は2026年12月11日に権利満了を迎える予定である。
商標法第4条には「商標登録を受けることができない商標」が列挙されている。 その中でも実務上よく問題となるのが、商標法第4条第1項第11号である。 他人の登録商標と同一・類似であり、かつ指定商品・指定役務も同一・類似である場合には、商標登録を受けることができない、というものである。 この拒絶理由を受けた場合の主な対応としては、次のようなものが考えられる。 指定商品・指定役務を削除する 商標が同一・類似ではないことを意見書で主張する もっとも、引用された他人の登録商標が更新されずに消滅した場合には、この拒絶理由は解消される。 他人の登録商標が消滅すると登録できる理由 特許の場合は、たとえ権利が消滅していても、公知技術として新規性・進歩性の判断に用いられる。 そのため、一度消滅した特許と同じ発明について新たに特許を取得することはできない。 これは、一定期間の独占権と引き換えに技術を公開し、権利期間満了後は誰でも自由に利用できるようにすることで、産業の発達を図るという特許制度の目的によるものである。 一方、商標制度の目的は、商品・サービスの出所表示機能を保護し、業務上の信用を維持することにある。 そのため、商標権者が商標を使用しなくなり、更新もしないのであれば、その商標を独占させ続ける必要性は薄くなる。 したがって、商標権が消滅した後は、他の人が同じ商標を出願し、他の拒絶理由がなければ新たな権利者となることができる。 なお、登録前の先願についても、放棄・取下げ・却下があった場合には、先願を理由とする拒絶理由は解消される(商標法第8条第3項)。 以前は消滅後も1年間登録できなかった 以前の商標法第4条第1項第13号では、商標権が消滅しても、消滅後1年間は同一・類似商標の登録を認めないという規定が存在した。 これは、商標の使用によって形成された信用は、使用を止めても一定期間は残るため、その間に第三者へ登録を認めると出所混同のおそれがあると考えられていたためである。 しかし近年では、製品ライフサイクルが短くなり、早期の権利取得に対するニーズが高まった。 その結果、「1年間登録できない」という制限は権利取得を不必要に遅らせるとして、この規定は削除されている。 消滅しそうな商標を狙って出願する場合の注意点 商標の審査では、審査中に引用商標が消滅した場合でも、その時点で拒絶理由は解消される。 そのため、「引用商標はもうすぐ更新期限だから、とりあえず出願してしまおう」と考えたくなるケースもある。 しかし、商標出願をすると、通常は出願から2、3週間程度経過後に出願内容が一般公開される。 その結果、これまで更新するつもりがなかった商標権者が公開公報を見て、「他社も欲しがっているようだ。やはり更新しておこう。」と考え、更新手続きを行う可能性もゼロではない。 もちろんケースバイケースではあるが、更新期限が近いのであれば、ギリギリまで出願を待った方が安全な場合もある。 もし、満了を迎えそうな他社商標の存在を理由に拒絶理由を打たれた場合は、意見書に以下のような文面を入れておくことも考えられる。 引用商標については、更新手続きがなされておりません。したがいまして、引用商標の存続期間の満了後6月経過後、商標原簿で存続期間の満了が確認された場合は、商標法第4条第1項第11号には該当しなくなったものとしてお取り扱い下さいますよう、お願い申し上げます。 それでも制限が発生するケースがある もっとも、商標権が消滅したからといって、必ず登録できるわけではなく、他者の使用を排除できるとも限らない。 周知商標に該当する場合 前権利者が使用を続けた結果、その商標が周知となっている場合には、その周知商標と同一・類似であり、同一・類似の商品・役務について使用する商標は登録を受けることができない(商標法第4条第1項第10号)。 先使用権が成立する場合 また、前権利者が商標権消滅後も継続して商標を使用しており、一定の周知性を有している場合には、先使用権が認められる可能性がある(商標法第32条第1項)。 この場合、後から商標登録を受けた者は、混同防止表示を付すことを請求できる(商標法第32条第2項)。 「周知性」の基準は実は違う? ここで疑問が生じる。 商標法第4条第1項第10号で登録自体が拒絶されるのであれば、そもそも先使用権を認める必要はないのではないか。 この点については学説上、**両者の「周知性」は同じではない(非同一説)**という考え方がある。 この見解では、 商標法第4条第1項第10号の周知性は比較的高い知名度が必要 商標法第32条第1項の周知性は、それより低い識別力・周知性でも足りる とされる。 そのため、第4条第1項第10号に該当するほど有名ではなくても、第32条第1項による先使用権だけは認められるケースがあり得る。 中々複雑である。
