商標登録する際、登録対象が文字だけからなる場合であって、何か特別なフォントで権利要求しないときは「標準文字商標」として登録することができる。

この制度だが、標準文字として登録しておけばあらゆるフォントの同一文字に対して権利の効力が及ぶと思われることがある。

ある程度の書体変更があった同一文字に対してはその通りなのだが、あらゆるバリエーションに対して対抗できるわけではない。

標準文字商標に対する誤解

以下、特許庁の「標準文字の指定に関するQ&A」を抜粋する。

Q2-2
実際に使用をする文字書体が決まっている場合も、標準文字で出願したほうがよいですか。 A2-2
標準文字の商標の文字書体は、特許庁長官が定めた文字書体です。
使用する文字書体が決まっている場合は、標準文字でなく、その文字書体で商標登録出願することをお勧めします。
なお、標準文字で商標登録がなされた場合、その商標権の及ぶ範囲は、登録された商標(標準文字)と同一又は類似の範囲であり、通常の商標登録と比較してその範囲の広狭に差異はありません。

上記から読み取れるように、標準文字として登録しても、特別にその権利範囲が広くなるものではない。

標準文字の文字商標と、フォント変更があった文字商標とは、外観・称呼・観念のいずれも共通することから、通常は、フォント変更があった文字商標に対しても権利侵害を問うことは可能かと思われる。

一方、通常とはかけ離れたデザイン性の高いフォントが用いられていたり、図形も含めたロゴとして使用された文字商標に対しては、外観が共通しないこと等を理由に権利範囲が及ばない、すなわち他社による使用を排除できない可能性がある。

例えば、「実務者のための知財法務」という標準文字商標が登録されていたとき、以下の画像のようなロゴの使用まで権利侵害を問えるか?というと、判断が分かれてきそうである。

「実務者のための知財法務」にデザイン性の高いフォントを当てはめたロゴ

このロゴを使いたいかという問題はとりあえず置いておく

したがって、もし自社でそのようなロゴとして使用することが決まっているのであれば、そのロゴ自体を商標登録すべきである。

更に、通常の文字としての使用も想定されるのであれば、標準文字商標としても登録しておけば万全である。

不使用取消審判による取消リスクは?

商標登録されてから3年以上日本国内で一度も使用されていない商標登録については、誰でも特許庁に対して取り消しを求めることができる。

ここで、標準文字の商標とフォントが異なる文字だけを使用していた場合は、どうなるだろうか?

この場合だが、登録商標そのもののみだけでなく、登録商標と「社会通念上同一」と認められる商標を使用している場合にも,登録商標の使用と認められて取消を免れることができる(商標法38条5項、50条1項)。

「社会通念上同一」と認められる商標は、商標法38条5項に以下が例示されている。

  • 書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標
  • 平仮名、片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであつて同一の称呼及び観念を生ずる商標
  • 外観において同視される図形からなる商標

書体(フォント)が異なっているだけの商標を使っているなら社会通念上同一と認められるが、普通のフォントとはだいぶ異なるデザイン性の高い文字で使用していたり、図形が追加された状態で使用している場合は、社会通念上同一とまではいえず、標準文字の商標登録が取り消される可能性はある。

その場合はロゴとして商標登録しておけば、ロゴのみの使用であっても取消は免れることができる。

###標準文字商標その他 以下はおまけだが、特許庁に記載されている必要な手続きや、標準文字として認められない例を関連情報として挙げておく。

標準文字商標とするための手続き

願書作成にあたって、標準文字のみによって商標登録を受けようとするときは、「【商標登録を受けようとする商標】」の欄の次に「【標準文字】」の欄を設けることが必要となる。

標準文字として認められない例

以下は特許庁に記載された標準文字として認められない例示群となる。

  1. 図形のみの商標、図形と文字の結合商標
  1. 特許庁長官の指定文字以外の文字を含む商標
  2. 文字数の制限30文字を超える文字数(スペースも文字数に加える。)からなる商標
  3. 縦書きの商標、2段以上の構成からなる商標
  4. ポイントの異なる文字を含む商標
  5. 色彩を付した商標
  6. 文字の一部が図形的に、又は異なる書体で記載されている商標
  7. 花文字など特殊文字、草書体など特殊書体で記載された商標
  8. スペースの連続を含む商標

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