知財保証を入れるかどうか考えている社員

製品売買契約において争点となりやすい条項の一つが「知財保証」である。

知財保証は、第三者の特許権等を侵害しないことを売主が保証するものである。

もし侵害紛争が生じた場合、訴訟対応、和解金、設計変更など、多大なコストと労力を売主が負担する可能性があるため、売主としては知財保証は可能な限り回避したいだろう。

しかし、知財保証を一切行わない姿勢を貫くと、リスクを嫌う買主側が「じゃあ他を当たりますわ」となり、そもそも製品の売買が成立しない事態となることもあり得る。

特に、買主が大企業である場合や、製品が事業の中核を担う場合には、売主に一定の知財保証を求めるのが一般的である。

このため、売主が積極的に製品を売り込む局面では、知財保証を「せざるを得ない」状況が生じる。

とはいえ、売主の立場で、少しでもリスクを減らせる手当てはできないものか?

免責事項の設定

知財保証せざるを得ない場合でも、何でも保証するのは売主側の負担が過多となることから、実務上は次のような免責事項を設ける場合がある。

  1. 買主の指示した設計・仕様等に起因する場合
    製品が第三者特許等を侵害した原因が、買主の指示した設計や仕様にある場合には、売主に全責任を負わせるのは不合理である。
    そのため、この場合は知財保証の対象外とすることが多い。

  2. 売主の責めによらない付加・変更に起因する場合
    納品後に買主側で製品に改造や追加を行い、それによって侵害が生じた場合も、それは売主の知るところではないので売主の責任としないのが通常である。

「買主の指示」か「売主の裁量」か

上記取り決めの際の問題となりやすいのが、1の「買主の指示」に該当するか否かである。

形式上は買主の指示に見えても、ある程度の技術的手段の選択を売主に委ねられていたのなら、それは買主の指示でなく、売主の裁量と判断される可能性がある。

そして、契約書上「設計・仕様は買主が決定する」と定めたとしても、すべてを明確に線引きすることは難しい。

結果として、設計・仕様の決定に対する寄与の度合いに応じて、売主と買主の責任範囲を按分する考え方が採られることもある。

もっとも、実際には、こうした責任分担はどちらが取引の継続を望んでいるのかといった企業間のパワーバランスによって左右される場面も少なくない。

更なる保証範囲の限定

知財保証の範囲として、更に以下の観点で限定することを検討しても良い。

  • 補償の対象となる損害賠償額に上限を設ける(例:契約金額を上限とする)
  • 故意または重過失がある場合に限定して補償責任を負う
  • 間接損害や逸失利益を補償対象外とする

これらは、知財保証そのものを否定するものではなく、リスクを「管理可能な範囲」に収めるための現実的な調整といえる。

損害軽減義務の位置づけ

知財の侵害紛争が発生した場合、買主側にも損害軽減義務が適用される、という考え方もある。

例えば、

  • 売主と協議せずに高額な和解をしてしまう
  • 交渉時の担当として、非常に高額な弁護士を選んでしまう
  • 回避設計が可能であるにもかかわらず放置する

といった行為まで売主が無制限に負担するのは不合理だから、ちゃんと買主も努力して、という考え方である。

これは特許法や民法に条文として規定はされていないのだが、債務不履行が生じた際の損害賠償賠責任の範囲や金額を決める上で考慮され得る。

特許侵害とは異なるが、損害軽減義務を認めた裁判例(最高裁判所平成21年1月19日判決)も存在する。

「知財保証しない」という選択肢もあり

とはいえ、自社で製品を積極的に売り込む立場でなく、知財保証リスクを許容できないのであれば、利用規約で「第三者の権利を侵害しないことについて、如何なる保証を行うものではない」と言い切ってしまうのも一案である。

そして、「当社の製品を利用してもらうには利用規約への同意を前提としており、個別の契約締結については対応しかねる」というスタンスを取るわけである。

特に、多くの顧客に提供するソフトウェア等であれば、このような対応をするのが現実的ではないかと思う。

また、特許等は保証しないが、著作権については保証する(依拠性が無いと著作権侵害は認められないという考え方。それでもリスクが無いわけではないが)という考え方もある。

おわりに

知財保証は売主にとって避けたい条項である一方、ビジネスを前に進めるためには受け入れざるを得ない局面もあろうかと思う。

ただそんな状況でも、リスク軽減策として、上記の通り免責事項を設けたり保証範囲を狭めるよう交渉することが考えられる。

知財保証に限らないが、契約交渉は事業活動のブロッカーとなることがあるため、どこまで相手方と交渉するのかは事前に事業部と足並みを揃えておきたいところである。

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