日々の業務で得た知見をもとに、知財や契約に関する内容を中心に備忘録としてまとめています。
あくまで一知財部員の主観を含む内容のため、参考程度にご覧ください。
動画でも知財・契約関連の事例を取り上げています。
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日本の特許権の効力は、属地主義の原則により「日本国内においてのみ認められる」とされている。 そのため、発明の構成要素の一部を国外に配置することで、特許権を容易に回避できるのではないかという問題があった。 例えば、日本でサービスAを提供するプログラムについて特許権を取得していたとしても、国外のサーバから日本国内の利用者へサービスAを提供した場合には、日本の特許権は及ばず非侵害となる可能性があった。 しかし、2025年の最高裁判決では**「一定条件を満たす場合には、実質的に日本国内で行われた行為と評価され、日本の特許権侵害が成立し得る」**との判断が示された。 本記事では、この最高裁判決の概要を紹介するとともに、その背景にあるドワンゴの特許取得戦略についても考察する。 ドワンゴ対FC2事件最高裁判決 ドワンゴは動画配信サービス「ニコニコ動画」を提供しており、動画再生時間に合わせてコメントが流れる機能は、多くの人が目にしたことがあるだろう。 ドワンゴはこのコメント表示機能について特許権を取得しており、日本向けに動画配信サービスを提供していたFC2(米国法人)に対して、2件の特許権侵害訴訟を提起した。 そして、2025年3月3日、それぞれについて最高裁判決が下されている。 詳細については、以下の判決を参照いただきたい。 第1訴訟:令和5年(受)第14号、第15号 特許権侵害差止等請求事件 令和7年3月3日 第二小法廷判決 第2訴訟:令和5年(受)第2028号 特許権侵害差止等請求事件 令和7年3月3日 第二小法廷判決 本件では、FC2の動画・コメント配信用サーバが米国に設置されていたことから、属地主義の下でも日本の特許権侵害が成立するかが主要な争点となった。 判決の概要 最高裁は、国外のサーバから日本国内の利用者へプログラムを配信する行為であっても、一定の場合には日本の特許権を侵害し得るとの判断を示した。 具体的には、 利用者が動画視聴ページにアクセスすると自動的にプログラムが配信されること そのプログラムにより、日本国内の端末上で発明の効果(動画とコメントの表示範囲を調整し、コメントを読みやすくする機能)が実現されること 特許権者の利益に経済的な影響を及ぼすこと(経済的利益が日本国内に及ぶこと) を重視しており、その上で最高裁は プログラムの発明:国外サーバから日本国内への配信は「電気通信回線を通じた提供」(特許法2条3項1号)に該当する 装置の発明:日本国内で装置を完成させるためだけに用いられるプログラムを国外から配信する行為は、間接侵害における「譲渡等」(特許法101条1号)に該当する システムの発明:国外サーバから日本国内へプログラムを配信し、日本の端末と国外サーバとを含むシステムを構築することは「生産」(特許法2条3項1号)に該当する と判断した。 判決文からの抜粋 参考として、第1訴訟判決の一部を抜粋する(第2訴訟にも同趣旨の判示がある)。 ・・・電気通信回線を通じた国境を越える情報の流通等が極めて容易となった現代において、プログラム等が、電気通信回線を通じて我が国の領域外から送信されることにより、我が国の領域内に提供されている場合に、我が国の領域外からの送信であることの一事をもって、常に我が国の特許権の効力が及ばず・・・とすれば・・・特許法の目的に沿わない。そうすると、そのような場合であっても、問題となる行為を全体としてみて、実質的に我が国の領域内における「電気通信回線を通じた提供」に当たると評価されるときは、当該行為に我が国の特許権の効力が及ぶと解することを妨げる理由はないというべきである。・・・ 近年では、インターネットサービスのサーバが海外に設置されていることは珍しくない。 本判決は、そのような技術環境を踏まえ、サーバの所在地という形式面だけでなく、実質的に発明が日本国内で利用され、特許権者の日本での利益に影響を及ぼしているかという実態を重視した点に、大きな意義があるといえる。 特許権取得の戦略 上記の通り、ドワンゴは動画配信サービスにおけるコメント表示機能に関する特許権を取得していた。 もっとも、大元となる原出願(特願2007-053347)では、配信サーバ側に第1のコメント情報記憶部を設けるとともに、端末装置側にも第2のコメント情報記憶部を設け、それぞれのコメント情報記憶部から表示情報を読み出す構成がクレームに記載されている。 つまり、サーバ側と端末側の内部処理まで含めて規定したクレームとなっているため、第三者のサービスを外部から観察しただけでは侵害の有無を判断することは容易ではなかったものと考えられる。 そこでドワンゴは分割出願を活用し、特許性を維持しつつ、第三者に対して侵害を立証しやすいクレームへ補正を行っている。 しかも、分割出願を何度も繰り返すことで、(原出願の出願当初/分割直前の明細書等に記載された事項の範囲内である必要はあるものの)社会情勢や競合他社のサービスを踏まえて権利範囲を調整できるように維持していたあたりは実に周到である。 第1訴訟、第2訴訟で講師された特許権はいずれも分割出願によって権利化されたものであり、それぞれ次のような特徴を有している。 分割出願(第1訴訟) 特許第4734471号 動画に対するコメントの少なくとも一部を、動画表示領域の外側かつコメント表示領域の内側に表示する点を特徴とするよう補正をしている。 