特許権の取得に要する費用については、以下の記事で紹介した。 特許の取得~維持にかかる費用 「特許を取得するには、どのくらい費用がかかるのか?」 これから特許出願を検討している人にとって、最も気になる点の一つが費用ではないだろうか... ここでは、参考として商標登録にかかる費用について紹介する。 国内出願・登録時の費用 国内出願では、主に以下の費用が発生する。 特許庁へ支払う手数料 特許事務所へ支払う代理人費用(代理人に依頼する場合) 特許庁へ支払う手数料は、特許庁HPの産業財産権関係料金一覧に掲載されているが、金額は以下の通りである(2026年6月時点)。 登録料は一括納付(10年分)と分割納付(5年分)と選べ、一括納付の方が割安となる。 また、更新時の方が割高となる。 庁費用については、手続料金計算システムで簡単に計算できる。 代理人費用は、特許事務所や区分数によって異なるものの、出願手数料・登録手数料・成功報酬などを合わせて、おおむね2万円~20万円程度が目安となる。 整理すると、以下の通りである。 項目 費用 商標登録出願 3,400円+(区分数×8,600円) 商標登録料(10年分) 区分数×32,900円 更新登録料(10年分) 区分数×43,600円 代理人手数料 20,000~200,000円 例えば3区分で10年間登録し、10年間更新登録するなら、かなりざっくりだが30~50万円程度の費用といったところか。 ご存じかと思うが、特許とは異なり、商標は更新登録料を支払い続ける限り半永久的に権利を維持することが可能である。 外国出願時の費用 外国出願の場合も、各国官庁へ支払う費用、現地代理人費用、日本の代理人費用がかかる。 特に、複数国へ個別に出願すると、それぞれの国で現地代理人が必要になるため、費用が高額になりやすい。 そこで、3か国以上への出願を予定している場合は、代理人費用を大きく抑えられるマドプロ(マドリッド協定議定書)による国際出願を検討するとよい。 マドプロ出願では、主に次の費用が発生する。 日本の特許庁に支払う手数料 WIPOに支払う手数料 国毎の個別手数料(不要な国もある) 代理人に支払う費用 が発生する。 このうち、日本の特許庁およびWIPOに支払う手数料については特許庁HPで確認できる。 また、WIPOに支払う手数料および国毎の個別手数料は、WIPOのMadrid System Fee Culculatorを利用すると簡単に計算できる。 Madrid System Fee Calculator の使い方 Madrid System Fee Calculator にアクセス 実行したい手続き(新規出願、事後指定、更新など)を選択 必要事項を入力 出願年 基礎となる本国官庁(日本の場合は日本国特許庁) 区分(クラス)数 collective mark(団体商標)、certification mark(証明商標)または guarantee mark(保証商標)のいずれかの商標であれば、チェック 商標がカラーの場合はカラー手数料のオプションにチェック 指定国の選択 通常の商標であれば、団体商標・証明商標・保証商標の項目にチェックを入れる必要はない。 なお、日本の商標法では「guarantee mark」の制度は存在しないため、日本の出願人が該当するケースは基本的にない。 白黒商標であれば、カラー商標の項目も選択不要である。 計算結果は、最下部にスイスフラン(CHF)で表示される。
