企業に勤める開発者は、社内の規定(職務発明規定)に基づき自身の発明に関して報奨金・補償金を受け取ることが多い。
このとき、これら報奨金は「雑所得」で支払われることが多く、1月1日~12月31日までに受け取った額が20万円を超えると発明者自身で確定申告をする必要が生じる。
発明者によっては、確定申告を避けるため、本来は今年中に出願できたはずの発明を翌年に回す者もいると聞く。
特許は早い者勝ちの側面が強いので、知財部員としては早めに出願したいのは山々なのだが。。。
それはさておき、受け取った報奨金・補償金毎に所得の区分、確定申告の必要性等について整理しておきたい。
(知財部員も稀に自身が発明者として名を連ねることもあり、他人ごとではないので)
出願時報奨金
出願時報奨金は、職務発明規定で企業が原始取得するか否かで状況が異なる。
職務発明規定により使用者が原始取得する場合
多くの企業ではこちらが該当するのではないかと思う。
この場合、出願時に支払われる「出願補償金」は、発明者から会社への権利移転の対価ではないため、譲渡所得にはならない。
- 所得区分:雑所得
- 源泉徴収:不要
- 確定申告:年間20万円超で必要
使用者が特許を受ける権利を承継する場合
発明者が有していた特許を受ける権利を、会社に譲渡する形で出願に至る場合、この対価は譲渡所得に該当する。
- 所得区分:譲渡所得
- 源泉徴収:不要
- 確定申告:原則として発明者が行う
もっとも、近年はこの形態は少数派となりつつある。
登録時報奨金
特許登録時に支払われる登録時報奨金も、性質は出願時報奨金(原始取得ケース)と同様である。
- 所得区分:雑所得
- 源泉徴収:不要
- 確定申告:年間20万円超で必要
実績補償金(社内実施・ライセンス収入連動)
特許が社内で実施された場合や、第三者に実施許諾され、その実績に応じて支払われる補償金についても、結論は登録時報奨金と同じである。
- 所得区分:雑所得
- 源泉徴収:不要
- 確定申告:年間20万円超で必要
支給額が高額になりやすいため、確定申告漏れが生じやすい点には注意したい。
確定申告まとめ(職務発明規定で企業が原始取得する場合)
報奨金の殆どは雑所得に該当するが、出願時報奨金だけは以下の扱いとなる点に注意である。
- 職務発明規定により、使用者が特許を受ける権利を原始取得する場合:雑所得
- 原始取得でない場合:譲渡所得
1/1~12/31までの雑所得の受領額の合計が20万円を超えると発明者自身で確定申告が必要となるところ、譲渡所得の場合は20万円の中にカウントされないという点が、発明者にとって最も重要な実務ポイントとなる。
入社時に説明を受けたきりで中々見返すことがないかもしれないが、事前に職務発明規定はしっかりと確認しておきたい。
特許に至らない発明・工夫への報奨金
最後に、特許出願に至らないケースを整理しておく。
社内提案制度などにより、業務改善、品質向上、経費削減等に寄与した工夫・考案に対して支給される報奨金については、次のように区分される。
- 通常の職務の範囲内
- 所得区分:給与所得
- 年末調整の対象
- 原則として確定申告不要
- 通常の職務の範囲外(一時的支給)
- 所得区分:一時所得
- 特別控除(50万円)あり
- 条件次第で確定申告不要となる場合あり
- 通常の職務の範囲外(継続的支給)
- 所得区分:雑所得
- 年間20万円超で確定申告が必要
以前勤めていた会社では社内でノウハウ登録すると特許出願と同程度の報奨金が支払われていたが、その場合は給与所得としてカウントされていたんだな、と気付かされる。
ノウハウ登録は相対的に特許出願よりハードルが低く、それを利用していい小遣い稼ぎをしている開発部員もいたような…
貰える金額の序列は?
これは完全に企業によって異なるので一概に言えないが、概ね
実績補償金>登録時報奨金>出願時奨励金>ノウハウ登録報奨金
という序列とする企業が多い印象である。
実績補償金に関しては、例えば主力製品のコア技術として特許が使われていればかなりの額を貰えることもあるので、企業によっては中々夢がある制度である。
しかし、発明者自身で実施を証明する資料をかき集めなければいけないことが多く、これが中々骨が折れる。
また補償金が一定金額を超える場合は、その特許に支払う価値があるのかを判断すべく、取締役も含めた審査会で承認を得る必要があったりと、高いハードルを設けている企業もあるであろう。
一方、登録時報奨金や出願時報奨金は、発明を成せば得られる可能性がそれなりに高く、数をこなせば研究開発部員にとってはそれなりのお小遣いになる。
以前勤めていた企業では、家族用の銀行口座とは別に口座を作って報奨金の振込先に指定する強者もいたほどである。
登録時報奨金は出願時報奨金よりも高額となることが多い印象だが、複数国に出願した場合だと、1国目が登録となったら2国目以降は報奨金は出さない、という運用を取っている場合もある。
気になった方は、是非一度社内の職務発明規定を確認してみると良いだろう。