商標の使用宣誓書・使用証拠
海外では、商標取得後も商標を実際に使用していることを証明するための「使用宣誓書」や「使用証拠」の提出が必要となる国が存在する。 この手続きを怠ると権利化や権利維持ができなくなる場合があるので、基本事項は押さえておきたい。 使用宣誓書とは 指定商品役務について商標を実際に使用していることを、商標権者(または出願人)が公式に宣誓する書面である。 もし指定商品役務の中に使用していないものが含まれる場合は、その商品や役務を削除する必要がある。 使用証拠とは 一部の国では、使用宣誓書だけでなく、商標が実際に商業的に使用されていることを示す使用証拠の提出も求められる。 使用証拠とは、消費者が商品サービスを購入する際に目にするものであり、商品サービスと商標との関係が明確に分かる形で使用されている必要がある。 実際には使用していないにもかかわらず、使用証拠を捏造して提出することは虚偽申告にあたるものとして、登録国の法律により罰せられる可能性がある。 例えば商標登録が取り消される原因となるだけでなく、商標権者の信用や、他の商標権の権利行使にも悪影響を及ぼし得るので、AI等で使用証拠を作るようなことはしてはならない。 使用宣誓等が必要な国 使用宣誓書や使用証拠が必要となる国は、以下の通りである(2026年6月時点)。 主要国としては米国が挙げられる。 国 提出物 直接出願 マドプロ経由 米国 使用宣誓書+使用証拠 登録後6月以内(使用意思に基づいた出願の場合。外国登録に基づいた出願なら不要)+登録から5〜6年の間+9〜10年の間+以後10年毎 出願時(使用意思の宣言書。使用証拠は不要)+米国登録から5~6年目+米国登録から9~10年目+以後10年毎 メキシコ 使用宣誓書 登録後3年目から3月以内+更新時 メキシコ登録日から3年後3月以内+国際登録の更新日から3月以内 プエルトリコ 使用宣誓書+使用証拠 連邦商標権はプエルトリコでも権利が及ぶため、米国と同じ? 連邦商標権はプエルトリコでも権利が及ぶため、米国と同じ? ハイチ 使用宣誓書+使用証拠 登録から5年経過後の3月以内 マドプロ非加盟 アルゼンチン 使用宣誓書 登録から5~6年目の間 マドプロ非加盟 フィリピン 使用宣誓書+使用証拠 出願から3年以内+登録後5年経過した1年以内+更新後1年以内+更新後5年経過した1年以内 国際登録日/事後指定日から3年以内+フィリピン登録から5~6年目+国際登録の更新から1年以内+国際登録の更新から5~6年目の間 インドネシア 使用宣誓書 更新時 出願時も更新時も使用証明等は不要 カンボジア 使用宣誓書+使用証拠 登録から5〜6年目+更新から5〜6年目 カンボジア登録から5〜6年目+国際登録の更新から5〜6年目 アルジェリア 使用宣誓書 更新時 国際登録更新時? モザンビーク 使用宣誓書 出願から5年毎 国際登録日/事後指定日から5年以内+国際登録の更新から5年以内毎 カーボベルデ 使用宣誓書 出願時+登録後5年毎の前後6月 出願時+国際登録後5年毎の前後6月 ベリーズ 使用宣誓書 出願時 直接出願と同じ? エスワティニ 使用宣誓書+使用証拠 更新時? 国際登録更新時? ご覧の通り、日本、中国、EU、韓国などでは、使用宣誓書や使用証拠の提出は不要である。 もっとも、日本では不使用取消審判請求、中国では不使用取消請求のように、未使用であることを理由とした取消請求がかけられた場合は、上の表に無い国でも商標を実際に使用していることを証明する資料が必要になる場合がある。 使用証拠に関する要件(米国) 使用証拠に求められる要件は国によって異なるが、代表例として米国を紹介する。 提出時期 使用意思に基づく出願や使用に基づく出願では、登録までの間に使用証拠を提出する必要がある。 さらに、登録後も 登録後5~6年目 登録後9~10年目 以後10年毎 に使用証拠の提出が求められる。 マドプロ出願や外国出願・外国登録に基づく出願であっても登録後の証拠提出は行わなければならず、米国は手続きが大変である。 使用認定の考え方 米国では、ライセンシーによる使用であっても、一定の条件下で商標使用として認められる。 一般消費者に広く公開されていないクローズな取引環境での使用であっても、商標使用と判断される場合がある。 また区分ごとに1つの使用証拠を提出すれば足りるが、追加資料の提出を求められることもある。 ただし、虚偽の申告をした場合には、全区分が取り消される可能性がある。 使用証拠として認められるもの 以下の表に、使用証拠として認められる例/認められない例をまとめている。 単に商標が記載されているだけでは足りず、商品やサービスとの関係が消費者に認識される形で使用されていることが求められる。 証拠として認められる例 証拠として認められない例 商品 商品やパッケージに商標が付された写真、商品・包装のタグ、ラベル 展示会での試作品(コンセプトカーなど)、技術紹介パネル等の展示、セミナー用資料、広告パンフレット、価格リスト、プレスリリース、SNSの広告バナー、名刺、社内業務を行うために使用される書類(請求書、送付状、保証書)、社名が入った文房具などのグッズ 役務 商標が掲載されたパンフレット、カタログ、Webページのスクリーンショット カタログを提出する場合の注意点 カタログを使用証拠として提出する場合には、注文フォーム、電話番号、住所、メールアドレスなど、商品を注文するために必要な情報を含んでいる必要がある。 Webページを使用証拠とする場合の要件 Webページが商品商標の使用証拠として認められるためには 商品の画像または説明があること 商品と関連付けられた商標が表示されていること 注文方法が示されていること の3点が必要となる。 商標と商品説明が離れていたり、多数の他の商標や無関係な情報が表示されていたりすると、商品との関連性が不明確となり、使用証拠として認められないことがある点には注意である。 注文方法としては、ショッピングカート、電話番号、メールアドレスなどが挙げられるが、単なる「お問い合わせ」ボタンやリンクだけでは、注文手段とは認められない。 また、以下のケースに当てはまると、その商標が「商品商標」ではなく、「小売サービス商標」の使用と判断されるケースもある。 ページ上部に商標が表示されている URLに商標が含まれている 同一ページ内に多数の他社商標が表示されている すると、本来登録された商標の対象商品とは異なること、すなわち対象商品について使用した証拠として認められない可能性がある。 このように、Webページを使用証拠としようとすると、ちょっとしたレイアウトの差で判断結果が変わってくるところが怖いところである。