「特許を取得するには、どのくらい費用がかかるのか?」 これから特許出願を検討している人にとって、最も気になる点の一つが費用ではないだろうか。 特許取得には、特許庁に支払う費用だけでなく、特許事務所へ依頼する場合の手数料も発生する。 特許庁に支払う費用は、請求項数や権利維持期間、料金減免制度の利用可否などによって、必要となる金額は大きく変わってくるが、特許庁に支払う料金は公開されているため自分で計算できる。 その一方、特許事務所に支払う手数料は事務所ごとに異なるため、全体の費用感が分かりにくいと感じる人も少なくない。 そこで本記事では、2026年6月時点の料金をもとに、特許庁に支払う費用と特許事務所に支払う手数料の目安を整理し、特許1件当たりに必要となる総費用のイメージをまとめる。 特許庁に支払う費用 特許庁HPの産業財産権関係料金一覧にも掲載されているが、金額は以下の通りである(2026年6月時点)。 特許庁には手続料金計算システムもあるので、容易に計算することができる。 正規料金 料金減免あり(中小企業、大学等) 料金減免あり(中小スタートアップ企業、小規模企業) 出願料 14,000円(外国語書面出願の場合は22,000円) 審査請求料 138,000円+(請求項数×4,000円) 正規料金の1/2 正規料金の1/3 特許料(第1年から第3年まで) 毎年4,300円+(請求項数×300円) 正規料金の1/2 正規料金の1/3 特許料(第4年から第6年まで) 毎年10,300円+(請求項数×800円) 正規料金の1/2 正規料金の1/3 特許料(第7年から第9年まで) 毎年24,800円+(請求項数×1,900円) 正規料金の1/2 正規料金の1/3 特許料(第10年から第25年まで) 毎年 9,400円+(請求項数×4,600円) 第10年分は正規料金の1/2 以降は正規料金と同じ 第10年分は正規料金の1/3 以降は正規料金と同じ 請求項数、権利維持期間によって全体の費用感はかなり異なるが、例えば請求項が10個、10年まで権利維持するのであれば、50万円強となる。 特許事務所に支払う手数料 特許庁費用は自分で計算することができるが、特許事務所に支払う手数料は基本的に事務所に見積もりを出してもらう必要がある。 中には料金表を開示している事務所もあるので、その場合は相談前に概算を出すことも可能である。 概ね以下の表の金額というイメージだが、こちらは自らの経験則等に基づく数値なので、あくまで参考値としていただきたい。 一般的な料金レンジ 明細書作成手数料 250,000~400,000円 出願審査請求手数料 10,000~50,000円 中間処理手数料 200,000~400,000円 権利化手数料(成功報酬含む場合もあり) 50,000~100,000円 合計 51,0000~950,000円 1出願当たりの総費用 概算ではあるが、例えば請求項が10個からなる特許を10年間権利維持する場合は、100万~150万円程度となる。 また、外国にも出願するのであれば更に費用は上乗せされる点は言うまでもない。 外国は、基本的に現地代理人を利用することもあり、日本よりも手数料が高いことが殆どである。 そのため、日本に加え、PCT国際出願で米国、欧州、中国、韓国・・・と世界主要国で権利化するとなると1000万円(!)を超えることも珍しくはない。 全世界で発明の保護を図りたいのは山々ではあるが、医薬品のようによほど重要な特許である場合でなければ、実施国と懐事情とのバランスを踏まえて出願国を選定する必要があるだろう。
海外では、商標取得後も商標を実際に使用していることを証明するための「使用宣誓書」や「使用証拠」の提出が必要となる国が存在する。 この手続きを怠ると権利化や権利維持ができなくなる場合があるので、基本事項は押さえておきたい。 使用宣誓書とは 指定商品役務について商標を実際に使用していることを、商標権者(または出願人)が公式に宣誓する書面である。 もし指定商品役務の中に使用していないものが含まれる場合は、その商品や役務を削除する必要がある。 使用証拠とは 一部の国では、使用宣誓書だけでなく、商標が実際に商業的に使用されていることを示す使用証拠の提出も求められる。 使用証拠とは、消費者が商品サービスを購入する際に目にするものであり、商品サービスと商標との関係が明確に分かる形で使用されている必要がある。 実際には使用していないにもかかわらず、使用証拠を捏造して提出することは虚偽申告にあたるものとして、登録国の法律により罰せられる可能性がある。 