つい最近、米国に行った商標登録出願に関して、ディスクレーム要求の通知があった。
あまり見慣れない通知ではあったが、制度が興味深かったので、備忘録として本記事でその概要をまとめておきたい。
商標のディスクレーム制度
ディスクレーム制度とは、商標の構成中に識別力の無い文字や図形等の要素が含まれている場合、その要素については出願人が独占排他的権利を要求しないことを宣言する制度である。
例えば、「〇〇 ✕✕」という結合商標であれば、全体として識別力があっても、「✕✕」の部分に識別力が無ければ、他人が「✕✕」の部分を使っても権利行使しない、というわけである。
かつて日本にも存在した制度なのだが、昭和34年に廃止となっている。
各国の採用状況
日本では廃止となったこの制度だが、各国を見渡すとディスクレームの採用国・不採用国が混在しているのが現状である。
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採用国(法律で規定)
- 米国、カナダ、イギリス、デンマーク、ノルウェー、スペイン、スウェーデン、香港、台湾、タイ、フィリピン、マレーシア、オーストラリア、ニュージーランド、ブラジル、南アフリカ
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採用国(実務で規定)
- 中国、アルゼンチン、インド、ベトナム
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不採用国
- 日本、EUTM※、ドイツ、フランス、オーストリア、スイス、イタリア、韓国、シンガポール、インドネシア
※加盟国の国内法でディスクレームを採用しない国が多かったため、廃止
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ディスクレームの対象
- 識別力のない部分にのみ認める国と、識別力の有無によらず認める国とがある。
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ディスクレームの主体
- 審査官からのディスクレーム要求が可能な国もあれば、出願人の意思で自発的にディスクレームを宣言する事のみ可能な場合な国もある。
個人的にはディスクレーム制度が欲しい
上述の通り日本では廃止となっているが、個人的にはディスクレーム制度を復活してもらったほうが嬉しい。
例えば、結合商標「〇〇 ✕✕」を考えると、要素「✕✕」にいまいち識別力が無さそうでも、実際に「✕✕」に識別力があるかどうかが曖昧なまま結合商標「〇〇 ✕✕」登録されるという事態が生じる。
すると、「✕✕」についても分離観察によって類否判断されるリスクが生じるわけで、知財部としては「〇〇 ✕✕」だけでなく「✕✕」に関しても使用を控えるよう判断する必要が生じる。
そんなとき、商標権者による「✕✕」のディスクレームがあれば、こちらは余計な不安を持たずに「✕✕」を使用することができる。
ただ、審査段階で出願人が自発的にディスクレームすることはあまり考えづらいので、少なくとも審査官か第三者の情報提供による「✕✕」のディスクレーム要求を認める必要がありそうである。
願わくば審査官に判断してもらいたいところだが、ディスクレーム制度廃止の理由の一つが「要部の認定の審査上の困難性」であったことを踏まえると、にわかに制度復活させるのは難しいのかもしれない。
しかし、AIの発達が顕著な現在であれば、ある程度の識別力の有無の自動判定な可能かと思われるので、何とかならないものだろうか。