特許出願の際、発明者の国籍、住所を記載する様子

中国での2026年法改正により、中国出願時には発明者全員の国籍情報が必要となった。

また、韓国、台湾の出願についても同様である。

そして特許事務を行っていないと意外と気付きづらいが、中国の場合は「身分証明番号」に関する要件もあり、企業実務において無視できない負担となりつつある。

本記事では、発明者の国籍情報が必要な国について確認てみたい。

中国では、発明者全員の国籍確認が必須に

中国特許出願では、これまで筆頭発明者が中国人の場合については、その発明者の身分証明番号(中国身分証明書のID番号)を出すことが求められていた。

身分証明番号は社員の個人情報であって、あまり知財部でも情報として管理したくないのが本音である。

このため、複数の発明者がいた場合は、身分証明番号等を出すことを避けるために敢えて中国人以外の発明者を筆頭発明者にする、という話も聞いたことがある。

しかし、2026年1月1日から施行された中国特許審査指南の改正により、筆頭発明者に限らず、発明者全員について国籍確認が必要となった。

更に、発明者の中に中国国籍のものが含まれる場合、筆頭発明者か否かによらず、身分証明番号の提出が求められることとなったのである。

これら国籍や身分証明番号が公開されるわけではないのだが、知財部の立場からすると、これまで以上に中国人発明者の身分証明番号を取得・管理する必要に迫られることとなる。

韓国・台湾も全員分の国籍情報が必要

中国だけでなく、韓国・台湾でも発明者全員分の国籍情報が必要となっている(ID番号の提示までは必要なし)。

こちらも、国籍情報は開示されない。

因みに、韓国では居住国の開示は不要だが、住所の記載は必要とされており、こちらは開示対象となっている。

しかし、会社が出願する場合で、その従業員などが発明者である場合には、個人住所でなく法人住所等を記載することも可である。

日本でも、例えば「…株式会社内」と会社を居所として記載することができるので、韓国の住所の記載ルールは日本と同じといえる。

台湾に関しては、2004年7月1日の改正特許法の施行により、発明者の住所を台湾智慧財産局へ申告する必要が無くなっている。

発明者の住所開示のメリットは無い?

出願人の住所は、発明内容に興味を持った第三者が問い合わせたり、ライセンス契約の希望を伝える場合等に連絡を取る必要があるため公開が必要、というのはまだ分かる。

しかし、個人情報の取扱いに敏感なこの頃においては、発明者の住所に関してはわざわざ公開する必要性は低いのではないかというのが個人的な感想である。

実際に、発明者個人の住所は会社住所で賄っているケースが殆どである。

個人発明家が出現する場合は、自宅の住所を掲載せざるを得ないケースが多いだろうが、会社員であれば、私書箱(郵便局や一部の民間企業で提供している郵便物受け取りサービス)を契約するとか実家の住所を使わせてもらうといったオプションも考えられる。

各国とも、公開公報に発明書の住所を載せない運用としてほしいところである。

実務上、発明者の個人情報はあまり扱いたくない

知財部が主体となって発明者の国籍情報を得ようとすると、人事部から情報を提供してもらったり、発明者本人から聞く必要がある。

これが中々骨が折れる。

中国出願における身分証明番号についても発明者本人に直接聞くのが手間であるし、発明者から「なぜそこまでID番号まで必要なのか」という疑問を持たれるケースも想定される。

しかし、センシティブな個人情報なので、できれば知財部内でもDBとして持ちたくは無い、というジレンマがある。

個人情報を厳重に管理することを前提に知財部が管理するか、それとも手間ではあるものの出願の度に人事部や発明者に問い合わせるかは、企業によっても方針が分かれるところかもしれない。

主要国のまとめリスト

最後に、日本と各国との発明者情報の必要性についてリスト化しておく。

参考として、米国における発明者の宣誓書に記載する事項も掲載する。

こうやって見比べてみると、日本は出願時に個人情報を求められない方に分類される国なのかもしれない。

国籍情報 住所 ID番号
日本 不要 必要 (会社住所可) 不要
中国 必要 不要 必要
韓国 必要 必要 (会社住所可) 不要
台湾 必要 不要 不要
米国 不要 必要(会社住所可)※ 不要

※発明者の居住地も必要(会社住所不可)。ただし都市名を記載すれば足り、〇丁目〇番地などの記載は不要。

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