実務者のための知財法務

日々の業務で得た知見をもとに、知財や契約に関する内容を中心に備忘録としてまとめています。
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カプコン対コーエーテクモゲームスの特許侵害訴訟|一審517万円から約1億4400万円へ

近年、ゲーム業界では特許訴訟が続いている。 ゲームの特許というと、複雑なプログラムや高度な技術を想像するかもしれないが、身近なゲームの仕組みが特許の対象となることもある。 今回は、2014年にカプコンがコーエーテクモゲームスに対して提起し、最終的に1億4000万円もの損害賠償が認められた特許権侵害訴訟を取り上げる。 本件は、特許の有効性や技術的範囲だけでなく、間接侵害、訂正請求、進歩性、損害賠償額の算定など、知財実務上の重要な論点を含む事例である。 カプコンが特許権侵害を主張した2つの特許 本件で問題となった特許を、便宜上「特許A」「特許B」と呼ぶことにする。 特許A(権利行使対象:無双シリーズ) 特許Aは、通常のゲームを立ち上げた後、追加のプログラムが記録されたディスクを読み込ませることで、新しいキャラクターや機能、ステージなどを利用できるようにする仕組みである。 コーエーテクモゲームスの「無双」シリーズが、この特許との関係で問題となった。 特許B(権利行使対象:零シリーズ) 特許Bは、画面上には直接表示されない情報を、コントローラーの振動によってプレイヤーに伝える仕組みに関する特許である。 例えば、ゲーム内でプレイヤーのキャラクターに敵や幽霊などが近づいているものの、その存在が画面上では見えない場合を考えてみる。 対象が遠いときには振動の間隔を長くし、近づくにつれて間隔を短くすることで、プレイヤーは画面に表示されていない情報を振動から感じ取ることができる。 こちらは、ホラーゲーム「零」シリーズが問題となった。 一審は特許Bのみ権利侵害(間接侵害)を認める 一審の大阪地方裁判所は、特許Aについて、新規性欠如の無効理由があるとして、カプコンによる権利行使を認めなかった。 コーエーテクモ側からファミコンソフト「ディープダンジョン」シリーズに関する技術が示され、特許Aの新規性が争われた結果、一審では特許Aについて権利行使が認められなかったのである。 特許Bについては、コーエーテクモ側のゲームに対する特許権侵害が認められたものの、ロイヤリティ料率は売上げの0.5%と、決して高額とはいえないものであった。 結果、一審で認められた損害賠償額は517万円であった。 なお特許Bについて注目したいのが、間接侵害という論点である。 特許Bは、コントローラーの振動によってゲーム内の情報をプレイヤーに伝える仕組みに関するものだったが、ゲームソフトそのものがコントローラーを振動させる機能を備えた遊戯装置そのものというわけではない。 しかし、ゲームソフトをゲーム機に装填してその動作させることで、その遊戯装置全体が特許発明を実施することとなる。 本件では、ゲームソフトをゲーム機に装填した遊戯装置全体の生産にのみ用いる物であることを理由として、ゲームソフトについて間接侵害が認められたのである。 控訴審で特許Aの判断が覆る 一審の判断を不服としたカプコンが控訴したところ、知財高裁では、特許Aについて、一審とは異なる判断が示された。 高裁は、特許Aについて新規性欠如の無効理由があるとは認めず、コーエーテクモ側の一部のゲームが特許発明の技術的範囲に属すると判断した。 つまり、一審では権利行使が認められなかった特許Aについても、控訴審では特許権侵害が認められることになったのである。 この判断を理解するうえで重要なのが、特許の訂正と、進歩性を判断する際の「阻害要因」である。 訂正請求によって何が変わったのか 特許権侵害訴訟では、相手方から特許に無効理由があると主張されることがある。 そのような場合、特許権者が訂正請求によって特許請求の範囲などを訂正し、特許の内容を限定することで、無効理由を解消しようとすることがある。 本件では、カプコンは、追加ディスクに関する記憶媒体から「セーブデータを記憶可能な記憶媒体」を除くように特許を限定する訂正を行ったのである。 この訂正が、阻害要因の判断において重要な意味を持つことになった。 ディープダンジョンシリーズと阻害要因 特許Aの有効性を判断するうえでは、先行技術から当業者が容易に発明できたか、すなわち進歩性があるかという点も重要になる。 ここで問題となった「ディープダンジョン」シリーズは、前作のゲームのプレイ実績を後作に引き継ぐことで、後作を有利に進められるようにし、後作の購入を促すという技術思想を有していた。 つまり、前作のプレイ実績や、それを記録したセーブデータが、後作のゲーム体験に結び付いていたのである。 このような技術思想を前提とすると、前作のキャラクターやプレイ実績をセーブできない記憶媒体に変更することには、技術的な不都合があると考えられる。 高裁は、この点を踏まえ、当該変更には阻害要因があり、当業者が容易に想到できたとはいえないと判断した。 損害賠償額は517万円から約1億4400万円へ 控訴審で特許Aについても侵害が認められた結果、損害賠償額は517万円から1億4384万3710円へと、大幅に増額された。 内訳は次のとおりであり、特許Aに関する損害賠償額が全体の大部分を占めている点が目を引く。 特許A:1億2833万3710円 特許B:1551万円 特許Aの損害賠償額が高額になった理由 ゲームの売上げは、ストーリー、キャラクター、グラフィック、音楽、ゲームシステムなど、さまざまな要素によって左右される。 したがって、特許技術が使われているからといって、ゲームの売上げ全体がその特許によって生じたと考えることはできない。 本件でも、ゲーム自体の魅力が売上げに大きく貢献していることは考慮されたが、その一方で、特許Aの追加コンテンツを利用できる仕組みも売上げ向上に相応の貢献をしていると評価された。 また、帝国データバンクの調査報告書では、技術分類を「家具、ゲーム」とする特許のロイヤルティ料率の平均が2.5%とされていた。 高裁は、こうした情報も参酌しつつ、特許Aについては3.0%の料率を認定した。 さらに、対象となる「無双」シリーズのソフトが多岐にわたっていたことから、算定の基準となる売上高は約40億円と認定された。 このように、特許Aについては、比較的高い料率に加え、算定の基礎となる売上高も大きかったことが、損害賠償額が高額になった理由と考えられる。 なお、特許Bについても、特許Aほどの貢献度が認められたわけではないものの、損害賠償額は一審から増額されており、一審で認定された料率は0.5%だったのに対し、高裁では1.5%となった。 本件から学べる知財実務上のポイント 本件から、知財実務上、特に注目したいポイントを3つ挙げる。 間接侵害 特許発明を直接実施する製品そのものではなくても、その製品を生産するためにのみ用いられる物を製造・販売するなど、一定の条件を満たす行為は特許権侵害とみなされることがある。 ソフトウェア単体であっても、ゲーム機などと組み合わせることで特許発明に係る装置が成立する場合には、間接侵害が問題となり得る。 訂正請求 特許に無効理由があると主張された場合、特許権者は、特許請求の範囲などを訂正して、発明の内容を限定することがある。 ただし、訂正すれば必ず特許が維持されるわけではなく、訂正後の発明についても、先行技術との関係や進歩性などが検討される。 本件では、訂正による限定と、先行技術に対する阻害要因の評価が、控訴審の判断を理解するうえで重要となった。 進歩性と阻害要因 ある技術から別の技術を容易に想到できたかを判断する際には、単に技術的な要素を比較するだけでは足りない場合がある。 技術の目的や前提となる考え方から、その構成を変更することが難しい事情があれば、阻害要因として進歩性の判断に影響することがある。 本件では、前作のプレイ実績を後作に引き継ぐというディープダンジョンシリーズの技術思想が、阻害要因の判断に関係した。 まとめ カプコンとコーエーテクモゲームスの特許侵害訴訟では、追加ディスクによるコンテンツ追加の仕組みと、コントローラーの振動によって情報を伝える仕組みという2つの特許が問題となった。 本件は、特許権侵害訴訟において、特許発明の技術的範囲だけでなく、無効理由、訂正請求、進歩性、間接侵害、損害賠償額の算定など、複数の論点が相互に関係することを示している。 特許権侵害の有無によって結論が変わるのはもちろん、特許が有効と判断されるか、そして特許技術が製品の売上げにどの程度貢献したと評価されるかによっても、最終的な損害賠償額は大きく変わり得る。 特に、侵害訴訟を提起された被告側は、特許の有効性について反論してくることが非常に多いので、訂正請求についてはしっかり理解しておきたい。