これにより、コメント自体が動画に含まれているものではなく、ユーザによって投稿されたコメントであることを利用者が容易に認識できるという効果を主張している。 分割出願(第2訴訟) 特許第6526304号 動画中を水平方向に移動する第1コメントと第2コメントの表示位置が重ならないよう調整する点を特徴としている。 分割出願についての考察 これら2件の分割出願に共通する特徴は、他社サービスの画面表示を確認するだけで侵害の有無を把握しやすいクレームとなっている点である。 また、第2訴訟で行使された特許については、FC2のサービス内容を踏まえた形でクレームが調整された可能性も考えられる。 さらに、これらの特許については、その後も分割出願が継続されており、権利範囲を調整できる体制を維持していたことがうかがえる。 もっとも、分割出願を繰り返したとしても特許権の存続期間が延長されるわけではない。 そのため、これらのファミリー特許は2026年12月11日に権利満了を迎える予定である。
商標法第4条には「商標登録を受けることができない商標」が列挙されている。 その中でも実務上よく問題となるのが、商標法第4条第1項第11号である。 他人の登録商標と同一・類似であり、かつ指定商品・指定役務も同一・類似である場合には、商標登録を受けることができない、というものである。 この拒絶理由を受けた場合の主な対応としては、次のようなものが考えられる。 指定商品・指定役務を削除する 商標が同一・類似ではないことを意見書で主張する もっとも、引用された他人の登録商標が更新されずに消滅した場合には、この拒絶理由は解消される。 他人の登録商標が消滅すると登録できる理由 特許の場合は、たとえ権利が消滅していても、公知技術として新規性・進歩性の判断に用いられる。 そのため、一度消滅した特許と同じ発明について新たに特許を取得することはできない。 これは、一定期間の独占権と引き換えに技術を公開し、権利期間満了後は誰でも自由に利用できるようにすることで、産業の発達を図るという特許制度の目的によるものである。 一方、商標制度の目的は、商品・サービスの出所表示機能を保護し、業務上の信用を維持することにある。 そのため、商標権者が商標を使用しなくなり、更新もしないのであれば、その商標を独占させ続ける必要性は薄くなる。 したがって、商標権が消滅した後は、他の人が同じ商標を出願し、他の拒絶理由がなければ新たな権利者となることができる。 なお、登録前の先願についても、放棄・取下げ・却下があった場合には、先願を理由とする拒絶理由は解消される(商標法第8条第3項)。 以前は消滅後も1年間登録できなかった 以前の商標法第4条第1項第13号では、商標権が消滅しても、消滅後1年間は同一・類似商標の登録を認めないという規定が存在した。 これは、商標の使用によって形成された信用は、使用を止めても一定期間は残るため、その間に第三者へ登録を認めると出所混同のおそれがあると考えられていたためである。 しかし近年では、製品ライフサイクルが短くなり、早期の権利取得に対するニーズが高まった。 その結果、「1年間登録できない」という制限は権利取得を不必要に遅らせるとして、この規定は削除されている。 消滅しそうな商標を狙って出願する場合の注意点 商標の審査では、審査中に引用商標が消滅した場合でも、その時点で拒絶理由は解消される。 そのため、「引用商標はもうすぐ更新期限だから、とりあえず出願してしまおう」と考えたくなるケースもある。 しかし、商標出願をすると、通常は出願から2、3週間程度経過後に出願内容が一般公開される。 その結果、これまで更新するつもりがなかった商標権者が公開公報を見て、「他社も欲しがっているようだ。やはり更新しておこう。」と考え、更新手続きを行う可能性もゼロではない。 もちろんケースバイケースではあるが、更新期限が近いのであれば、ギリギリまで出願を待った方が安全な場合もある。 もし、満了を迎えそうな他社商標の存在を理由に拒絶理由を打たれた場合は、意見書に以下のような文面を入れておくことも考えられる。 引用商標については、更新手続きがなされておりません。したがいまして、引用商標の存続期間の満了後6月経過後、商標原簿で存続期間の満了が確認された場合は、商標法第4条第1項第11号には該当しなくなったものとしてお取り扱い下さいますよう、お願い申し上げます。 それでも制限が発生するケースがある もっとも、商標権が消滅したからといって、必ず登録できるわけではなく、他者の使用を排除できるとも限らない。 周知商標に該当する場合 前権利者が使用を続けた結果、その商標が周知となっている場合には、その周知商標と同一・類似であり、同一・類似の商品・役務について使用する商標は登録を受けることができない(商標法第4条第1項第10号)。 先使用権が成立する場合 また、前権利者が商標権消滅後も継続して商標を使用しており、一定の周知性を有している場合には、先使用権が認められる可能性がある(商標法第32条第1項)。 この場合、後から商標登録を受けた者は、混同防止表示を付すことを請求できる(商標法第32条第2項)。 「周知性」の基準は実は違う? ここで疑問が生じる。 商標法第4条第1項第10号で登録自体が拒絶されるのであれば、そもそも先使用権を認める必要はないのではないか。 この点については学説上、**両者の「周知性」は同じではない(非同一説)**という考え方がある。 この見解では、 商標法第4条第1項第10号の周知性は比較的高い知名度が必要 商標法第32条第1項の周知性は、それより低い識別力・周知性でも足りる とされる。 そのため、第4条第1項第10号に該当するほど有名ではなくても、第32条第1項による先使用権だけは認められるケースがあり得る。 中々複雑である。