例えば商標登録が取り消される原因となるだけでなく、商標権者の信用や、他の商標権の権利行使にも悪影響を及ぼし得るので、AI等で使用証拠を作るようなことはしてはならない。 使用宣誓等が必要な国 使用宣誓書や使用証拠が必要となる国は、以下の通りである(2026年6月時点)。 主要国としては米国が挙げられる。 国 提出物 直接出願 マドプロ経由 米国 使用宣誓書+使用証拠 登録後6月以内(使用意思に基づいた出願の場合。外国登録に基づいた出願なら不要)+登録から5〜6年の間+9〜10年の間+以後10年毎 出願時(使用意思の宣言書。使用証拠は不要)+米国登録から5~6年目+米国登録から9~10年目+以後10年毎 メキシコ 使用宣誓書 登録後3年目から3月以内+更新時 メキシコ登録日から3年後3月以内+国際登録の更新日から3月以内 プエルトリコ 使用宣誓書+使用証拠 連邦商標権はプエルトリコでも権利が及ぶため、米国と同じ? 連邦商標権はプエルトリコでも権利が及ぶため、米国と同じ? ハイチ 使用宣誓書+使用証拠 登録から5年経過後の3月以内 マドプロ非加盟 アルゼンチン 使用宣誓書 登録から5~6年目の間 マドプロ非加盟 フィリピン 使用宣誓書+使用証拠 出願から3年以内+登録後5年経過した1年以内+更新後1年以内+更新後5年経過した1年以内 国際登録日/事後指定日から3年以内+フィリピン登録から5~6年目+国際登録の更新から1年以内+国際登録の更新から5~6年目の間 インドネシア 使用宣誓書 更新時 出願時も更新時も使用証明等は不要 カンボジア 使用宣誓書+使用証拠 登録から5〜6年目+更新から5〜6年目 カンボジア登録から5〜6年目+国際登録の更新から5〜6年目 アルジェリア 使用宣誓書 更新時 国際登録更新時? モザンビーク 使用宣誓書 出願から5年毎 国際登録日/事後指定日から5年以内+国際登録の更新から5年以内毎 カーボベルデ 使用宣誓書 出願時+登録後5年毎の前後6月 出願時+国際登録後5年毎の前後6月 ベリーズ 使用宣誓書 出願時 直接出願と同じ? エスワティニ 使用宣誓書+使用証拠 更新時? 国際登録更新時? ご覧の通り、日本、中国、EU、韓国などでは、使用宣誓書や使用証拠の提出は不要である。 もっとも、日本では不使用取消審判請求、中国では不使用取消請求のように、未使用であることを理由とした取消請求がかけられた場合は、上の表に無い国でも商標を実際に使用していることを証明する資料が必要になる場合がある。 使用証拠に関する要件(米国) 使用証拠に求められる要件は国によって異なるが、代表例として米国を紹介する。 提出時期 使用意思に基づく出願や使用に基づく出願では、登録までの間に使用証拠を提出する必要がある。 さらに、登録後も 登録後5~6年目 登録後9~10年目 以後10年毎 に使用証拠の提出が求められる。 マドプロ出願や外国出願・外国登録に基づく出願であっても登録後の証拠提出は行わなければならず、米国は手続きが大変である。 使用認定の考え方 米国では、ライセンシーによる使用であっても、一定の条件下で商標使用として認められる。 一般消費者に広く公開されていないクローズな取引環境での使用であっても、商標使用と判断される場合がある。 また区分ごとに1つの使用証拠を提出すれば足りるが、追加資料の提出を求められることもある。 ただし、虚偽の申告をした場合には、全区分が取り消される可能性がある。 使用証拠として認められるもの 以下の表に、使用証拠として認められる例/認められない例をまとめている。 単に商標が記載されているだけでは足りず、商品やサービスとの関係が消費者に認識される形で使用されていることが求められる。 証拠として認められる例 証拠として認められない例 商品 商品やパッケージに商標が付された写真、商品・包装のタグ、ラベル 展示会での試作品(コンセプトカーなど)、技術紹介パネル等の展示、セミナー用資料、広告パンフレット、価格リスト、プレスリリース、SNSの広告バナー、名刺、社内業務を行うために使用される書類(請求書、送付状、保証書)、社名が入った文房具などのグッズ 役務 商標が掲載されたパンフレット、カタログ、Webページのスクリーンショット カタログを提出する場合の注意点 カタログを使用証拠として提出する場合には、注文フォーム、電話番号、住所、メールアドレスなど、商品を注文するために必要な情報を含んでいる必要がある。 