マリカー裁判の結末は!?任天堂と公道カートをめぐる知財バトル

「マリカー」と聞いて、何を思い浮かべるだろうか。 多くの人が思い浮かべるのは、任天堂の「マリオカート」ではないだろうか。 かつて、公道を走るカートのレンタル事業を行う会社が「MariCAR」「マリカー」などの表示を使用し、さらにマリオなどを思わせるコスチュームを利用したサービスを展開していた。 これに対して任天堂が、表示やコスチュームなどの使用差止め、損害賠償などを求めて提訴した。 東京地裁ではどう判断されたのか 2018年、東京地方裁判所は、旧マリカー社による「マリカー」などの表示、コスチューム、人形などについて、不正競争行為に当たると判断した。 一方で、地裁は、外国語だけで構成されたウェブサイトやチラシについては一定の例外を認めた。 「マリカー」という表示について、「日本語を解しない者の間では周知性が認められない」と判断したのである。 さらに、損害賠償については、会社に対して1000万円が認められたものの、代表取締役個人については、悪意または重大な過失があるとは認められないとして、損害賠償責任を否定した。 知財高裁で何が変わったのか 任天堂と旧マリカー社の双方が控訴し、舞台は知的財産高等裁判所へ移った。 そして2019年の知財高裁判決では、地裁よりも広い範囲で不正競争行為が認められた。 外国語だけのウェブサイトだからという例外も認めなかったのである。 被告側は「マリカーは本件需要者である訪日外国人の間では周知ではない」と主張したが、サービスの需要者は訪日外国人に限られないし、「MARIO KART」という表示は、国外のゲームに関心を有する需要者の間でも、任天堂の人気カートレーシングゲームシリーズを表すものとして「著名な商品等表示」であることを理由としている。 さらに、代表取締役についても悪意または重過失があると認め、会社と連帯して損害賠償責任を負うと判断した。 代表取締役が会社設立当初から唯一の取締役兼代表取締役であり、商号の決定、商標権の取得、表示やドメイン名の使用など重要な事項に関与していたことなどを考慮したものである。 最終的な損害賠償額は、「地裁:会社に1000万円」から、「高裁:会社+代表取締役に連帯して5000万円」へと変わった。 「商標登録していたから大丈夫」ではなかった この事件で興味深いのが、「マリカー」という商標が旧マリカー社によって登録されていた点である。 旧マリカー社は、この商標権があることを理由に「マリカー」という表示を使用する正当な権限があると主張した。 しかし知財高裁は、商標登録の出願時点で、「マリカー」が「マリオカート」を示すものとして日本国内の需要者の間で周知となっていたことなどを認定し、商標権を根拠とする主張を認めなかった。 その後、この「マリカー」商標については、任天堂による無効審判で無効審決とされるとともに、任天堂自身によって「マリカー」商標を登録するに至っている。 この事件から何を学ぶか この事件は、「似た名前を使ったら問題になった」というだけではない。 実際の裁判では、 サービス名・商号 ウェブサイトやチラシ ドメイン名 コスチューム 人形 動画・宣伝 商標権 代表取締役個人の関与 など、事業全体にわたるさまざまな事情が検討された。 知財部の実務でも、他社の有名な商品・サービスを連想させる名称を使用したいという相談はあり得る。 そのとき重要なのは、名称だけを見て判断するのではなく、「誰が、どのような商品・サービスについて、どのような表示や広告を使うのか」を事業全体で見た上で、実際にどれだけ需要者が出所を混同する可能性があるのかを評価することだろう。 そして、自社で商標権を取得しているから何でも自由に使えるとも限らない点は、念のため頭の片隅に留めておきたいところである。

切り餅に切り込みを入れただけで約8億円?越後製菓の切り餅特許事件

切り餅を焼いたとき、餅が横から膨らんで飛び出してしまった経験はないだろうか。 最近の切り餅には、表面に切り込みが入っているものが多い。 この切り込みによって、餅が焼いたときに外へ吹き出すのを抑え、きれいに膨らみやすくなる。 この「切り餅に切り込みを入れる」という身近な工夫をめぐって、会社同士が特許権侵害を争った事件として、「切り餅事件」を紹介したい。 事件の概要 2009年、越後製菓は、佐藤食品工業が販売していた切り餅について自社特許(特許第4111382号)を侵害しているとして訴訟を提起した。 問題となった特許は、簡単にいえば、切り餅の側面に切り込みを設け、焼いたときに餅が横から吹き出すことを抑えるという技術に関するものである。 佐藤食品工業の商品にも側面に切り込みが入っていたのだが、それだけではなく表面にも切り込みが入っていた。 そこで、「この商品は特許の技術的範囲に含まれるのか」が大きな争点となった。 東京地裁では越後製菓が敗訴 2010年、東京地方裁判所は、越後製菓の請求を退けた。 ポイントとなったのは、特許請求の範囲に記載された**「切餅の載置底面又は平坦上面ではなく・・・側周表面に・・・切り込み部又は溝部を設け」**という文言の解釈である。 東京地裁は、この文言について、切餅の上面や下面には切り込みを設けないことまで特許発明の構成として含まれると解釈した。 以下、判決文の抜粋となる。 本件発明の特許請求の範囲(請求項1)の記載及び前記(イ)の本件明細書の記載事項を総合すれば、本件発明は、「切り込みの設定によって焼き途中での膨化による噴き出しを制御できると共に、焼いた後の焼き餅の美感も損なわず実用化でき」るようにすることなどを目的とし、切餅の切り込み部等(切り込み部又は溝部)の設定部位を、従来考えられていた餅の平坦上面(平坦頂面)ではなく、「上側表面部の立直側面である側周表面に周方向に形成」する構成を採用したことにより、焼き途中での膨化による噴き出しを制御できると共に、「切り込み部位が焼き上がり時に平坦頂面に形成する場合に比べて見えにくい部位にあるというだけでなく、オーブン天火による火力が弱い位置にあるため、焼き上がった後の切り込み部位が人肌での傷跡のような忌避すべき焼き形状とならない場合が多い」などの作用効果を奏することに技術的意義があるというべきであるから・・・切餅の「載置底面又は平坦上面」には切り込み部等を設けず、「上側表面部の立直側面である側周表面」に切り込み部等を設けることを意味するものと解するのが相当である。 そのため、佐藤食品工業の商品は特許の構成要件を満たさないと判断したのである。 これに対し、越後製菓は控訴した。 知財高裁で逆転 2011年、知的財産高等裁判所は中間判決を出し、佐藤食品工業の商品が特許発明の技術的範囲に属すると判断した。 ここで重視されたのも、先ほどの「切餅の載置底面又は平坦上面ではなく」という文言であるのだが、ポイントは、たった1つの「読点」の有無であった。 請求項の記載は、「載置底面又は平坦上面ではなく」の後に「読点(、)」を入れず「この小片餅体の上側表面部の立直側面である側周表面に」と、そのまま続いていた。 この文章のつながりから、知財高裁は「載置底面又は平坦上面ではなく」という部分は、その直後の「立直側面である」という部分と一緒になって「側周表面」を修飾していると考えるのが自然だ、と判断した。 つまり、「上面や下面には切り込みを設けてはいけない」という意味ではなく、「切り込みを設ける場所は、上面や下面ではなく、切り餅の側周表面である」という意味に理解するのが自然だと判断した。 このことから、上面や下面にも別の切り込みがあるからといって、それだけで特許の技術的範囲から外れるわけではないと考えたのである。 最終的に約8億円の損害賠償 2012年3月22日、知財高裁は最終的な判決を言い渡した。 東京地裁の判決を取り消し、佐藤食品工業に対して対象製品の製造・販売等の差止めや製品等の廃棄を命じるとともに、約8億円の損害賠償を命じた。 一見すると「餅に切り込みを入れただけ」にも見える技術だが、その技術が商品の販売に大きく貢献していたことなどを踏まえ、巨額の損害賠償につながったのである。 この事件から学べること この事件で特に面白いのは、請求項の記載におけるたった1つの読点の有無が権利解釈の明暗を分けた点である。 また、地裁でも考慮されたように、特許の明細書に記載された発明の効果などが特許発明の技術的範囲の解釈に影響することもある。 知財部や特許事務所としては、単に「発明のすごさ」をアピールするだけではなく、将来の権利解釈まで意識して、請求項や明細書を作り込むことが重要だと考えさせられる事件である。