特許権の取得に要する費用については、以下の記事で紹介した。 特許の取得~維持にかかる費用 「特許を取得するには、どのくらい費用がかかるのか?」 これから特許出願を検討している人にとって、最も気になる点の一つが費用ではないだろうか... ここでは、参考として商標登録にかかる費用について紹介する。 国内出願・登録時の費用 国内出願では、主に以下の費用が発生する。 特許庁へ支払う手数料 特許事務所へ支払う代理人費用(代理人に依頼する場合) 特許庁へ支払う手数料は、特許庁HPの産業財産権関係料金一覧に掲載されているが、金額は以下の通りである(2026年6月時点)。 登録料は一括納付(10年分)と分割納付(5年分)と選べ、一括納付の方が割安となる。 また、更新時の方が割高となる。 庁費用については、手続料金計算システムで簡単に計算できる。 代理人費用は、特許事務所や区分数によって異なるものの、出願手数料・登録手数料・成功報酬などを合わせて、おおむね2万円~20万円程度が目安となる。 整理すると、以下の通りである。 項目 費用 商標登録出願 3,400円+(区分数×8,600円) 商標登録料(10年分) 区分数×32,900円 更新登録料(10年分) 区分数×43,600円 代理人手数料 20,000~200,000円 例えば3区分で10年間登録し、10年間更新登録するなら、かなりざっくりだが30~50万円程度の費用といったところか。 ご存じかと思うが、特許とは異なり、商標は更新登録料を支払い続ける限り半永久的に権利を維持することが可能である。 外国出願時の費用 外国出願の場合も、各国官庁へ支払う費用、現地代理人費用、日本の代理人費用がかかる。 特に、複数国へ個別に出願すると、それぞれの国で現地代理人が必要になるため、費用が高額になりやすい。 そこで、3か国以上への出願を予定している場合は、代理人費用を大きく抑えられるマドプロ(マドリッド協定議定書)による国際出願を検討するとよい。 マドプロ出願では、主に次の費用が発生する。 日本の特許庁に支払う手数料 WIPOに支払う手数料 国毎の個別手数料(不要な国もある) 代理人に支払う費用 が発生する。 このうち、日本の特許庁およびWIPOに支払う手数料については特許庁HPで確認できる。 また、WIPOに支払う手数料および国毎の個別手数料は、WIPOのMadrid System Fee Culculatorを利用すると簡単に計算できる。 Madrid System Fee Calculator の使い方 Madrid System Fee Calculator にアクセス 実行したい手続き(新規出願、事後指定、更新など)を選択 必要事項を入力 出願年 基礎となる本国官庁(日本の場合は日本国特許庁) 区分(クラス)数 collective mark(団体商標)、certification mark(証明商標)または guarantee mark(保証商標)のいずれかの商標であれば、チェック 商標がカラーの場合はカラー手数料のオプションにチェック 指定国の選択 通常の商標であれば、団体商標・証明商標・保証商標の項目にチェックを入れる必要はない。 なお、日本の商標法では「guarantee mark」の制度は存在しないため、日本の出願人が該当するケースは基本的にない。 白黒商標であれば、カラー商標の項目も選択不要である。 計算結果は、最下部にスイスフラン(CHF)で表示される。
「特許を取得するには、どのくらい費用がかかるのか?」 これから特許出願を検討している人にとって、最も気になる点の一つが費用ではないだろうか。 特許取得には、特許庁に支払う費用だけでなく、特許事務所へ依頼する場合の手数料も発生する。 特許庁に支払う費用は、請求項数や権利維持期間、料金減免制度の利用可否などによって、必要となる金額は大きく変わってくるが、特許庁に支払う料金は公開されているため自分で計算できる。 その一方、特許事務所に支払う手数料は事務所ごとに異なるため、全体の費用感が分かりにくいと感じる人も少なくない。 そこで本記事では、2026年6月時点の料金をもとに、特許庁に支払う費用と特許事務所に支払う手数料の目安を整理し、特許1件当たりに必要となる総費用のイメージをまとめる。 特許庁に支払う費用 特許庁HPの産業財産権関係料金一覧にも掲載されているが、金額は以下の通りである(2026年6月時点)。 特許庁には手続料金計算システムもあるので、容易に計算することができる。 正規料金 料金減免あり(中小企業、大学等) 料金減免あり(中小スタートアップ企業、小規模企業) 出願料 14,000円(外国語書面出願の場合は22,000円) 審査請求料 138,000円+(請求項数×4,000円) 正規料金の1/2 正規料金の1/3 特許料(第1年から第3年まで) 毎年4,300円+(請求項数×300円) 正規料金の1/2 正規料金の1/3 特許料(第4年から第6年まで) 毎年10,300円+(請求項数×800円) 正規料金の1/2 正規料金の1/3 特許料(第7年から第9年まで) 毎年24,800円+(請求項数×1,900円) 正規料金の1/2 正規料金の1/3 特許料(第10年から第25年まで) 毎年 9,400円+(請求項数×4,600円) 第10年分は正規料金の1/2 以降は正規料金と同じ 第10年分は正規料金の1/3 以降は正規料金と同じ 請求項数、権利維持期間によって全体の費用感はかなり異なるが、例えば請求項が10個、10年まで権利維持するのであれば、50万円強となる。 特許事務所に支払う手数料 特許庁費用は自分で計算することができるが、特許事務所に支払う手数料は基本的に事務所に見積もりを出してもらう必要がある。 