企業同士で契約を取り扱う上ではあまり気にしなくても良いと思うが、未成年者と契約を締結したり、利用規約・プライバシーポリシーに同意してもらう際の留意点についてまとめておく。
「親の同意が必要では?」と思うかもしれないが、実際は同意を必要としないものもそれなりに存在する。
親の同意が必要・不要なケース
主親の同意に関係しそうな契約絡みのケースは、以下の通りである。
契約書の締結
以下の民法第5条にある通り、原則として、未成年者が締結する契約は、親権者など法定代理人の同意がなければ取り消し可能である。
(未成年者の法律行為)
第五条 未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。
2 前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。
したがって、契約を締結する側としては、親の同意が必要となる。
例えば、以下のケースで必要となる。
- 携帯電話契約(端末購入・通信サービス契約)
- サブスクリプションサービスの有料契約(動画配信・音楽配信など)
- 習い事や塾の契約
- クレジットカード・ローン等の金融契約
- 医療行為(手術や検査など、リスクを伴う場合)
一方、民法第5条3項では、以下のような例外が設けられている。
3 第一項の規定にかかわらず、法定代理人が目的を定めて処分を許した財産は、その目的の範囲内において、未成年者が自由に処分することができる。目的を定めないで処分を許した財産を処分するときも、同様とする。
「法定代理人が目的を定めて処分を許した財産をその目的の範囲内で使う場合」とは、例えば参考書、定期券の購入のための代金のことである。
「目的を定めないで処分を許した財産で、支払いができる場合」は、いわゆる小遣いが該当する。
したがって、以下のケースであれば法定代理人の同意は不要である。
- 参考書や文房具の購入
- 小遣いからの飲食物の購入
- 定期券や切符の購入(通学・通勤に通常必要な場合)
なお、民法第5条は強行規定なので、契約書で「法定代理人の同意は不要」と定めたとしても無効である。
この規定の適用を免れるとすると、未成年者保護の目的が果たせないためである。
利用規約への同意
利用規約は契約行為の一種に該当するため、未成年者は親の同意が必要となる。
※利用規約の詳細に関しては、以下の記事を参照のこと。
最近、様々なユーザ向けの自社サービスを展開することとなり、そのサービスの利用規約を作成する機会があった。 法律上、サービス提供者に利用規約...
利用規約では、未成年者の利用に関する条項を明確にし、親権者の責任についても適切に定めておくことが重要となる。
プライバシーポリシーへの同意
プライバシーポリシーは個人情報の取り扱いに関する説明であって、契約そのものではない。
それでは、原則親の同意は不要であるかというと、個人情報保護委員会のFAQには、次のように記載されている。
法定代理人等から同意を得る必要がある子どもの具体的な年齢は、対象となる個人情報の項目や事業の性質等によって、個別具体的に判断されるべきですが、一般的には12歳から15歳までの年齢以下の子どもについて、法定代理人等から同意を得る必要があると考えられます。
ということで、未成年という括りではなく対象年齢に幅があるのは気持ち悪いが、ある程度年齢が低い場合は親権者の同意が必要となる。
なお、利用規約の中にプライバシーポリシーの内容を含めることも可能ではあるが、個人情報の取り扱いを慎重に行うため、利用規約とは別にプライバシーポリシーを設けるのが通常となる。
その他年齢制限に関する規定
ただし、サービス事業者が独自に「◯歳未満は保護者の同意が必要」とポリシーに定めたり、規約で年齢制限をかけることはあり得る。
同意書の取得は必要?
民法上は「未成年者が親権者の同意を得ている」ことが重要で、同意の形式(口頭・書面)は問われない。
つまり、親が口頭で「いいよ」と言っていても法的には有効である。
とはいえ、事業者側は、後で「同意がなかった」と言われるリスクを避けるため、同意書への署名を求めるといったエビデンスを残すことが多い。
一方、アプリ・ネットサービスの利用登録では、「保護者の同意を得ました」にチェックを入れる方式等で良しとしているケースの方が多い。
このあたりは、同意に関するリスクと、同意書取得のコストとのバランスで決めているのが現実ではないかと思う。
おまけ(未成年者の年齢引き下げ)
ちなみに、2022年4月1日の民法改正により、成年年齢は20歳から18歳に引き下げられた。
このため、18歳未満は引き続き未成年者として扱われるが、18歳以上は親の同意なしに契約や進路決定が可能になっている。
一方、飲酒・喫煙・公営ギャンブルは、従来同様に20歳未満は禁止されている。
このため、関連する法律の名前も「二十歳未満ノ者ノ飲酒ノ禁止ニ関スル法律」等に変更されている。