取適法の「60日ルール」に要注意

以前、取適法(旧下請法)に関して「発注前の作業依頼や取引額の減額は常に問題?」というタイトルで記事にしている。 発注前の作業依頼や取引額の減額は常に問題? 2026年1月より、下請法(下請代金支払遅延等防止法)が取適法(製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律... ここで取適法対象取引の場合、発注前の作業依頼や取引額の減額だけでなく、支払期日についても注意が必要である。 取適法では、委託事業者に対して、中小受託事業者から成果物を受領した日から60日以内、かつ、できる限り短い期間内に支払期日を定める義務が課されている。 ここでは、取適法における支払期日のルールについて整理する。 現金払いが原則 旧下請法では、支払期日を60日以内に設定することに加え、一定の要件の下で手形によって下請代金を支払うことも認められていた。 これに対して、取適法では手形による支払が一律に禁止された。 したがって、取適法の対象となる取引については、手形ではなく、現金による支払が必要となる。 「成果物の受領」が60日ルールの起算点 60日ルールでは、成果物を受領した日が起算点となる。 ここで注意したいのが、納品後の検収に要する期間も60日の中に含まれるという点である。 したがって、「検収完了日から60日以内」というように、検収の完了を起算点として支払期日を設定することは認められない。 また、企業によっては「請求書を受領してから支払処理を開始する」といった社内ルールを設けている場合もあるだろう。 しかし、請求書の提出を支払処理の起点とすること自体は社内手続上の問題にすぎず、それによって取適法上の支払期日を後ろ倒しにすることはできない。 例えば、成果物を7月1日に受領したにもかかわらず、請求書の提出が8月になったことを理由として支払日を遅らせる、といった運用は避ける必要がある。 公正取引委員会も、社内手続上、受託者からの請求書が必要な場合には、受託者が請求額を集計して通知するための十分な期間を確保しておくことが望ましいとしている。 さらに、請求書の提出が遅れた場合には、速やかに提出するよう督促し、支払遅延とならないよう代金を支払う必要があるとしている。 つまり、「請求書が届いていないから支払えない」という事情によって、60日ルールを超えてよいわけではないということである。 「60日ルール」は当事者間の合意でも変更できない 取適法の支払期日に関する規定は、当事者間の契約によって自由に変更できるものではない。 例えば、契約書に「成果物の受領日から90日後に支払う」と定めていたとしても、取適法の対象となる取引であれば、そのような定めによって60日ルールを超えることはできない。 したがって、契約書を作成する際にも、取適法の支払期日に関する規定と矛盾しないよう注意する必要がある。 「月末締め翌月末払い」は問題になる? では、継続的な取引でよく見られる「月末締め翌月末払い」という支払条件はどうだろうか。 一見すると、月初に納品された場合、受領日から60日を超えてしまう場合があるようにも思える。 例えば、7月1日に成果物を受領し、7月末締め・8月末払いとした場合、単純に日数を数えると61日後の支払となる。 しかし、公正取引委員会は、このような月単位の締切制度について、「受領後60日以内」を「受領後2か月以内」として運用している。 そのため、31日の月をまたぐことで、暦日ベースでは61日目や62日目の支払となる場合であっても、月単位の締切制度に基づく支払であれば、直ちに支払遅延として問題となるわけではない。 したがって、「月末締め翌月末払い」という支払条件自体が、取適法上ただちに違法となるわけではない。 ただし、取適法では支払期日について別途、**「できる限り短い期間内」**という要請もあるため、単に「60日以内なら何でもよい」と考えるのは適切ではない。 支払期日は具体的な日を特定できるように定める 取適法では、支払期日について、単に「○日以内に支払う」という期限だけを示すのでは足りない。 具体的な支払期日を特定できるように定める必要がある。 公正取引委員会のQ&Aでは、例えば次のような支払期日の定めについて説明されている。 ①「○月○日まで」 ②「納品後○日以内」 ③「○月○日」 ④「毎月末日納品締切、翌月○日支払」 このうち、①と②は支払の期限を示しているだけで、具体的な支払日が特定できないため認められない。 一方、③は具体的な支払日が特定できるため認められる。 ④についても、月単位の締切制度を採用することで具体的な支払日を特定できるため、認められる。 なお、定められた支払期日より前に代金を支払うことは問題ない。 したがって、「納品後○日以内」といった定めではなく、実際の支払日を特定できるような契約条件にしておく必要がある。 できる限り短い期間で支払う ここまでを見ると、「60日以内であれば、60日目に支払えばよい」と考えてしまうかもしれない。 しかし、取適法の条文は、単に60日以内に支払期日を定めればよいとはしていない。 第三条 製造委託等代金の支払期日は、委託事業者が中小受託事業者の給付の内容について検査をするかどうかを問わず、委託事業者が中小受託事業者の給付を受領した日(役務提供委託又は特定運送委託の場合にあつては、中小受託事業者からその委託に係る役務の提供を受けた日。以下同じ。)から起算して、六十日の期間内において、かつ、できる限り短い期間内において、定められなければならない。 このように、条文には**「できる限り短い期間内」**という文言がある。 したがって、取適法の対象取引では、「60日以内ならよい」と機械的に考えるのではなく、事務処理上可能な範囲で、できる限り早く支払うことが求められている。 例えば、通常の社内処理で30日後に支払えるにもかかわらず、特段の理由なく一律に「納品から60日後」と設定するような運用については、この「できる限り短い期間」という要請にも注意する必要がある。

面白特許の紹介|こんなものまで特許に?