中には料金表を開示している事務所もあるので、その場合は相談前に概算を出すことも可能である。 概ね以下の表の金額というイメージだが、こちらは自らの経験則等に基づく数値なので、あくまで参考値としていただきたい。 一般的な料金レンジ 明細書作成手数料 250,000~400,000円 出願審査請求手数料 10,000~50,000円 中間処理手数料 200,000~400,000円 権利化手数料(成功報酬含む場合もあり) 50,000~100,000円 合計 51,0000~950,000円 1出願当たりの総費用 概算ではあるが、例えば請求項が10個からなる特許を10年間権利維持する場合は、100万~150万円程度となる。 また、外国にも出願するのであれば更に費用は上乗せされる点は言うまでもない。 外国は、基本的に現地代理人を利用することもあり、日本よりも手数料が高いことが殆どである。 そのため、日本に加え、PCT国際出願で米国、欧州、中国、韓国・・・と世界主要国で権利化するとなると1000万円(!)を超えることも珍しくはない。 全世界で発明の保護を図りたいのは山々ではあるが、医薬品のようによほど重要な特許である場合でなければ、実施国と懐事情とのバランスを踏まえて出願国を選定する必要があるだろう。
海外では、商標取得後も商標を実際に使用していることを証明するための「使用宣誓書」や「使用証拠」の提出が必要となる国が存在する。 この手続きを怠ると権利化や権利維持ができなくなる場合があるので、基本事項は押さえておきたい。 使用宣誓書とは 指定商品役務について商標を実際に使用していることを、商標権者(または出願人)が公式に宣誓する書面である。 もし指定商品役務の中に使用していないものが含まれる場合は、その商品や役務を削除する必要がある。 使用証拠とは 一部の国では、使用宣誓書だけでなく、商標が実際に商業的に使用されていることを示す使用証拠の提出も求められる。 使用証拠とは、消費者が商品サービスを購入する際に目にするものであり、商品サービスと商標との関係が明確に分かる形で使用されている必要がある。 実際には使用していないにもかかわらず、使用証拠を捏造して提出することは虚偽申告にあたるものとして、登録国の法律により罰せられる可能性がある。 例えば商標登録が取り消される原因となるだけでなく、商標権者の信用や、他の商標権の権利行使にも悪影響を及ぼし得るので、AI等で使用証拠を作るようなことはしてはならない。 使用宣誓等が必要な国 使用宣誓書や使用証拠が必要となる国は、以下の通りである(2026年6月時点)。 主要国としては米国が挙げられる。 国 提出物 直接出願 マドプロ経由 米国 使用宣誓書+使用証拠 登録後6月以内(使用意思に基づいた出願の場合。外国登録に基づいた出願なら不要)+登録から5〜6年の間+9〜10年の間+以後10年毎 出願時(使用意思の宣言書。使用証拠は不要)+米国登録から5~6年目+米国登録から9~10年目+以後10年毎 メキシコ 使用宣誓書 登録後3年目から3月以内+更新時 メキシコ登録日から3年後3月以内+国際登録の更新日から3月以内 プエルトリコ 使用宣誓書+使用証拠 連邦商標権はプエルトリコでも権利が及ぶため、米国と同じ? 連邦商標権はプエルトリコでも権利が及ぶため、米国と同じ? ハイチ 使用宣誓書+使用証拠 登録から5年経過後の3月以内 マドプロ非加盟 アルゼンチン 使用宣誓書 登録から5~6年目の間 マドプロ非加盟 フィリピン 使用宣誓書+使用証拠 出願から3年以内+登録後5年経過した1年以内+更新後1年以内+更新後5年経過した1年以内 国際登録日/事後指定日から3年以内+フィリピン登録から5~6年目+国際登録の更新から1年以内+国際登録の更新から5~6年目の間 インドネシア 使用宣誓書 更新時 出願時も更新時も使用証明等は不要 カンボジア 使用宣誓書+使用証拠 登録から5〜6年目+更新から5〜6年目 カンボジア登録から5〜6年目+国際登録の更新から5〜6年目 アルジェリア 使用宣誓書 更新時 国際登録更新時? モザンビーク 使用宣誓書 出願から5年毎 国際登録日/事後指定日から5年以内+国際登録の更新から5年以内毎 カーボベルデ 使用宣誓書 出願時+登録後5年毎の前後6月 出願時+国際登録後5年毎の前後6月 ベリーズ 使用宣誓書 出願時 直接出願と同じ? エスワティニ 使用宣誓書+使用証拠 更新時? 国際登録更新時? ご覧の通り、日本、中国、EU、韓国などでは、使用宣誓書や使用証拠の提出は不要である。 もっとも、日本では不使用取消審判請求、中国では不使用取消請求のように、未使用であることを理由とした取消請求がかけられた場合は、上の表に無い国でも商標を実際に使用していることを証明する資料が必要になる場合がある。 使用証拠に関する要件(米国) 使用証拠に求められる要件は国によって異なるが、代表例として米国を紹介する。 提出時期 使用意思に基づく出願や使用に基づく出願では、登録までの間に使用証拠を提出する必要がある。 さらに、登録後も 登録後5~6年目 登録後9~10年目 以後10年毎 に使用証拠の提出が求められる。 マドプロ出願や外国出願・外国登録に基づく出願であっても登録後の証拠提出は行わなければならず、米国は手続きが大変である。 使用認定の考え方 米国では、ライセンシーによる使用であっても、一定の条件下で商標使用として認められる。 一般消費者に広く公開されていないクローズな取引環境での使用であっても、商標使用と判断される場合がある。 また区分ごとに1つの使用証拠を提出すれば足りるが、追加資料の提出を求められることもある。 ただし、虚偽の申告をした場合には、全区分が取り消される可能性がある。 