著作権によるプログラムの保護

ソフトウェアのプログラムは著作権によって保護され得ることは知っていたものの、知財部員として、その実務上の位置づけについて改めて整理しておきたいと考えた。

場合によっては、特許出願せずとも著作権で十分守れるケースもあるかもしれないので。

ここでは、特許権による保護との違いや、著作権登録制度がどのような場面で意味を持つのかについて、簡単にまとめてみる。

プログラムを特許権と著作権、どちらで保護するか

プログラムは特許権と著作権いずれでも保護可能だが、保護手段として著作権のみとするのか、または特許権も取得して守るのかを選択できるよう、それぞれのメリットを整理しておく。

特許での保護によるメリット

特許性のあるプログラムであれば、もちろん特許権を取得する方が権利範囲は広い。

特許ならアルゴリズムといった技術的な要素が保護対象となる一方、著作権の場合はコードそのものを保護するに過ぎず、もしアルゴリズムが同じでもコーディングの表現が異なれば保護されないためである。

一方、侵害立証の際にはアルゴリズムよりもコードが同一である点を立証するほうが容易な場合もあるし、コピーによる海賊版を取り締まるなら著作権で十分という考え方もある。

著作権での保護によるメリット

特許権の取得には決して安くない費用(日本では、特許事務所を経由すると権利化まで100万円はかかるだろうか)を要するが、著作権なら日本では基本的に登録は不要であり、費用もかからない。

日本も加盟しているベルヌ条約では、著作権は創作と同時に発生すると規定しているためである。

また、著作権はベルヌ条約加盟国で保護されるため、日本以外でも保護される点も大きい。

特許権を外国で取得しようとすると、更に工数や費用が重くのしかかる。

著作権の登録手続きを行う意味

一般の著作権は文化庁で登録することができるが、プログラムの場合は一般社団法人ソフトウェア情報センター(SOFTIC)が登録機関となる。

特許権ほどでないものの、登録には費用もかかる。

上述の通り著作権は登録せずとも発生するが、それならなぜわざわざ登録する必要があるのだろうか?

気になって調べてみると、大まかに理由が2つあるようである。

著作権を有することの証明を容易にする効果

著作権が発生するとは言っても、いつ、誰が創作したかを証明するのは意外と大変である。

もし自分が本当にオリジナルを創作したとしても、「貴方は本来の著作権者からデッドコピーをした者では?」と言われたら、どうやって証拠を出せばいいものか考えてしまうかもしれない。

このとき、著作権を登録しておくと、自分が正当な著作権者であることを容易に証明することができるというわけである。

第三者対抗要件の獲得(権利変動に関する)

著作権の権利に動きがある場合は、登録を要する。

具体的には、著作権の移転、質権設定、譲渡担保、信託といった登録により、第三者対抗要件を獲得することとなる。

この辺りは、特許権に近い運用かと思う。

委託契約で著作権帰属の記載があれば第三者対抗要件を獲得?

著作権法第17条第1項によれば、著作権は著作物を創作したものに帰属する。

一方、開発委託契約では、委託先が作成した成果物であっても委託元に著作権を帰属させる旨を記載することが多い。

著作権法第17条第1項は強行法規のため、実際は著作権はいったん委託先に著作権が原始帰属して、その直後に契約に基づいて委託元へ著作権が譲渡されるものと読み替えられる。

この場合、瞬間的に著作権の移転(譲渡)が発生することとなるが、契約書上で「著作権は委託元帰属」と書いてあれば著作権の登録は不要だろうか?

結論としては、この場合は登録が無いと第三者対抗要件は満たさないこととなる。

これを踏まえると、理想的には全ての成果物の著作権を登録すべきではあろうが、開発委託の度にそうするのは現実的ではないし、実際に登録しているといったケースも少なくとも周りでは聞いたことがない。

そのため、実務上は、委託元が希望した場合は委託先が著作権登録を行う協力義務を契約書で定めておくに留まるのではないかと思う。

契約書のひな型にも、そのような文言を忍ばせている企業は多いのではないだろうか。

外国で著作権登録が必要となるケース

米国で生じた著作権については、侵害訴訟を起こすのに登録が必要とされている。

ただし、ベルヌ条約違反とならないよう、外国で生じた著作権に関しては登録は義務付けていない。

したがって、日本で創作されたものなら、侵害訴訟の提起に登録は不要である。

その他、中国でも訴訟前に権利帰属証明として登録証が必要となる。

しかし、自分の経験ではこれまで著作権で訴訟を起こしたり起こされたケースに遭遇したことが無い。

登録するとコードも公開されてしまうのか?

プログラムコードは開示されないことも多いが、著作権登録によって公開されてしまうのでは?という懸念があるかと思う。

しかし、著作権登録の場合はプログラムのコードも提出するものの、さすがにコード自体は公開の対象外である。

登録時に提出したコードは、裁判所から提出命令あったときのみ開示されるという扱いである。

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