英文契約書には日常の英語とは異なる独特の表現方法が多く、慣れないと読みづらいのだが、外国事業者との契約においては英文契約書を取り扱わざるを得ない。
本記事では、英文契約書のドラフトやレビュー時に実務上押さえておくべき最低限のポイントを備忘録として整理しておく。
筆者も実務を通じて知識をアップデートしているところなので、定期的に内容はブラッシュアップしていきたい。
用語の使い方
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条文構造を示す用語
- article, section:条
- paragraph:項
- item:号
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用語の定義
- 1文字目を大文字にする(例:”Agreement”, “Party”, “Confidential Information”)
- “the same shall apply hereinafter:以下同じ
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義務・権利を示す助動詞
- 義務を表す表現
- shallが一般的。willも義務を表すが、shallと混在する場合は義務の程度が弱くなる(法的拘束力が怪しくなる)。原則、shallで統一すること。
- 禁止を表すなら、shall not。must notは使わないこと。
- mustは使わない。mustが使われるのは「~でなければならない」というように、資格要件を表す場合。
- 権利を表す表現
- mayが一般的。be entitled toと表すことも。
- 努力義務を表す表現
- endeavor:~するよう努める
- shall endeavor:努力義務を負う
- best endeavors / best efforts:最大限の努力
- reasonable efforts:合理的な努力
- commercially reasonable endeavors / efforts:商業的に合理的な努力(経済的合理性を超える負担までは要求しない)
- 義務を表す表現
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条件・場合を示す表現
- in the event (that):~の場合
- subject to:~に従って、~を条件として
- notwithstanding:~にもかかわらず(優先関係を示す)
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優先関係を示す表現
- shall prevail, supersede, override:(条項、他の契約などが)他に優先する
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「~に定める」の表現方法
- set forth in, provided in, specified in, set out in, described in, prescribed in, stipulated in, stated in
- 契約文言としては set forth in や provided in が最も一般的
- written inはNG (書かれている、という意味になってしまう)
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目的の限定
- solely for the purpose, only for the purpose
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現状有姿(保証を伴わない現状有姿で製品等を提供する際に用いる)
- as is
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Hereで始まる契約特有表現
- hereof:本契約の
- hereto:本契約に対して
- hereby:本契約により
- hereunder:本契約に基づき
- hereon:本契約上に
- herewith 本契約と共に
- hereinafter 本契約以降(例:hereinafter called “Agreement”)
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包括表現(例示に限定されないことを明確にする)
- including but not limited to
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遵守義務の表現
- comply with, abide by, adhere to
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時間的要素の表現
- immediately:直ちに
- promptly:文脈に応じ、「速やかに」「遅滞なく」「直ちに」のいずれかの意味となる
- without undue delay:不当な遅延なく
- within reasonable time:合理的期間内に
- without delay:そのまま「遅滞なく」と訳しがちだが、「直ちに」「遅滞なく」両方の意味あり
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開始する
- commence
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上記の、下記の
- foregoing:上記の
- following:下記の
日本語訳は付けられる?
契約書の日本語訳を別紙として設けることは可能だが、あくまで英文契約書の内容が正であり、英語と日本語とで意味が相違する場合は英語の方が優先適用される旨の条項を設けておくこと。