使用証拠として認められるもの 以下の表に、使用証拠として認められる例/認められない例をまとめている。 単に商標が記載されているだけでは足りず、商品やサービスとの関係が消費者に認識される形で使用されていることが求められる。 証拠として認められる例 証拠として認められない例 商品 商品やパッケージに商標が付された写真、商品・包装のタグ、ラベル 展示会での試作品(コンセプトカーなど)、技術紹介パネル等の展示、セミナー用資料、広告パンフレット、価格リスト、プレスリリース、SNSの広告バナー、名刺、社内業務を行うために使用される書類(請求書、送付状、保証書)、社名が入った文房具などのグッズ 役務 商標が掲載されたパンフレット、カタログ、Webページのスクリーンショット カタログを提出する場合の注意点 カタログを使用証拠として提出する場合には、注文フォーム、電話番号、住所、メールアドレスなど、商品を注文するために必要な情報を含んでいる必要がある。 Webページを使用証拠とする場合の要件 Webページが商品商標の使用証拠として認められるためには 商品の画像または説明があること 商品と関連付けられた商標が表示されていること 注文方法が示されていること の3点が必要となる。 商標と商品説明が離れていたり、多数の他の商標や無関係な情報が表示されていたりすると、商品との関連性が不明確となり、使用証拠として認められないことがある点には注意である。 注文方法としては、ショッピングカート、電話番号、メールアドレスなどが挙げられるが、単なる「お問い合わせ」ボタンやリンクだけでは、注文手段とは認められない。 また、以下のケースに当てはまると、その商標が「商品商標」ではなく、「小売サービス商標」の使用と判断されるケースもある。 ページ上部に商標が表示されている URLに商標が含まれている 同一ページ内に多数の他社商標が表示されている すると、本来登録された商標の対象商品とは異なること、すなわち対象商品について使用した証拠として認められない可能性がある。 このように、Webページを使用証拠としようとすると、ちょっとしたレイアウトの差で判断結果が変わってくるところが怖いところである。
商標出願では、1区分の中に含まれる類似群コードが多すぎると、特許庁から「本当にそんなに幅広い商品・役務について使用する意思があるのか」と疑問を持たれ、拒絶理由を通知される場合がある。 そこまで致命的な話では無いものの、実務で同じ状況になることもあると思うので軽く整理しておきたい。 商標における類似群コードとは 類似群コードとは、商品や役務(サービス)の類似関係を分類するために特許庁が付与しているコードのことである。 商標制度では、同じ区分内であっても、すべての商品・役務同士が類似するわけではない。そこで、互いに類似すると考えられる商品・役務をグループ化し、それぞれにコードを付けている。 例えば、 携帯電話機: 11B01 パーソナルコンピュータ :11C01 のように、それぞれ異なる類似群コードが付与される。 審査においては、商標そのものが似ているだけでなく、指定商品・役務の類似性も重要となるため、類似群コードは先行商標との抵触を調べる際の重要な目安として利用されている。 ただし、類似群コードが同じであれば必ず類似、異なれば必ず非類似というわけではなく、あくまで審査実務上の判断基準の一つである。 1つの商品に複数の類似群コードが付くことがある 類似群コードの数は、商品や役務の数と一致するわけではなく、単一の商品役務であっても複数の類似群コードが付与されることがある。 例えば、スマートフォンという商品には、11B01(携帯電話機)、11C01(パーソナルコンピュータ)という2つの類似群コードが付されている。 つまり、商品役務を1つしか指定していなくても、類似群コードは複数になることがある。 区分表にない表現を用いると類似群コード数が読みにくい 特許庁が公表している商品・役務名の区分表に掲載されていない独自の表現を使用することも可能である(商標法第6条第1項に基づき、商品・役務の内容及び範囲が明確である必要あり)。 独自表現が適切なものとなっているかは事前に特許庁の意見を伺くことができるのだが(確実性を保証するものではない)、どの類似群コードが付与されるか、またいくつ付与されるかは審査段階にならないと分からない。 このとき、次のような問題が生じることがある。 1区分の類似群コードが23個以上あると使用意思を問われる 1区分内に含まれる類似群コードが23個以上となる場合、審査官は出願商標の使用意思の有無について合理的疑義があるものとして、原則として拒絶理由が通知される。 もっとも、これは「出願人が指定した商品・役務について、実際に使用する予定があるのか」という点を確認するためのものであって、23個以上になったからといって直ちに登録できなくなるわけではない。 拒絶理由を受けた場合 もし拒絶理由通知を受けた場合は、以下のような対応が可能である。 指定商品・役務を削除して類似群コード数を減らす 使用予定を示す簡易な資料を提出する 使用予定を示す資料としては、事業計画書、パンフレット、ホームページ案、商品企画書などが利用される。 そのため、類似群コードが23個以上になったとしても、後から対応できるケースが多い。 ちなみに、出願当初から商標の使用又は使用意思に関する証明書類等を提出しておけば、拒絶理由は通知されないようである。 1つの商品役務だけで類似群コードが23個以上となる場合も 単一の商品役務を指定するだけでも、あっという間に類似群コードが23個以上となる場合もある。 代表例として、 飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供 という第35類の役務があり、この役務には、以下の通り実に47もの類似群コードが付されている。 