独占禁止法違反を指摘され、頭を抱える社員

特許ライセンスを付与する際、できるだけ自社に有利な条件を付けたくなるところではあるが、あまりやり過ぎると独占禁止法上の「不公正な取引方法」に引っかかる場合がある。

では、具体的にどこまで要求を強めると問題となるだろうか?

ライセンスと独占禁止法の関係

独占禁止法第21条によれば、独占禁止法上の規定は知財権の権利行使には及ばないとされている。

それなら大丈夫なようにも見えるが、公正取引委員会の「知的財産の利用に関する独占禁止法上の指針」(平成19年9月28日制定)によれば、

「技術に権利を有する者が,他の者にその技術を利用させないようにする行為及び利用できる範囲を限定する行為は、外形上、権利の行使とみられるが、これらの行為についても、実質的に権利の行使とは評価できない場合は、同じく独占禁止法の規定が適用される。

とされており、ライセンス時において権利行使というにはやり過ぎな条件を付けると、独占禁止法が適用されることとなる。

どんな条件が「不公正な取引方法」に該当?

公正取引委員会の指針では、以下4分類を不公正な取引方法となり得る行為としている。

  1. 技術を利用させないようにする行為
  2. 技術の利用範囲を制限する行為
  3. 技術の利用に制限を課す行為
  4. その他の制限を課す行為

ライセンス上、特に問題となるのは3と4となる。

技術の利用に制限を課す行為

以下、公正取引委員会の指針を簡略化したに過ぎないが、リストとしてまとめたものとなる。

自社ビジネスを守りたいがために、必要以上にライセンシーの製造販売条件を縛ると問題となる場合が多い。

カテゴリ 概要
(1) 原材料・部品に係る制限 技術の性能・安全・秘密保持に必要な範囲なら許容。必要以上に購入先等を縛ると問題。
(2) 販売に係る制限 - 地域・数量制限:権利範囲内なら一定程度許容。消尽後や過度な制限は問題。
- 販売先制限:利用範囲制限とは扱われず、競争制限になりやすい。
- 商標使用義務:他商標の併用禁止でなければ通常問題なし。
(3) 販売価格・再販売価格の制限 価格拘束は競争制限が明白で、原則違法。
(4) 競争品の製造・販売又は競争者との取引の制限 競争技術の利用禁止は問題になりやすい。
ただしノウハウ保護に必要な範囲なら許容。
(5) 最善実施努力義務 努力義務に留まる限り問題なし。
(6) ノウハウの秘密保持義務 原則問題なし。
(7) 不争義務 場合によっては無効な権利の存続を助けるため問題となる。

その他の制限を課す行為

こちらの行為についても、概要をまとめてみた。

本来あるべきライセンス範囲を超えた要求をしたり、ライセンシーの研究開発に悪影響を及ぼすと問題となる。

カテゴリ 概要
(1) 一方的解約条件 他の競争制限を実効化する手段として使われるなら問題。
(2) 技術利用と無関係なライセンス料の設定 競争品の利用を妨げる場合は問題。
合理的な算定方法なら可。
(3) 権利消滅後の制限 権利消滅後も利用制限や支払いを課すのは原則問題。
(4) 一括ライセンス 不要技術を抱き合わせると問題(クロスライセンス含む)。
(5) 技術への機能追加 プラットフォーム支配を利用して競争技術を排除する場合は問題。
(6) 非係争義務 ライセンシーの権利行使を制限し競争を弱める場合は問題。
(7) 研究開発活動の制限 原則問題(将来の競争を阻害)。
ノウハウ保護のための必要最小限は可。
(8) 改良技術の譲渡義務・独占的ライセンス義務 原則問題(ライセンシーの研究意欲を阻害)。
(9) 改良技術の非独占的ライセンス義務 通常問題なし。
ただし第三者へのライセンス制限が付くと問題。
(10) 取得知識、経験の報告義 通常問題なし。
実質的にノウハウ提供義務になる場合は問題。

所感

ライセンス条件で真っ先に思いつくのはロイヤリティ料率だと思うが、価格が高額となること自体で「不公正な取引方法」となるケースは案外示されておらず(限度はあるだろうが)、それよりは寧ろライセンシーの行為を制限するような条件を付与する場合に当てはまることが多い印象である。

料率を抑える代わりに何かしらそれに代わるものを要求したり、場合によっては先方から提案されることもあるだろうが、契約を結ぶ前に、上の分類に当てはまらないかは気を付けておきたいところである。

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