「特許」と聞くと、最先端の技術や複雑な機械など、高度な発明をイメージする人が多いだろう。 しかし、実際の特許公報を見てみると、「こんなものまで特許になるのか?」と思わず驚いてしまうような発明も存在する。 アクティブタイムバトル(特許第2794230号) ファイナルファンタジーシリーズで有名な「アクティブタイムバトル(ATB)」である。 ATBは、キャラクターごとに時間が溜まり、一定量に達したキャラクターから行動できるようになるゲームシステムである。 従来のターン制バトルに比べてリアルタイム感のある戦闘を実現しているのだが、出願当初は特許庁から「これって単なるゲームルールでしょ?」と拒絶理由を受けている。 特許法上、ゲームのルールなど人為的な取り決めそのものは、自然法則を利用した「発明」には該当しない(特許法29条1項柱書)。 これに対して出願人は、タイマや計時制御手段、キャラクタ制御手段などをコンピュータのハードウェア資源と協働させて具体的に実現するものだと反論し、最終的に登録に至った。 なお、現在は権利満了となっている。 恋愛ゲーム(特許第5710187号) こちらは、恋愛シミュレーションゲームに関する特許である。 プレイヤーの選択によってヒロインの好感度が変化し、一定以上になるとヒロインから告白される。 そして告白を受け入れればエンディング、断れば以降そのヒロイン関連のイベントが発生しなくなる。 一度振った相手とは、その後の関係がなくなるという、妙に現実的な仕組みである。 さらに「耐久パラメータ」も設定されている。 何度も告白を断るとパラメータが低下し、最終的には本来望んでいない相手からの告白を断れず、なし崩し的に受け入れてしまうという展開になるというわけである。 驚くべきことに、発明者には秋元康さんの名前があり、おそらくAKBの恋愛ゲームに採用されているシステムではないかと思われる。 ゲームのストーリーや演出も、コンピュータ上で実現する具体的な仕組みとして構成すれば、特許の対象になり得るのである。 なお、明細書はかなりしっかりと記載されているようで、図面はデータ構成やフローチャートも含めて35個も掲載されている。 体モノマネシャツ(特許第6366202号) 芸人・秋山竜次さんが発明者となっているユニークな特許である。 シャツの裏側に、モノマネ対象となる人物の顔を上下逆さまにプリントしておき、裾を持ち上げることで、その顔が演者自身の顔と重なって見えるようにする。 お面などの小道具を持たずに顔を変化させられるので、観客に意外性を与え、盛り上がる発明とされている。 しかし、実は出願前から秋山氏自身がこの芸を披露していたWeb記事が存在したため、新規性が問題となっていた。 そこで、シャツの星マークの位置を工夫し、プリントされた顔と演者の顔が適切に重なるような構成を加えることで、権利化が認められている。 「面白いアイデア」であるだけでなく、従来技術との具体的な違いを構成として示す必要があることが分かる事例である。 地球の温暖化防止方法(特許第3742868号) ここからスケールが一気に大きくなる。 この発明は、長さ数百メートルのヒートパイプを雲より高い位置まで地表から垂直に立て、地表の熱を上空へ放出することで地球温暖化を防止するというものである。 問題となったのは、「本当にそんなものを実施できるのか」という点である。 特許庁からは、「建設費や建設場所などを考えると、実際上実施することが困難ではないか」として拒絶理由が通知された。 これに対し出願人は、「地球の破壊を防ぐためなら、どれだけ費用がかかっても、建設が難しくても、それを克服する努力が必要だ」という趣旨の反論を展開した。 まさに根性論ともいえる反論であるが、その熱い想いが審査官に通じたのか、最終的には拒絶理由が解消され、特許登録に至っている。 故人の弔い装置(特許第2655018号) さらに壮大なのが、月を墓地にしてしまう発明である。 故人の遺品を入れたカプセルを月に打ち上げ、地球から見える月の表側に着陸させ、そのカプセルを墓標とする。 さらにカプセルには故人の写真や音声を記録しておき、あらかじめ設定した日時になると、地球上の家族へ送信する。 命日に家族が仏壇の前に集まると、月の墓から故人の声や写真が届くというわけだ。 ここでも「本当に実施できるのか」が問題となった。 明細書には、カプセルを月まで飛ばす具体的な方法が十分に記載されていなかったためである。 これに対して出願人は、百科事典を根拠に、「月にロケットを飛ばす技術自体は既に存在しているから、実現もそんなに難しいことではない」と反論した。 そして、この発明も最終的には特許登録されている。 月にカプセルを飛ばし、かつ墓標にする技術は、相当難しい気がするのだが・・・。 ゴルフシミュレーター(特許第4041197号) 「画面に風速10m/sと表示されても、実際にどんな風なのか分からない。それなら本当に風を吹かせればいいじゃない!」という発明である。 ゴルフ練習打席を取り囲むように空気ダクトを設置し、複数の吹き出し口を制御することで、ゲーム内の風向きや風速を実際の風として再現する。 画面で見るだけだった「風」を、身体で感じられるようにしたわけである。 そして、発明者には孫正義さんも名を連ねている。 孫さんは19歳のときに音声付き電子翻訳機を発明して企業に売却し、事業資金を得たという逸話もあり、発明家としての一面も持っている。 ワンクリック特許(特許第4959817号) 次は、Amazonの「ワンクリック注文」に関する特許である。 あらかじめ住所や決済情報などを登録しておけば、商品を1回クリックするだけで注文できる。 入力や確認といった面倒な操作を省略できるため、ECサイトでの購入を大幅に簡単にした。 さらに、同じユーザーが続けて行ったワンクリック注文を、サーバー側で一つの注文にまとめる仕組みも含まれている。 一見すると非常にシンプルな発明だが、消費者の利便性を大きく向上させた点に価値がある。 AppleがAmazonから特許ライセンスを受け、Apple Storeでも同様にワンクリックでの注文を可能としていた経緯からも、その価値の高さが伺える。 この特許は2018年に権利満了しており、現在では同様の仕組みを他社が採用することも可能である。 シンプルな仕組みだからこそ、特許として成立すると強い権利になり得るという好例だろう。 揚げ出し卵豆腐(特許第2051580号) 特許は、なんと料理にも存在する。 この発明は、その名のとおり「卵豆腐を油で揚げてなる揚げ出し卵豆腐」である。 明細書はわずか2ページほどで、卵豆腐を油で揚げることで、風味、香り、舌触りが良好になると説明されている。 「これで特許になるの?」と思ってしまうが、特許になるかどうかは、発明の見た目ではなく、新規性や進歩性などの要件を満たすかどうかで決まる。 もし権利が存続していれば、料理店が業として揚げ出し卵豆腐を提供する行為について、特許侵害が問題になる可能性もある。 一方、自宅で作って自分で食べるような行為は、原則として「業として」の実施には当たらない。 なおこの特許権はすでに消滅しているので、お店でも気兼ねせずに揚げ出し卵豆腐を提供することができるので、安心してほしい。 令和を表現する花火(特許第6990856号) 発明者は、発明家として有名なドクター中松さんである。 外側に数字の「0」を模した花火、その内側に円形の花火を打ち上げることで「令和」を表現するという発明である。 そのロジックは、外側の「ゼロ」=「零」、内側の円=「輪」として、「零輪」=「令和」とするもの。 まさかのダジャレである。 さらに、この花火によって新時代の到来を告げ、観客を楽しませ、集客・増収につなげるという効果まで説明されている。 花火の発光に合わせて「レイワー」という音声を流せば、さらに効果が高まるという。 「たまやー」ではなく「レイワー」というわけだ。 二次元コード付きネイルシール(特許第6232548号) 一見するとファッションや広告に関する発明に見えるが、その目的は認知症患者の安全確保である。 徘徊中の患者が保護された際に身元を確認できるよう、二次元コードを身につけてもらう。 しかし、衣服や靴では患者が脱いでしまう可能性があり、身体に直接コードを書くのも人間の尊厳という観点から問題がある。 そこで着目したのが「爪」である。 爪なら簡単には取り外せず、時間が経てば伸びて切り取られるため、身元確認用の情報を保持する手段として適しているというわけである。 一見すると奇抜なアイデアだが、その背景には患者や家族の安全を守るという、非常に真面目な課題がある。 斜めに傾く靴(米国特許第5255452号) 最後は、知っている人も多いかもしれないが、マイケル・ジャクソン氏の有名なダンスに関する米国特許である。 「Smooth Criminal」で披露された、身体を大きく前方に傾けるパフォーマンスを実現するための靴である。 靴のかかと部分に特殊な切り込みを設け、ステージから突き出したピンに引っ掛けることで、通常なら転倒してしまうような前傾姿勢を可能にする。 発明の名称は「Method and means for creating anti-gravity illusion」、つまり「反重力のイリュージョンを作り出す方法および手段」。 非常に格好いい名称である。 発明者にはマイケル・ジャクソンのほか、衣装や小物を手掛けたマイケル・ブッシュ氏、デニス・トンプキンス氏も名を連ねている。 「こんなものまで特許に?」から見えてくること こうして紹介してみると、ゲームから料理、月面の墓、花火、ダンス用の靴まで、特許の対象となる発明が非常に幅広いことが分かる。 もちろん、「面白いアイデアなら何でも特許になる」というわけではなく、新規性や進歩性、実施可能性など、様々な要件をクリアする必要がある。 ...