一撃で拒絶理由が通知される数である。 類似群コード 28A01 28A02 28A03 28A04 29A01 29B01 29C01 29D01 30A01 31A01 31A02 31A03 31A04 31A05 31A06 31B01 31C01 31D01 32A01 32B01 32C01 32C02 32D01 32D02 32D03 32D04 32E01 32F01 32F02 32F03 32F04 32F05 32F06 32F07 32F08 32F09 32F10 32F11 32F12 32F13 32F14 32F15 32F16 32F17 33A01 33A03 35K03 もちろん、このようなケースでも、役務自体が明確であり、実際の使用意思が認められれば問題なく登録され得る。 まとめ 商標出願では、1区分内の類似群コード数が23個以上になると、使用意思について拒絶理由が通知される場合がある。 しかし、 23個以上になっただけで直ちに登録できなくなるわけではない 商品・役務を削除することで対応可能 使用予定を示す資料を提出する対応も可能 1つの商品や役務でも複数の類似群コードが付くことがある 役務によっては1つだけで47もの類似群コードが付される例も存在する といった点を踏まえると、類似群コード数が23個を超えること自体を過度に心配する必要はない。 特に、区分表にない独自の記載を用いる場合は、審査段階で想定外の類似群コードが付与される可能性もあるため、「23個を超えないよう厳密に管理する」というよりも、拒絶理由が通知された際に適切に対応するという姿勢で臨む方が実務上は現実的といえる。
新しい商品名やサービス名を検討していると、商標調査の段階で「既に他社が登録していた」というケースはありがちである。 その場合、基本的には別の名称やロゴへ変更するのが安全な対応となる。 もっとも、ブランド戦略上どうしてもその名称を使いたい場面もある。 そのような場合に検討される代表的な選択肢を整理する。 ###何はともあれ、「相手方の使用状況」の調査から どの選択肢を取るにしても、まず必要となるのが、相手方の登録商標の使用状況の確認である。 実際に現在も使用されているのか どの商品・サービスで使用されているのか どの程度市場で認知されているのか グループ会社やライセンシーによる使用はあるか といった調査結果によって、取りうる戦略が大きく変わる。 例えば、相手方が積極的に使用している商標であれば交渉中心となりやすい。 一方、長期間使われていないのであれば、後述する不使用取消審判も視野に入る。 ライセンスを受ける 最もオーソドックスなのが、権利者からライセンスを受ける方法である。 比較的実現可能性が高く、相手方との関係を維持しやすい点がメリットである。 一方、ライセンス料を継続的に支払う必要が生じる。 また、ライセンス契約の条件によっては使用範囲や品質管理などの条件が付く場合がある。 ライセンサーがビジネスに使っていれば、当然自分の商品サービスと混同する使い方はしてもらいたくないだろうし、多少の限定が入るのは致し方ないところである。 さらには、ライセンス契約終了時に名称変更を迫られる可能性もある。 長らく使って、ようやくブランドも育ってきたタイミングでの名称変更はかなり痛い。 というわけで、「とりあえず使いたい」という場面では有力だが、自社ブランドとして長期運用する場合は契約条件を慎重に確認する必要がある。 有名な実例としては、Appleが、インターフォン製造企業であるアイホンから「アイホン」の商標使用許諾を受けているケースがある。 権利を譲渡してもらう 相手方から商標権そのものを譲渡してもらう方法である。 こうすれば、ライセンス条件など気にせず、使用の自由度が非常に高まるわけだが、そもそも相手方が買い取りに応じるのかという問題もある。 商標権者が現在も商品サービス名としてガンガン使っていれば、譲渡はあまり期待できない。 しかも、相手方によっては、こちらの足元を見て譲渡金額を吹っかけてくる可能性もある。 というわけで、先方が商標を殆ど使用しておらず、かつそれなりに素性もしっかりした企業であることが前提となる選択肢かもしれない。 自社でも出願する 次に考えられるのが、自社でも商標権を取得することとなる。 しかし、通常は相手方の先行商標の存在を理由に権利化できないことが予測される。 相手の持っている商標と同一類似と思っているから、ライセンスや買い取りを考えているわけなので、それはそうだろう。 それでも、他社商標とは別に自社出願を登録させる方法として以下2つの方法が考えられる。 コンセント制度の活用 近年、日本でもコンセント制度が導入された。 これは、先行権利者の同意を得た上で、自社も同一・類似商標を登録できる制度である。 相手の同意は必要だが、それがあれば権利化できる・・・と事が進めば良いのだが、残念ながらそうは行かない。 特許庁側で、「これを登録したら、出所混同のおそれあり」と判断されれば、容赦なく拒絶理由が飛んでくる。 よって、先行商標との関係性を見極めた上でこの制度を利用するか判断しなければならない。 アサインバック ややテクニカルな方法として、アサインバック型のスキームもある。 具体的には、以下のようなステップで商標権を獲得する。 一旦自社名義で出願 出願人を相手方に変更 権利化(先行登録商標の権利者と、出願中の商標登録出願の出願人が同じとなるため) 得られた商標権を自分に譲渡してもらう こうすることで、コンセント制度と比べて権利化可能性は上がる。 コンセント制度が導入される前は、よく使われた手法である。 