Webページを使用証拠とする場合の要件 Webページが商品商標の使用証拠として認められるためには 商品の画像または説明があること 商品と関連付けられた商標が表示されていること 注文方法が示されていること の3点が必要となる。 商標と商品説明が離れていたり、多数の他の商標や無関係な情報が表示されていたりすると、商品との関連性が不明確となり、使用証拠として認められないことがある点には注意である。 注文方法としては、ショッピングカート、電話番号、メールアドレスなどが挙げられるが、単なる「お問い合わせ」ボタンやリンクだけでは、注文手段とは認められない。 また、以下のケースに当てはまると、その商標が「商品商標」ではなく、「小売サービス商標」の使用と判断されるケースもある。 ページ上部に商標が表示されている URLに商標が含まれている 同一ページ内に多数の他社商標が表示されている すると、本来登録された商標の対象商品とは異なること、すなわち対象商品について使用した証拠として認められない可能性がある。 このように、Webページを使用証拠としようとすると、ちょっとしたレイアウトの差で判断結果が変わってくるところが怖いところである。
商標出願では、1区分の中に含まれる類似群コードが多すぎると、特許庁から「本当にそんなに幅広い商品・役務について使用する意思があるのか」と疑問を持たれ、拒絶理由を通知される場合がある。 そこまで致命的な話では無いものの、実務で同じ状況になることもあると思うので軽く整理しておきたい。 商標における類似群コードとは 類似群コードとは、商品や役務(サービス)の類似関係を分類するために特許庁が付与しているコードのことである。 商標制度では、同じ区分内であっても、すべての商品・役務同士が類似するわけではない。そこで、互いに類似すると考えられる商品・役務をグループ化し、それぞれにコードを付けている。 例えば、 携帯電話機: 11B01 パーソナルコンピュータ :11C01 のように、それぞれ異なる類似群コードが付与される。 審査においては、商標そのものが似ているだけでなく、指定商品・役務の類似性も重要となるため、類似群コードは先行商標との抵触を調べる際の重要な目安として利用されている。 ただし、類似群コードが同じであれば必ず類似、異なれば必ず非類似というわけではなく、あくまで審査実務上の判断基準の一つである。 1つの商品に複数の類似群コードが付くことがある 類似群コードの数は、商品や役務の数と一致するわけではなく、単一の商品役務であっても複数の類似群コードが付与されることがある。 例えば、スマートフォンという商品には、11B01(携帯電話機)、11C01(パーソナルコンピュータ)という2つの類似群コードが付されている。 つまり、商品役務を1つしか指定していなくても、類似群コードは複数になることがある。 区分表にない表現を用いると類似群コード数が読みにくい 特許庁が公表している商品・役務名の区分表に掲載されていない独自の表現を使用することも可能である(商標法第6条第1項に基づき、商品・役務の内容及び範囲が明確である必要あり)。 独自表現が適切なものとなっているかは事前に特許庁の意見を伺くことができるのだが(確実性を保証するものではない)、どの類似群コードが付与されるか、またいくつ付与されるかは審査段階にならないと分からない。 このとき、次のような問題が生じることがある。 1区分の類似群コードが23個以上あると使用意思を問われる 1区分内に含まれる類似群コードが23個以上となる場合、審査官は出願商標の使用意思の有無について合理的疑義があるものとして、原則として拒絶理由が通知される。 もっとも、これは「出願人が指定した商品・役務について、実際に使用する予定があるのか」という点を確認するためのものであって、23個以上になったからといって直ちに登録できなくなるわけではない。 拒絶理由を受けた場合 もし拒絶理由通知を受けた場合は、以下のような対応が可能である。 