任天堂とパルワールドとの訴訟から考える知財戦略

任天堂株式会社および株式会社ポケモンが、パルワールドをリリースしている株式会社ポケットペアを相手取り、特許権侵害訴訟を提起した。 2026年8月現在、本件は東京地方裁判所に係属中である。 「なぜ著作権ではなく特許で戦ったのか?」 「分割出願ってそんな使い方ができるの?」 今回は、これまでの両者の動きを知財の観点から整理してみたい。 なぜ著作権侵害を問わなかった? 巷では「パルワールドはモンスターデザインやボールでモンスターを捕獲するシステム等がポケモンと似ている」と言われており、著作権侵害で争う方が自然にも思える。 しかし、知的財産権の観点から見ると、特許権を選択したことには合理的な理由があるように思われる。 ゲームシステムは著作権の保護対象外 まず、ゲームシステムやルールは基本的に「アイデア」である。 著作権法が保護するのは「創作的な表現」であり、「捕獲アイテムを投げる」「捕獲したモンスターを仲間にする」といったゲームシステムそのものは原則として著作権の保護対象にならない。 もしアイデアまで保護してしまうと、そのアイデアからゲームを作ること自体が難しくなってしまうことから、自由な創作活動を守るべくアイデアは保護の対象外としているのである。 例えば、「ボールを投げてモンスターを捕まえる」というシーンを描いたイラストやゲーム画面であれば、著作権の保護対象となる。 作風・画風そのものは保護対象ではない 次にキャラクターデザインだが、「色使い」「タッチ」「構図」といった作風そのものも、著作権の保護対象とはならない。 もし作風そのものまで保護してしまうと、作風に触発されることで生じる新たな創作や表現を阻害するおそれがあるためである。 つまり、一見「あの作品のキャラっぽい」と感じられたとしても、単なる作風の類似に留まるのであれば著作権侵害とならない。 著作権侵害が認められるには、作風の類似に留まらず、既存キャラクターの「表現上の本質的な特徴(※)」までも類似する必要があるため、思った以上に高いハードルとなる。 ※「単なる事実の記載」「ありふれた表現」「表現でないアイディア(作風・画風)」は含まれない 任天堂は著作権侵害で戦えるのか パルワールドのモンスターは「ポケモンっぽい」と言える程度に作風は似てるのかもしれないが、登場キャラクターの大半で著作権法上の類似性が認められるかというと、個人的にはハードルがかなり高いのではないかと思う。 上述の通り、作風が似ているだけでは著作権侵害とはならない。 また、例えば「大きな顔」「短い手足」「丸みを帯びた胴体」といった表現はありふれていることから、たとえこれらの表現が類似していても、類似部分を「表現上の本質的な特徴」と主張するのは苦しい。 もちろん、一部のモンスターについては表現上の本質的な特徴までも類似しており、著作権侵害が成立するケースはあり得る。 しかし、それならそのモンスターだけを削除したり差し替えれば済む話なので、モンスターが200種類以上登場するパルワールド自体の販売差止めに繋がるとは考えづらい。 したがって、現時点で著作権で争うことは、必ずしも得策ではないと任天堂が考えた可能性がある。 特許権による戦い 著作権とは異なり、特許権はゲームシステムを具体的な技術的構成として権利化することが可能である。 例えば、 プレイヤーの操作方法 捕獲アイテムの使用条件 モンスターの召喚方法 捕獲モードと戦闘モードの切替方法 などの構成を出願していれば、(特許性があるかという問題はあるが)ゲームシステムそのものを保護対象にできる。 そのため、状況によっては、著作権よりも特許の方が強力な武器になる場合がある。 もちろん任天堂が著作権ではなく特許権侵害訴訟を選択した理由は公表されていないが、ゲームシステム自体を保護対象とし得る特許権の方が、ポケットペアに対する差止請求や損害賠償請求を行いやすいと判断した可能性はある。 分割出願という戦略 任天堂は、権利行使にあたって分割出願制度を活用としている。 分割出願とは、係属中の特許出願(原出願)から別の特許出願を派生させる制度である。 特許出願は**「どこまで権利として認めてほしいか」を記載した「請求項」と、その内容を詳しく説明した「明細書」**から構成される。 つまり、請求項に係る発明が権利範囲となるのであって、明細書に記載された発明の詳細な説明すべてが権利範囲となるわけではない。 しかし、明細書には出願当初の請求項に記載された発明以外にも、将来別の請求項として利用できる技術内容が記載されていることが多く、分割出願をすればその技術内容についても後から権利化できるというわけである。 そして分割出願のメリットとして挙げられるのは、分割出願の出願日は、原出願の出願の時にしたものとみなされる点である。 つまり、特許出願後に競合製品が出てきたら、競合製品の中身を調査した上で、その製品が特許権を侵害するように請求項を検討して分割出願を行う、という運用が制度上可能である。 もちろん、元の明細書に記載されている内容の範囲内でしか分割できず、新しい技術事項を書き足すことは認められない。 しかし逆に言えば、最初の明細書を十分広く記載しておけば、市場に登場した競合製品を見ながら、それに近い権利範囲へ請求項を組み替えることも制度上は可能である。 「後出しジャンケンじゃないか!」と感じる人もいるかもしれないが、この手法は日本の特許実務では珍しいものではなく、有効な知財戦略の一つとされている。 なお、任天堂は2026/8/1時点で1つの原出願から7つもの分割出願を行っており、しかも一部は特許庁に係属させることで更なる分割出願の余地も残している。 設計変更とのいたちごっこ とはいえ、特許権も万能ではない。 特許は請求項に記載された構成が権利範囲となるため、その一部を変更すれば侵害を回避できる(但し、一部例外もある)。 例えば、 ボールを投げる モンスターを召喚する モンスター同士を戦わせる からなる特許発明があったとき、最初の「ボールを投げる」構成を「杖を振る」といった構成に変えれば、「モンスターを召喚する」「モンスター同士を戦わせる」構成が共通でも権利侵害を免れることができる。 ポケットペアも、パルワールドの仕様を以下のように変更することで、特許権の侵害を回避しようと試みている。 「ボールを投げてモンスターを召喚する」機能を削除し、代わりに「プレイヤーのそばに直接召喚する」仕様へ変更 モンスターを呼び出して空を滑空する代わりに、アイテムのグライダーを使用して行う方式に変更 特に装置、機器、物質、医薬品とは異なり、物理的な実体を持たないソフトウェアは基本的に設計変更が容易である。 ポケットペアがバージョンアップを行った結果、変更後のソフトウェアについては、当該特許権の侵害を回避できる可能性が高くなる。 その後も、任天堂は分割出願を継続していることから、設計変更後のパルワールドも視野に入れた権利範囲の構築を試みている可能性がある。 仮に任天堂がゲームのコアとなる基本的な特許を保有していれば、ポケットペアによる設計変更による回避も難しくなり、もっと事情は変わってきていたと思われる。 だが、本来ならゲームとして一般的な「モンスター捕獲・召喚」「モンスターに騎乗して空中移動する」といった演出を、その操作方法等を具体的な技術的構成として権利化していたため、設計変更も比較的容易であったと思われる。 任天堂の反論は通らず 分割出願なら後出しジャンケンも可能だが、もちろん「競合製品をカバーしたい」という発想だけでは特許は取得できない。 例えば、既知技術を単純に組み合わせただけの発明であれば特許として認められないところ、任天堂の分割出願の1つも同様の拒絶理由が通知されていた。 ところが、この審査で少し意外な展開になる。 何と任天堂は、**特許庁が引用した動画を「ポケモンの著作権を侵害するゲーム動画」だと主張し、「審査官がわざわざ侵害品を正規品のように誤った認定をしているのは極めて不適切」**と強い表現で反論した。 これに対し、審査官は「著作権侵害の有無が進歩性判断に影響するとの定めはない」とばっさり切り捨て、拒絶査定を通知した。 拒絶査定の内容だが、「特許実務家にとって標準的な考え方」「非常識な誤解」など、審査官もかなり踏み込んだ表現を用いている。 この件は、筆者も審査官の意見に同調する。 著作権の侵害品であろうと無かろうと、ひとたびその動画が世に出回ればその発明は世の中に公開された技術になるものだから、当たり前だと思う。 この件では、「何で特許の話に著作権侵害を持ち出したのか」「なぜ特許審査で著作権侵害を主張したのか」と疑問視する声も見られている。 任天堂も「著作権侵害品を野放しにしないぞ」という姿勢を見せる意図があった可能性も考えられるが、あまり無理のある主張を展開すると、外部から厳しい評価を受けることもあるのが怖いところである。 レピュテーションも知財戦略の一部 近年はSNSの影響力が非常に大きくなっている。 法的には正当な権利行使であっても、「人気ゲームを潰そうとしている」という印象を一般ユーザーに与えてしまえば、企業イメージに影響する可能性がある。 一方で、権利行使をしなければ、「この程度なら真似しても大丈夫」というメッセージを競合へ与えてしまうおそれもある。 つまり、知財戦略とは単に勝訴を目指すことではなく、 模倣の抑止 ブランド価値の維持 ユーザーからの評価 企業イメージ まで含めてうまく立ち回っていくべき経営判断だと言える。 この裁判がどう決着するかはまだ分からない。 しかし、この事件は「知財は権利を取れば終わりではない」ということをよく示している。 どの権利を取得し、いつ、どのように使うのか。 その戦略次第で、企業の競争力やブランドイメージまで左右される。 パルワールド訴訟は、そんな知財戦略の難しさを考えさせられる、非常に興味深い事例だと思う。