しかし、スキームが複雑であるので手間であるし、登録後の互いの使用形態によっては、結局出所混同の可能性が生じて揉める可能性もある。 よって、登録すればヨシ!ではなく、アサインバック後の運用も考えておかないといけない。 不使用取消審判 相手方が継続して商標を使用していない場合、不使用取消審判を検討できる。 具体的には、継続して3年以上日本国内において権利者が登録商標の使用をしていないという要件となる。 成功すれば障害となる商標を除去でき、その後自社で自由に出願可能となる点は大きいが、相手方と敵対関係になるというリスクも伴う。 また、商標を使っていないと思っていた相手方が使用証拠を提出してくる可能性もあり、その場合は失敗して関係悪化だけが残ることとなる。 そのため、相手方の使用状況の事前調査が非常に重要となる。 まとめ 他社の登録商標が存在していた場合、原則としては名称変更が安全であるが、どうしてもその商標を使用したい場合には、以下のような選択肢が存在する。 手段 メリット デメリット ライセンス - 実現可能性が高め - 相手方との関係を維持しやすい - 継続的なライセンス料の支払いが必要 - ライセンス条件に制約が付く可能性大 - 契約終了時の名称変更リスクあり 権利譲渡 - 自由に使用できるようになる -譲渡を拒まれる可能性大 - 譲渡金が高額となる可能性あり 自社出願(コンセント制度) - 自社でも権利保有できる - 登録されるとは限らない - 出所混同を生じない使い方が必要 自社出願(アサインバック) - 自社でも権利保有できる - コンセント制度よりも権利化可能性大 -手続き面の負担大 -登録されるとは限らない - 出所混同を生じない使い方が必要 不使用取消審判 - 成功すれば、自由に使用・登録できる - 相手方との関係性悪化 - 取消が認められない場合あり もっとも、どの手段を取る場合であっても、最初に重要なのは「相手方が実際にどう使用しているか」の調査である。 使用実態によって、交渉戦略も、法的手段も、大きく変わってくるからである。
契約書には、契約終了のトリガとして「解除」「解約」「満了」という言葉が並んでいる。 どれも「契約が終わる」という点のみに限ればでは同じだが、終了の際の条件やその後に発生する義務が異なるので、その意味するところはきちんと理解しておきたい。 契約の解除とは 契約が有効に成立した後、契約の当事者の一方が解除権を有する場合に相手方に対する意思表示によって契約関係を解消することをいう(民法540条)。 端的に言うと、契約が最初から無かった状態にするということとなる。 最初から契約が無かったことになるため、原則として原状回復義務が生じ、契約関係を解消する時点までにやり取りしたものは返還しなければならない(民法545条1項)。 その際、金銭の返還をする場合には利息を付さなければならない(民法545条2項)。 また、金銭以外の契約の目的物から経済的な利益が生じていた場合も返還しなければならない(民法545条3項)。 契約の解約とは 契約期間の途中から、将来に向かってのみ契約関係を解消することをいう。 解除とは異なり、解約時までの契約関係は有効のままとなる。 したがって、原状回復義務は発生しないが、契約内容によっては違約金が発生することもある点は留意が必要である。 契約の満了とは 定められた契約期間が終わり、当然に契約が終了することである。 契約期間中に解除や解約がなく、契約更新もしなければ契約満了となる。 大抵の契約は満了により終了するわけだが、ここで契約に自動更新条項があると、気付かないうちに更新されてしまうことがあるの点は要注意である。 とはいえ、「逆に知らないうちに契約が終わっていた」、というリスクも起こり得るため、契約内容によって自動更新条項は適宜入れ込むことを検討しておきたい。 存続条項について 残存条項とも呼ばれるが、これは契約終了後も有効とする条項を規定するものである。 秘密保持や損害賠償、知的財産権、合意管轄、準拠法といった条項を適切に残さないと、契約終了後に情報漏えいや責任追及不能などの重大なリスクが発生するため、これらの条項に関しては有効とするわけである。 解除は「契約が最初から無かった状態にする」と説明したが、存続条項については「本契約終了後も、第●条⋯の規定は、引き続きその効力を有するものとする。」という記載が通常であり、たとえ解除であっても存続条項は有効となると解される。 ただし、秘密保持に関しては半永久的に義務を課されると管理コスト等が大きくなってしまうため、例えば契約終了後2〜5年のレンジで有効とするといった内容とすることも多い。
契約書を読んでいると、「保証」「補償」「賠償」と、似たような言葉が頻繁に登場する。 いずれも「責任」や「損失」に関係する言葉だが、意味も役割も明確に異なるので、それぞれをシンプルに整理するとともに、契約書中での例文も載せておく。 保証とは 保証とは、一定の事実や状態が間違いないと請け合い、責任を持つことを意味する。 したがって、保証が事実と異なれば契約違反になる。 開発委託契約等においては、知財保証の条項で用いられることが多い。 知財保証に関して興味があれば、以下の記事を参考にしてみてほしい。 知財保証を受け入れるリスクと実務上の落としどころ 製品売買契約において争点となりやすい条項の一つが「知財保証」である。 知財保証は、第三者の特許権等を侵害しないことを売主が保証するものであ... 例文:乙は、本件業務の遂行及び本件業務の遂行に基づく成果物が、第三者の知的財産権その他の権利を侵害しないことを保証する。 補償とは 補償とは、適法な行為や天災などよって生じた損害に対し、金銭などで補うことを指す。 