外国向けの特許明細書を作成する様子

知財部に所属していると、先に出願した日本語明細書をベースに米国、欧州、中国へ外国出願を検討することは多いと思う。

ここでは備忘録として、特にソフトウェア発明について主要外国(米国、欧州、中国)向けのクレームや明細書を準備する際の留意点を整理しておきたい。

ただし、外国向け明細書に新規事項を追加することはできないため、日本語明細書作成の時点で「技術的課題」「技術的手段」「技術的効果」といった情報はしっかり記載するとともに、クレームで上位概念化した発明の実施形態となるものを複数記載しておくことが理想的である。

米国

  • MPF対策として、クレームで「means」表現は避け、代わりに「one or more processors configured to」と記載する。
    • 「module」「unit」「device」も、できるだけ避ける。「processor」の部分を「processing circuitry」としてもよい。
    • それでも、極力112条 (f)が適用されないよう、processorが機能を実行するための構造で修飾されるようにする。
  • プログラムクレームは「コンピュータ読み取り可能な不揮発性記録媒体(non-transitory computer-readable medium)」クレームに変更する。
  • 明細書では、先行技術(Prior Art)ではなく、関連技術(Related Art)という表現を用いるとともに、具体例を挙げすぎないようにする。
    • 先行技術(Prior Art)は「自認先行技術(Admitted Prior Art)」とみなされ、審査で拒絶理由に使われるリスクがある。
    • ただし、あまりに記載が不足すると、解決したい課題が不明確となり、101条対応(クレームが上の司法例外を含んでいても、追加の要素が司法例外を実用的な応用に統合している、等の主張)が困難となる点は注意。
  • ジェプソンクレーム(~において)は、Preamble部分が本発明を限定したり、自認した先行技術として扱われる可能性があるため、避ける。
  • ソフトウェア関連は、101条違反となることが多い。クレームそのものへの手当ては不要だが、明細書で反論できる情報をあらかじめ入れておくこと。詳細は以下の記事の通り。
米国特許法101条(特許適格性)

米国への特許出願では、101条について悩まされている人は多いだろう。 自分もその一人だ。 ここで備忘録として、101条違反を回避するための対...

EPO

  • 原則、1カテゴリ(物、方法、使用)あたり1独立クレームとすること。
  • 記録媒体クレームやプログラムクレームを設けてもOKだが、技術的な性質が認められることが必要。
    • コンピュータの内部処理を超えた技術的効果(CPU負荷低減、データ転送効率、センサ処理改善など)を明細書に記載すること(クレームに記載する必要はない)。
  • GUIに関する発明については、単なるレイアウトや表示方法に過ぎない場合はNGだが、ユーザー操作の技術的支援といった技術的貢献があれば特許となり得る。
  • マルチマルチクレームはOK。

中国

  • 物品の一種であることを明確にするために、「プログラム」クレームを「プログラム製品」クレームに変更すること。
  • 記載要件(サポート要件)に非常に厳格。クレームに記載した抽象的なステップに対し、明細書で十分な具体的アルゴリズムやフローチャートを提示すること。
  • 明細書では、「技術的課題」「技術的手段」「技術的効果」の三者を一貫させること。

クレームカテゴリ

装置 方法 プログラム
US ×(non-transitory computer-readable mediumなら○)
EPO 技術的性質が認められれれば○
CN ×(プログラム製品クレームなら○)

クレーム数/従属クレーム

独立クレーム数 総クレーム数 マルチクレーム マルチマルチクレーム
US 3まで無料 20まで無料 ○(追加料金発生) ×
EPO 原則1カテゴリ1独立クレーム 15まで無料
CN 総クレーム数に収まれば○ 10まで無料 原則×

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