国外サーバにも及ぶ日本の特許権(おまけ:分割出願戦略)

日本の特許権の効力は、属地主義の原則により「日本国内においてのみ認められる」とされている。 そのため、発明の構成要素の一部を国外に配置することで、特許権を容易に回避できるのではないかという問題があった。 例えば、日本でサービスAを提供するプログラムについて特許権を取得していたとしても、国外のサーバから日本国内の利用者へサービスAを提供した場合には、日本の特許権は及ばず非侵害となる可能性があった。 しかし、2025年の最高裁判決では**「一定条件を満たす場合には、実質的に日本国内で行われた行為と評価され、日本の特許権侵害が成立し得る」**との判断が示された。 本記事では、この最高裁判決の概要を紹介するとともに、その背景にあるドワンゴの特許取得戦略についても考察する。 ドワンゴ対FC2事件最高裁判決 ドワンゴは動画配信サービス「ニコニコ動画」を提供しており、動画再生時間に合わせてコメントが流れる機能は、多くの人が目にしたことがあるだろう。 ドワンゴはこのコメント表示機能について特許権を取得しており、日本向けに動画配信サービスを提供していたFC2(米国法人)に対して、2件の特許権侵害訴訟を提起した。 そして、2025年3月3日、それぞれについて最高裁判決が下されている。 詳細については、以下の判決を参照いただきたい。 第1訴訟:令和5年(受)第14号、第15号 特許権侵害差止等請求事件 令和7年3月3日 第二小法廷判決 第2訴訟:令和5年(受)第2028号 特許権侵害差止等請求事件 令和7年3月3日 第二小法廷判決 本件では、FC2の動画・コメント配信用サーバが米国に設置されていたことから、属地主義の下でも日本の特許権侵害が成立するかが主要な争点となった。 判決の概要 最高裁は、国外のサーバから日本国内の利用者へプログラムを配信する行為であっても、一定の場合には日本の特許権を侵害し得るとの判断を示した。 具体的には、 利用者が動画視聴ページにアクセスすると自動的にプログラムが配信されること そのプログラムにより、日本国内の端末上で発明の効果(動画とコメントの表示範囲を調整し、コメントを読みやすくする機能)が実現されること 特許権者の利益に経済的な影響を及ぼすこと(経済的利益が日本国内に及ぶこと) を重視しており、その上で最高裁は プログラムの発明:国外サーバから日本国内への配信は「電気通信回線を通じた提供」(特許法2条3項1号)に該当する 装置の発明:日本国内で装置を完成させるためだけに用いられるプログラムを国外から配信する行為は、間接侵害における「譲渡等」(特許法101条1号)に該当する システムの発明:国外サーバから日本国内へプログラムを配信し、日本の端末と国外サーバとを含むシステムを構築することは「生産」(特許法2条3項1号)に該当する と判断した。 判決文からの抜粋 参考として、第1訴訟判決の一部を抜粋する(第2訴訟にも同趣旨の判示がある)。 ・・・電気通信回線を通じた国境を越える情報の流通等が極めて容易となった現代において、プログラム等が、電気通信回線を通じて我が国の領域外から送信されることにより、我が国の領域内に提供されている場合に、我が国の領域外からの送信であることの一事をもって、常に我が国の特許権の効力が及ばず・・・とすれば・・・特許法の目的に沿わない。そうすると、そのような場合であっても、問題となる行為を全体としてみて、実質的に我が国の領域内における「電気通信回線を通じた提供」に当たると評価されるときは、当該行為に我が国の特許権の効力が及ぶと解することを妨げる理由はないというべきである。・・・ 近年では、インターネットサービスのサーバが海外に設置されていることは珍しくない。 本判決は、そのような技術環境を踏まえ、サーバの所在地という形式面だけでなく、実質的に発明が日本国内で利用され、特許権者の日本での利益に影響を及ぼしているかという実態を重視した点に、大きな意義があるといえる。 特許権取得の戦略 上記の通り、ドワンゴは動画配信サービスにおけるコメント表示機能に関する特許権を取得していた。 もっとも、大元となる原出願(特願2007-053347)では、配信サーバ側に第1のコメント情報記憶部を設けるとともに、端末装置側にも第2のコメント情報記憶部を設け、それぞれのコメント情報記憶部から表示情報を読み出す構成がクレームに記載されている。 つまり、サーバ側と端末側の内部処理まで含めて規定したクレームとなっているため、第三者のサービスを外部から観察しただけでは侵害の有無を判断することは容易ではなかったものと考えられる。 そこでドワンゴは分割出願を活用し、特許性を維持しつつ、第三者に対して侵害を立証しやすいクレームへ補正を行っている。 しかも、分割出願を何度も繰り返すことで、(原出願の出願当初/分割直前の明細書等に記載された事項の範囲内である必要はあるものの)社会情勢や競合他社のサービスを踏まえて権利範囲を調整できるように維持していたあたりは実に周到である。 第1訴訟、第2訴訟で講師された特許権はいずれも分割出願によって権利化されたものであり、それぞれ次のような特徴を有している。 分割出願(第1訴訟) 特許第4734471号 動画に対するコメントの少なくとも一部を、動画表示領域の外側かつコメント表示領域の内側に表示する点を特徴とするよう補正をしている。 これにより、コメント自体が動画に含まれているものではなく、ユーザによって投稿されたコメントであることを利用者が容易に認識できるという効果を主張している。 分割出願(第2訴訟) 特許第6526304号 動画中を水平方向に移動する第1コメントと第2コメントの表示位置が重ならないよう調整する点を特徴としている。 分割出願についての考察 これら2件の分割出願に共通する特徴は、他社サービスの画面表示を確認するだけで侵害の有無を把握しやすいクレームとなっている点である。 また、第2訴訟で行使された特許については、FC2のサービス内容を踏まえた形でクレームが調整された可能性も考えられる。 さらに、これらの特許については、その後も分割出願が継続されており、権利範囲を調整できる体制を維持していたことがうかがえる。 もっとも、分割出願を繰り返したとしても特許権の存続期間が延長されるわけではない。 そのため、これらのファミリー特許は2026年12月11日に権利満了を迎える予定である。