しかし、実際は適法・違法によらず、「補償」という用語を使っている契約書も多く見かける。 なお、大学との共同研究契約では「不実施補償」(大学と企業が共同で特許取得後、その特許を用いて事業化する企業が、実施しない大学に対して対価(補償金)を支払うこと)といった用語を聞くと思うが、どの大学の共同研究契約書でも「不実施補償」という文言はなく、「実施料」という言葉を用いている。 例文:乙は、本業務に関連して第三者から甲に対して請求がなされた場合であって、当該請求が乙の責に起因するときは、当該請求により甲に生じた損害を補償する。 賠償とは 賠償は、損害を補填するという点では補償と共通するが、不法行為や契約違反など違法な行為に対する損害に対して埋め合わせを行うという点が補償とは異なる。 様々な種類の契約で損害賠償条項が設けられるが、秘密保持違反を理由とした損害賠償請求は困難であることから、一般的に秘密保持契約(NDA)において損害賠償条項が設けられることは稀である。 その辺りの詳細は、以下の記事で述べている通りである。 秘密保持義務違反された場合の現実的な対応 秘密保持契約(NDA)を締結したり、委託契約等で秘密保持条項を設けていたとしても、残念ながら情報漏えいが起きるときは起きる。 筆者も、以前... 例文:乙は、本契約に違反し、又はその責めに帰すべき事由により甲に損害を与えた場合には、甲に対し、当該損害を賠償する責任を負う。
グローバルに特許出願を行う場合、日本で生じた発明を取り扱っているとあまり意識しないところだが、場合によっては「第一国出願義務(外国出願規制)」が発生することがある。 これは各国の安全保障の観点から、自国で生まれた発明について無制限に国外出願することを制限する制度であり、違反した場合には特許無効リスクだけでなく刑事罰が課されることもある。 外国からもリモートで開発業務を行えるようになっている昨今では、発明者の中に、外国居住者が含まれる機会も増えているため、この義務を遵守するよう気を付けておきたい。 第一国出願義務が問題となる典型ケース 以下のような場合、外国出願規制の検討が必要になる。 外国で発明が完成した場合 外国居住の発明者が関与している場合 外国籍の発明者が含まれる場合 基本的な仕組み(各国共通の考え方) 多くの国では、以下のいずれかを満たせば外国出願が可能になる。 まず自国に出願する 一定期間経過しても外国出願禁止の通告を受けない、または明示的な許可を取得する ただし、この「一定期間」は国ごとに異なっており、また自国出願せずに申請して許可を得るパターンも存在する。 違反した場合のリスク 軽く見られがちだが、リスクは重い。 特許が無効化されるだけでなく、国によっては禁固刑・罰金などの刑事罰が発生するため、それなりに注意が必要である。 各国制度の比較一覧 主要国を横断的に整理すると、以下のとおりである。 国 対象発明 外国出願のための条件 米国 国内で行われた発明 - 米国出願から6月経過後に外国出願する(受理官庁をUSPTOとしたPCT出願でもOK) - 特許庁に請願書を提出し、承認を得る 中国 国内で完成した発明 国務院専利行政部門に秘密保持審査請求し、許可を得る ドイツ 国内で完成した発明 - ドイツ出願から4月(例外的に6月)経過後も秘密保持命令なし - 秘密保持命令を受けた後、防衛省に申請し許可を得る フランス 国内で行われた発明またはフランスの事業体による発明 - フランス出願から5月(延長あり)経過後も秘密保持命令なし - 防衛省に申請し許可を得る イギリス 居住者による出願 - イギリス出願から6週間経過後も秘密保持命令なし - 秘密保持命令を受けた後、セキュリティセクションに申請し許可を得る イタリア 居住者による出願 - イタリア出願から90日経過後も秘密保持命令なし - 特許商標庁に申請し、許可を得る スペイン スペイン国内で行われた発明、居住者による出願 スペイン出願後、秘密保持命令なし - 特許商標庁へ申請し許可を得る 韓国 韓国居住者による発明内容が国の防衛に利害関係を有する出願 - 政府の許可を得る マレーシア 居住者による出願 - マレーシア出願から2月経過後も第30A条(マレーシアに損害を及ぼす虞のある情報の公表禁止)に基づく指示を受けていない - 登録官の許可を得る シンガポール 居住者による発明またはシンガポール法人を出願人とする出願 - シンガポール出願から2月経過後も第33条(シンガポールの防衛又は公衆の安全に不利益な情報)に基づく指示を受けていない - 登録官の許可を受ける ベトナム ベトナム人またはベトナム企業に帰属する発明で、かつ国家防衛・安全保障関連発明のうち、国家機密リストに該当する発明 - 国防省または公安省の許可を得る インド 居住者による発明またはインドの出願人 - 外国出願の6週間以上前にインド出願し、かつ秘密保持命令なし - 特許庁に申請し許可を得る 第一国出願義務のある国が複数あった場合は? 複数の第一国出願義務条件が重なった場合、例えば米国で行われた発明であって、かつ発明者の中にインドの居住者がいる場合は、どう扱うべきだろうか? この場合は、両方の国に第一国出願するわけにはいかないので、少なくともどちらかの国で外国出願のための申請を行うこととなる。 上の例であれば、まずはインドに許可申請を出し、許可が得られた後に米国出願を行う(米国であれば、受理官庁をUSPTOとしたPCT出願でも可)ということとなる。 なお、インドで許可申請を出す場合はある程度技術内容を説明する書類を求められるものの、特許明細書までを準備する必要はない。 これが更に3国となった場合は、2国に対して許可申請を出しておき、両方の国から許可が得られた後に残り1国に対して出願すればよい。