特許権侵害訴訟では、補助参加という制度がある。
訴訟の当事者ではない第三者が、当事者の一方を補助する目的で訴訟に参加できる制度である(民事訴訟法42条以下)。
例えば、完成品メーカーがその中に用いられている部品に関する特許権侵害を訴えられた場合、部品メーカーが訴訟でバックアップするようなケースである。
完成品メーカーが大事な顧客であれば、部品メーカーは補助参加すべきとも思われるが、負担などを考慮するとどうすべきか?という点について考察したい。
想定事例(A社、B社、C社)
典型的な構図として、次のような関係を想定する。
- A社:部品メーカー
- B社:A社から部品供給を受ける完成品メーカー
- C社:特許権者
問題となるC社保有の特許は、A社が供給する「部品」に関するものとする。
この場合、特許侵害品は部品にあるにもかかわらず、C社がA社ではなくB社を被告として訴えることは珍しくない。
理由は単純で、販売価格が高額となる完成品を扱うB社を訴えた方が、損害賠償額や和解金が高額となることを期待できるからである。
B社が被告となった場合のA社の立場
B社がC社から特許権侵害で訴えられた場合、A社は法律上「補助参加人」となる余地がある。
仮にB社が敗訴すると、その後A社はB社から特許侵害品の供給者として損害賠償の訴えを提起される可能性があるが、それを未然に防ぐためにA社がB社を補助するというわけである。
しかし、A社としては必ずしも補助参加に積極的ではない場合がある。
補助参加をすると、敗訴時に「利害関係人」としてB社に対する補償責任(損害賠償や和解金の負担)を事実上引き受けるリスクが顕在化するからである。
一方、顧客であるB社との関係性を悪化させたくなければ、全く対応しないわけにもいかない。
特に、問題となっている部品のことを最も理解しているのがA社である以上、実質的な防御はA社抜きでは成り立たないことが多い。
A社が補助参加人とならずにB社を補助する方法
上記のようなジレンマの中で、実務上よく採られるのが次の対応である。
- A社が弁護士を選任する
- その弁護士について、B社が正式に委任状を出す
- B社自身も、別途、自社選任の弁護士を立てる
こうすると、形式上の被告はあくまでB社であり、A社は補助参加人としては前面に出ない。
しかし、実質的な弁護活動はA社選任の弁護士が担うというわけである。
A社選任の弁護士は、問題の部品や技術内容を深く理解しており、非侵害論や無効論の構築において中心的な役割を果たす。
一方、B社側の弁護士は、訴訟全体の進行管理や、A社側弁護士が適切に対応しているかの「監視役」に近い立場となることが多い。
弁護士費用とその調整
上記のように、A社が実質的に補助する体制を取る場合、B社が負担した弁護士費用はA社が実質的に負担する取り決めがされることが多い。
このとき、A社は自ら選任した弁護士費用はともかく、B社が選任した弁護士の費用がどれだけ高額となるのか予測できない点が問題となる。
A社としては、単価が不明であるB社選任弁護士のタイムチャージが膨らむ事態は避けたい。
そこで、
- 主たる弁護活動はA社選任弁護士が行う
- B社選任弁護士の稼働は最小限に抑える
といった運用が、事前の合意や暗黙の了解として形成されることが多い。
補助参加は「しない」判断も戦略
このように、特許権侵害訴訟において、形式上の当事者と、実質的に訴訟を動かしている主体が一致しない場面は多い。
やけに被告側に弁護士が多く並ぶことがあるのは、その背後にサプライチェーン上の力学と、補助参加を巡る微妙な判断が存在していることが多い。
もちろん、グループ会社のような深い繋がりがあれば、補助参加するケースもあるかと思う。
一方、リスク管理の観点からは、弁護士を通じて完成品メーカーの訴訟支援はしつつも、補助参加しないという選択をするのは一案ではないかと思う。