他人の登録商標が消滅したら登録できる?

商標法第4条には「商標登録を受けることができない商標」が列挙されている。 その中でも実務上よく問題となるのが、商標法第4条第1項第11号である。 他人の登録商標と同一・類似であり、かつ指定商品・指定役務も同一・類似である場合には、商標登録を受けることができない、というものである。 この拒絶理由を受けた場合の主な対応としては、次のようなものが考えられる。 指定商品・指定役務を削除する 商標が同一・類似ではないことを意見書で主張する もっとも、引用された他人の登録商標が更新されずに消滅した場合には、この拒絶理由は解消される。 他人の登録商標が消滅すると登録できる理由 特許の場合は、たとえ権利が消滅していても、公知技術として新規性・進歩性の判断に用いられる。 そのため、一度消滅した特許と同じ発明について新たに特許を取得することはできない。 これは、一定期間の独占権と引き換えに技術を公開し、権利期間満了後は誰でも自由に利用できるようにすることで、産業の発達を図るという特許制度の目的によるものである。 一方、商標制度の目的は、商品・サービスの出所表示機能を保護し、業務上の信用を維持することにある。 そのため、商標権者が商標を使用しなくなり、更新もしないのであれば、その商標を独占させ続ける必要性は薄くなる。 したがって、商標権が消滅した後は、他の人が同じ商標を出願し、他の拒絶理由がなければ新たな権利者となることができる。 なお、登録前の先願についても、放棄・取下げ・却下があった場合には、先願を理由とする拒絶理由は解消される(商標法第8条第3項)。 以前は消滅後も1年間登録できなかった 以前の商標法第4条第1項第13号では、商標権が消滅しても、消滅後1年間は同一・類似商標の登録を認めないという規定が存在した。 これは、商標の使用によって形成された信用は、使用を止めても一定期間は残るため、その間に第三者へ登録を認めると出所混同のおそれがあると考えられていたためである。 しかし近年では、製品ライフサイクルが短くなり、早期の権利取得に対するニーズが高まった。 その結果、「1年間登録できない」という制限は権利取得を不必要に遅らせるとして、この規定は削除されている。 消滅しそうな商標を狙って出願する場合の注意点 商標の審査では、審査中に引用商標が消滅した場合でも、その時点で拒絶理由は解消される。 そのため、「引用商標はもうすぐ更新期限だから、とりあえず出願してしまおう」と考えたくなるケースもある。 しかし、商標出願をすると、通常は出願から2、3週間程度経過後に出願内容が一般公開される。 その結果、これまで更新するつもりがなかった商標権者が公開公報を見て、「他社も欲しがっているようだ。やはり更新しておこう。」と考え、更新手続きを行う可能性もゼロではない。 もちろんケースバイケースではあるが、更新期限が近いのであれば、ギリギリまで出願を待った方が安全な場合もある。 もし、満了を迎えそうな他社商標の存在を理由に拒絶理由を打たれた場合は、意見書に以下のような文面を入れておくことも考えられる。 引用商標については、更新手続きがなされておりません。したがいまして、引用商標の存続期間の満了後6月経過後、商標原簿で存続期間の満了が確認された場合は、商標法第4条第1項第11号には該当しなくなったものとしてお取り扱い下さいますよう、お願い申し上げます。 それでも制限が発生するケースがある もっとも、商標権が消滅したからといって、必ず登録できるわけではなく、他者の使用を排除できるとも限らない。 周知商標に該当する場合 前権利者が使用を続けた結果、その商標が周知となっている場合には、その周知商標と同一・類似であり、同一・類似の商品・役務について使用する商標は登録を受けることができない(商標法第4条第1項第10号)。 先使用権が成立する場合 また、前権利者が商標権消滅後も継続して商標を使用しており、一定の周知性を有している場合には、先使用権が認められる可能性がある(商標法第32条第1項)。 この場合、後から商標登録を受けた者は、混同防止表示を付すことを請求できる(商標法第32条第2項)。 「周知性」の基準は実は違う? ここで疑問が生じる。 商標法第4条第1項第10号で登録自体が拒絶されるのであれば、そもそも先使用権を認める必要はないのではないか。 この点については学説上、**両者の「周知性」は同じではない(非同一説)**という考え方がある。 この見解では、 商標法第4条第1項第10号の周知性は比較的高い知名度が必要 商標法第32条第1項の周知性は、それより低い識別力・周知性でも足りる とされる。 そのため、第4条第1項第10号に該当するほど有名ではなくても、第32条第1項による先使用権だけは認められるケースがあり得る。 中々複雑である。