指定商品・役務を削除して類似群コード数を減らす 使用予定を示す簡易な資料を提出する 使用予定を示す資料としては、事業計画書、パンフレット、ホームページ案、商品企画書などが利用される。 そのため、類似群コードが23個以上になったとしても、後から対応できるケースが多い。 ちなみに、出願当初から商標の使用又は使用意思に関する証明書類等を提出しておけば、拒絶理由は通知されないようである。 1つの商品役務だけで類似群コードが23個以上となる場合も 単一の商品役務を指定するだけでも、あっという間に類似群コードが23個以上となる場合もある。 代表例として、 飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供 という第35類の役務があり、この役務には、以下の通り実に47もの類似群コードが付されている。 一撃で拒絶理由が通知される数である。 類似群コード 28A01 28A02 28A03 28A04 29A01 29B01 29C01 29D01 30A01 31A01 31A02 31A03 31A04 31A05 31A06 31B01 31C01 31D01 32A01 32B01 32C01 32C02 32D01 32D02 32D03 32D04 32E01 32F01 32F02 32F03 32F04 32F05 32F06 32F07 32F08 32F09 32F10 32F11 32F12 32F13 32F14 32F15 32F16 32F17 33A01 33A03 35K03 もちろん、このようなケースでも、役務自体が明確であり、実際の使用意思が認められれば問題なく登録され得る。 まとめ 商標出願では、1区分内の類似群コード数が23個以上になると、使用意思について拒絶理由が通知される場合がある。 しかし、 23個以上になっただけで直ちに登録できなくなるわけではない 商品・役務を削除することで対応可能 使用予定を示す資料を提出する対応も可能 1つの商品や役務でも複数の類似群コードが付くことがある 役務によっては1つだけで47もの類似群コードが付される例も存在する といった点を踏まえると、類似群コード数が23個を超えること自体を過度に心配する必要はない。 特に、区分表にない独自の記載を用いる場合は、審査段階で想定外の類似群コードが付与される可能性もあるため、「23個を超えないよう厳密に管理する」というよりも、拒絶理由が通知された際に適切に対応するという姿勢で臨む方が実務上は現実的といえる。
新しい商品名やサービス名を検討していると、商標調査の段階で「既に他社が登録していた」というケースはありがちである。 その場合、基本的には別の名称やロゴへ変更するのが安全な対応となる。 もっとも、ブランド戦略上どうしてもその名称を使いたい場面もある。 そのような場合に検討される代表的な選択肢を整理する。 ###何はともあれ、「相手方の使用状況」の調査から どの選択肢を取るにしても、まず必要となるのが、相手方の登録商標の使用状況の確認である。 実際に現在も使用されているのか どの商品・サービスで使用されているのか どの程度市場で認知されているのか グループ会社やライセンシーによる使用はあるか といった調査結果によって、取りうる戦略が大きく変わる。 例えば、相手方が積極的に使用している商標であれば交渉中心となりやすい。 一方、長期間使われていないのであれば、後述する不使用取消審判も視野に入る。 ライセンスを受ける 最もオーソドックスなのが、権利者からライセンスを受ける方法である。 比較的実現可能性が高く、相手方との関係を維持しやすい点がメリットである。 一方、ライセンス料を継続的に支払う必要が生じる。 また、ライセンス契約の条件によっては使用範囲や品質管理などの条件が付く場合がある。 ライセンサーがビジネスに使っていれば、当然自分の商品サービスと混同する使い方はしてもらいたくないだろうし、多少の限定が入るのは致し方ないところである。 さらには、ライセンス契約終了時に名称変更を迫られる可能性もある。 長らく使って、ようやくブランドも育ってきたタイミングでの名称変更はかなり痛い。 というわけで、「とりあえず使いたい」という場面では有力だが、自社ブランドとして長期運用する場合は契約条件を慎重に確認する必要がある。 