ビジネスを展開する上では商品・サービス名に関係する商標には注意が働くだろうが、その商品・サービス名をWebサイトのドメインとしても用いるのであれば、その「ドメイン」の取り扱いについても配慮しておく必要がある。
商標とドメインの違い
まずは基本的な整理から触れておく。
ドメインとは何か
ドメインはインターネット上の「住所」であり、同一の文字列は世界に一つしか存在しない。
これは早い者勝ちで取得され、ブランド的な役割を持つことも多い。
ドメイン中の末尾にある「co.jp」や「.com」といった、 一般ユーザーが直接ドメインを取得できる末尾の文字列をパブリックサフィックスと呼ぶ。
パブリックサフィックスとしては、メジャーな「.com」が人気であり、既に多くのドメイン名が取得されていることから新たな取得難易度も高い。
また、パブリックサフィックスによって取得費用はまちまちである。
ドメイン取得は早いもの勝ちではあるが、「○○.com」○○の部分を既存のドメイン名と同じものとしつつ、パブリックサフィックスを変えれば(例:.netなど)、別途取得できるという特徴がある。
フィッシングサイト等で、パブリックサフィックスだけ変えたURLを見かけたことがあるかと思う。
商標とは何か
商標は、商品・サービス(役務)の出所を識別するための標識であり、国ごとに登録される権利である。
こちらも所定要件を満たせば早い者勝ちであり、既に同一・類似商標があれば基本的には登録はできない(コンセント制度を活用すれば登録も可能)。
両者の関係
重要なのは、ドメイン登録と商標登録は完全に別制度であるという点である。
例えば、先に同一・類似の商標登録が存在していても、その文字列のドメインが未取得であれば原則としてドメインは取得できてしまう。
つまり、正式にドメイン取得したはずの企業が、そのドメインの使い方によっては商標権を保有する企業から訴えられる可能性があるというわけである。
また、図利加害目的で、他人の商品・役務の表示(特定商品等表示)と同一・類似のドメイン名を使用する権利を取得・保有、又はそのドメイン名を使用する行為は、不正競争防止法違反となる(不正競争防止法第2条第1項第19号)。
したがって、他者が商標登録済の文字列に関しては、ドメイン取得することはお勧めしない。
また逆に、商標登録した企業であっても、その名称のドメインが別企業に取得されてしまっている場合もある。
よって、商標登録、ドメイン取得の際は、お互いの登録・取得状況について事前に調べておくのが望ましい。
ブランド管理としての一体運用
商標とドメインは、制度上は別でも、ブランドという観点では同一の資産であるため、一体的に管理することが望ましい。
つまり、ドメイン取得の際には商標登録の必要性についても検討するということである。
ドメインの商標登録の必要性判断
もし、単なるURL(アドレス)としてのみ使用する場合なら、商標的使用とはならず、商標登録は不要である。
一方、Webサイト上でブランド表示したり、広告やプロモーションで使用するのであれば、商標登録することが考えられる。
ただし、商標登録出願時には識別力の無いパブリックサフィックス(「.co.jp」「.jp」「.com」「.net」など)まで含める必要は無く、例えば「○○.com」であれば、「○○」の文字部分を出願するのが基本となる。
グローバル展開時の留意点
商標であれば、国によっては権利維持に使用実績が求められる点は注意である(米国など)。
各国の判断によるところだが、上記の通り、単なるURL(アドレス)として使用するだけでなく、実際の商品・サービス名として使用しているところまで求められる可能性があるのではないだろうか?
また、ドメイン観点ではブランド展開のために国別にドメインを押さえることも一案である。
例えば、「.com」とは別に、「.jp」(日本用)、「.cn」(中国用)を取得するという具合である。
商標とドメインの管理
商標権の維持には年金を納めつつ、国によっては継続使用する必要があるところ、ドメインに関しても更新費用を納める必要がある。
また商標とは異なり、ドメイン名ハイジャックを防ぐためのセキュリティ対策が必要となる。
模倣ドメインへの対応
ブランドが成長すると、問題になるのが「模倣ドメイン」である。
自社の商品・サービス名を使ったドメイン名を取得・使用し、ブランドイメージにあやかろうとする輩が現れるかもしれないので、その対策が求められる。
複数ドメインの取得
「.com」「.co.jp」といった主要ドメインを取得すれば、模倣ドメインが取得されるリスクは減らせる。
取得・更新費用は嵩んでしまうが、その他ドメインについても取得検討するとベターである。
監視の重要性
継続的なドメイン監視は有効な対策の1つとなる。
例えば、企業が提供するドメイン監視サービスを利用することで、自社ブランドやサービス名に類似したドメイン名の新規登録・運用状況を定期的にチェックし、フィッシング詐欺や商標権侵害などの不正利用を早期発見することが容易となる。
紛争解決手段
もし模倣ドメインを発見し、その廃止等を求めるのであれば、当事者間の交渉や裁判のほか、UDRP(Uniform Domain-Name Dispute-Resolution Policy)の利用が挙げられる。
これは、不正なドメイン取得に対して、ドメインの移転や廃止を求めることができる制度であり、裁判に比べて大幅な時間短縮とコスト節減が期待できるWIPOのサービスである。
ただし、単に第三者に取得されているだけでは足りず、「不正の目的(転売やなりすまし等)による登録・使用」が必要という制約がある点には注意である。
なおJPドメインについては、日本知的財産仲裁センターが認定紛争処理機関として紛争処理を担う。
もちろんUDRPの対象とならない正当な権利者間の紛争であれば、裁判による解決も選択肢となる。
ドメインを巡る主な裁判例
ドメイン使用を巡り生じた紛争として、次のようなものがある。
リシュ活.jp事件
- 事件番号:平成30年(ワ)第11672号
- 原告:学情株式会社(「Re就活」商標保有)
- 被告:一般社団法人履修履歴活用コンソーシアム(「risyu-katsu.jp」使用者)
裁判所は、ドメイン名と商標の類似性を認定し、被告による使用の差止等を認容した。
→ ドメインと商標の類似が問題となる典型例
マリカー事件
- 事件番号:平成30年(ネ)第10081号ほか
- 原告:任天堂株式会社
- 被告:株式会社MARIモビリティ開発(「maricar.jp」「maricar.co.jp」「fuji-maricar.jp」「maricar.com」使用者)
原告は「マリカー」の商標を登録していなかったため、不正競争防止法に基づく請求を行い、裁判所は、ドメイン使用の差止と、一部ドメインの抹消を認めた。
まとめ
商標とドメインは制度上は別物だが、その活用方法の共通性から、ブランド管理上は一体で考えるべきである。
そして、商標・ドメインいずれも以下の点が基本となるであろう。
- 使用・登録前に事前調査する
- 先に登録する
- 広く押さえる
- 継続的に監視し、有事に備える