商標の取得~維持にかかる費用

特許権の取得に要する費用については、以下の記事で紹介した。 特許の取得~維持にかかる費用 「特許を取得するには、どのくらい費用がかかるのか?」 これから特許出願を検討している人にとって、最も気になる点の一つが費用ではないだろうか... ここでは、参考として商標登録にかかる費用について紹介する。 国内出願・登録時の費用 国内出願では、主に以下の費用が発生する。 特許庁へ支払う手数料 特許事務所へ支払う代理人費用(代理人に依頼する場合) 特許庁へ支払う手数料は、特許庁HPの産業財産権関係料金一覧に掲載されているが、金額は以下の通りである(2026年6月時点)。 登録料は一括納付(10年分)と分割納付(5年分)と選べ、一括納付の方が割安となる。 また、更新時の方が割高となる。 庁費用については、手続料金計算システムで簡単に計算できる。 代理人費用は、特許事務所や区分数によって異なるものの、出願手数料・登録手数料・成功報酬などを合わせて、おおむね2万円~20万円程度が目安となる。 整理すると、以下の通りである。 項目 費用 商標登録出願 3,400円+(区分数×8,600円) 商標登録料(10年分) 区分数×32,900円 更新登録料(10年分) 区分数×43,600円 代理人手数料 20,000~200,000円 例えば3区分で10年間登録し、10年間更新登録するなら、かなりざっくりだが30~50万円程度の費用といったところか。 ご存じかと思うが、特許とは異なり、商標は更新登録料を支払い続ける限り半永久的に権利を維持することが可能である。 外国出願時の費用 外国出願の場合も、各国官庁へ支払う費用、現地代理人費用、日本の代理人費用がかかる。 特に、複数国へ個別に出願すると、それぞれの国で現地代理人が必要になるため、費用が高額になりやすい。 そこで、3か国以上への出願を予定している場合は、代理人費用を大きく抑えられるマドプロ(マドリッド協定議定書)による国際出願を検討するとよい。 マドプロ出願では、主に次の費用が発生する。 日本の特許庁に支払う手数料 WIPOに支払う手数料 国毎の個別手数料(不要な国もある) 代理人に支払う費用 が発生する。 このうち、日本の特許庁およびWIPOに支払う手数料については特許庁HPで確認できる。 また、WIPOに支払う手数料および国毎の個別手数料は、WIPOのMadrid System Fee Culculatorを利用すると簡単に計算できる。 Madrid System Fee Calculator の使い方 Madrid System Fee Calculator にアクセス 実行したい手続き(新規出願、事後指定、更新など)を選択 必要事項を入力 出願年 基礎となる本国官庁(日本の場合は日本国特許庁) 区分(クラス)数 collective mark(団体商標)、certification mark(証明商標)または guarantee mark(保証商標)のいずれかの商標であれば、チェック 商標がカラーの場合はカラー手数料のオプションにチェック 指定国の選択 通常の商標であれば、団体商標・証明商標・保証商標の項目にチェックを入れる必要はない。 なお、日本の商標法では「guarantee mark」の制度は存在しないため、日本の出願人が該当するケースは基本的にない。 白黒商標であれば、カラー商標の項目も選択不要である。 計算結果は、最下部にスイスフラン(CHF)で表示される。

特許の取得~維持にかかる費用

「特許を取得するには、どのくらい費用がかかるのか?」 これから特許出願を検討している人にとって、最も気になる点の一つが費用ではないだろうか。 特許取得には、特許庁に支払う費用だけでなく、特許事務所へ依頼する場合の手数料も発生する。 特許庁に支払う費用は、請求項数や権利維持期間、料金減免制度の利用可否などによって、必要となる金額は大きく変わってくるが、特許庁に支払う料金は公開されているため自分で計算できる。 その一方、特許事務所に支払う手数料は事務所ごとに異なるため、全体の費用感が分かりにくいと感じる人も少なくない。 そこで本記事では、2026年6月時点の料金をもとに、特許庁に支払う費用と特許事務所に支払う手数料の目安を整理し、特許1件当たりに必要となる総費用のイメージをまとめる。 特許庁に支払う費用 特許庁HPの産業財産権関係料金一覧にも掲載されているが、金額は以下の通りである(2026年6月時点)。 特許庁には手続料金計算システムもあるので、容易に計算することができる。 正規料金 料金減免あり(中小企業、大学等) 料金減免あり(中小スタートアップ企業、小規模企業) 出願料 14,000円(外国語書面出願の場合は22,000円) 審査請求料 138,000円+(請求項数×4,000円) 正規料金の1/2 正規料金の1/3 特許料(第1年から第3年まで) 毎年4,300円+(請求項数×300円) 正規料金の1/2 正規料金の1/3 特許料(第4年から第6年まで) 毎年10,300円+(請求項数×800円) 正規料金の1/2 正規料金の1/3 特許料(第7年から第9年まで) 毎年24,800円+(請求項数×1,900円) 正規料金の1/2 正規料金の1/3 特許料(第10年から第25年まで) 毎年 9,400円+(請求項数×4,600円) 第10年分は正規料金の1/2 以降は正規料金と同じ 第10年分は正規料金の1/3 以降は正規料金と同じ 請求項数、権利維持期間によって全体の費用感はかなり異なるが、例えば請求項が10個、10年まで権利維持するのであれば、50万円強となる。 特許事務所に支払う手数料 特許庁費用は自分で計算することができるが、特許事務所に支払う手数料は基本的に事務所に見積もりを出してもらう必要がある。 中には料金表を開示している事務所もあるので、その場合は相談前に概算を出すことも可能である。 概ね以下の表の金額というイメージだが、こちらは自らの経験則等に基づく数値なので、あくまで参考値としていただきたい。 一般的な料金レンジ 明細書作成手数料 250,000~400,000円 出願審査請求手数料 10,000~50,000円 中間処理手数料 200,000~400,000円 権利化手数料(成功報酬含む場合もあり) 50,000~100,000円 合計 51,0000~950,000円 1出願当たりの総費用 概算ではあるが、例えば請求項が10個からなる特許を10年間権利維持する場合は、100万~150万円程度となる。 また、外国にも出願するのであれば更に費用は上乗せされる点は言うまでもない。 外国は、基本的に現地代理人を利用することもあり、日本よりも手数料が高いことが殆どである。 そのため、日本に加え、PCT国際出願で米国、欧州、中国、韓国・・・と世界主要国で権利化するとなると1000万円(!)を超えることも珍しくはない。 全世界で発明の保護を図りたいのは山々ではあるが、医薬品のようによほど重要な特許である場合でなければ、実施国と懐事情とのバランスを踏まえて出願国を選定する必要があるだろう。