有名な実例としては、Appleが、インターフォン製造企業であるアイホンから「アイホン」の商標使用許諾を受けているケースがある。 権利を譲渡してもらう 相手方から商標権そのものを譲渡してもらう方法である。 こうすれば、ライセンス条件など気にせず、使用の自由度が非常に高まるわけだが、そもそも相手方が買い取りに応じるのかという問題もある。 商標権者が現在も商品サービス名としてガンガン使っていれば、譲渡はあまり期待できない。 しかも、相手方によっては、こちらの足元を見て譲渡金額を吹っかけてくる可能性もある。 というわけで、先方が商標を殆ど使用しておらず、かつそれなりに素性もしっかりした企業であることが前提となる選択肢かもしれない。 自社でも出願する 次に考えられるのが、自社でも商標権を取得することとなる。 しかし、通常は相手方の先行商標の存在を理由に権利化できないことが予測される。 相手の持っている商標と同一類似と思っているから、ライセンスや買い取りを考えているわけなので、それはそうだろう。 それでも、他社商標とは別に自社出願を登録させる方法として以下2つの方法が考えられる。 コンセント制度の活用 近年、日本でもコンセント制度が導入された。 これは、先行権利者の同意を得た上で、自社も同一・類似商標を登録できる制度である。 相手の同意は必要だが、それがあれば権利化できる・・・と事が進めば良いのだが、残念ながらそうは行かない。 特許庁側で、「これを登録したら、出所混同のおそれあり」と判断されれば、容赦なく拒絶理由が飛んでくる。 よって、先行商標との関係性を見極めた上でこの制度を利用するか判断しなければならない。 アサインバック ややテクニカルな方法として、アサインバック型のスキームもある。 具体的には、以下のようなステップで商標権を獲得する。 一旦自社名義で出願 出願人を相手方に変更 権利化(先行登録商標の権利者と、出願中の商標登録出願の出願人が同じとなるため) 得られた商標権を自分に譲渡してもらう こうすることで、コンセント制度と比べて権利化可能性は上がる。 コンセント制度が導入される前は、よく使われた手法である。 しかし、スキームが複雑であるので手間であるし、登録後の互いの使用形態によっては、結局出所混同の可能性が生じて揉める可能性もある。 よって、登録すればヨシ!ではなく、アサインバック後の運用も考えておかないといけない。 不使用取消審判 相手方が継続して商標を使用していない場合、不使用取消審判を検討できる。 具体的には、継続して3年以上日本国内において権利者が登録商標の使用をしていないという要件となる。 成功すれば障害となる商標を除去でき、その後自社で自由に出願可能となる点は大きいが、相手方と敵対関係になるというリスクも伴う。 また、商標を使っていないと思っていた相手方が使用証拠を提出してくる可能性もあり、その場合は失敗して関係悪化だけが残ることとなる。 そのため、相手方の使用状況の事前調査が非常に重要となる。 まとめ 他社の登録商標が存在していた場合、原則としては名称変更が安全であるが、どうしてもその商標を使用したい場合には、以下のような選択肢が存在する。 手段 メリット デメリット ライセンス - 実現可能性が高め - 相手方との関係を維持しやすい - 継続的なライセンス料の支払いが必要 - ライセンス条件に制約が付く可能性大 - 契約終了時の名称変更リスクあり 権利譲渡 - 自由に使用できるようになる -譲渡を拒まれる可能性大 - 譲渡金が高額となる可能性あり 自社出願(コンセント制度) - 自社でも権利保有できる - 登録されるとは限らない - 出所混同を生じない使い方が必要 自社出願(アサインバック) - 自社でも権利保有できる - コンセント制度よりも権利化可能性大 -手続き面の負担大 -登録されるとは限らない - 出所混同を生じない使い方が必要 不使用取消審判 - 成功すれば、自由に使用・登録できる - 相手方との関係性悪化 - 取消が認められない場合あり もっとも、どの手段を取る場合であっても、最初に重要なのは「相手方が実際にどう使用しているか」の調査である。 使用実態によって、交渉戦略も、法的手段も、大きく変わってくるからである。