個人が契約を締結する場合、原則として本人が署名すれば足りる。
誰が契約当事者であり、誰の意思で合意したのかが明確であるため、この点で悩むことはあまりない。
しかし、契約の当事者が法人となると話は少し変わってくる。
法人は自然人ではない以上、自ら署名することはできず、必ず「誰か」が法人を代表して署名を行うことになる。
では、その「誰か」として署名するのは、常に社長でなければならないのだろうか。
部長や事業責任者が署名している契約書を見かけることも多いが、それは法的に問題ないのか?という点について考えてみたい。
まあ、現実としてそういった契約書があるので問題ないのは間違いないのだが、誰でもOKというわけではない。
署名者は社長以外でも良い
社長(代表取締役)には法により会社を代表する権限が与えられているため(会社法第349条第4項)、社長が署名をするのが一般的である。
しかし、法人契約だからといって、必ずしも社長が署名しなければならないわけではない。
部長や事業責任者など、対象となる契約について契約締結権限を有しているのであれば、その者が署名者となること自体に問題はない(会社法第14条第1項)。
極端な話、平社員でも新入社員でも契約締結権限さえあれば署名者となり得る。
重要なのは肩書きよりも、契約締結権限があるかどうかである。
契約締結権限の確認方法
「平社員でも契約締結権限があればOK」ではあるのだが、あくまでこれは社内情報となることから、契約の相手方からは契約締結権限の有無を把握することができない。
そのため、ちゃんと署名者に契約締結権限があることを相手方に示しておくことが望ましい。
具体的には、
- 本来の権限を有する本人から、署名者が代理である旨を明示したメールを送ってもらう
- 委任状を提出する
- 契約締結権限を定めた社内規程を提示する(全体を提示できない場合は、一部黒塗りにして出すこともあり得る)
といったエビデンスを提示する方法が考えられる。
署名者は複数人も可能
契約内容によっては、同一の法人から複数名を署名者として指定することも可能である。
例えば、代表者と担当部門責任者の連名とすることで、社内的な意思決定がなされていることをより明確にできる場合もある。
筆者の実務上でも、たまにそういった契約書を見かける。
押印は必須?
契約は、押印が無い(署名のみ)場合でも成立し得る。
しかし実務上は、契約を締結する意思があったこと、また契約内容を確認・了承したことを明確にするための手段として、署名に加えて押印が用いられるのが通常である。
形式そのものよりも、誰がどのような権限に基づいて合意したのかを意識して契約書を作成・確認することが重要になる。
ちなみに、契約書用のハンコをカタカナ表記で作っている外国人の強者も見かけたことがある。
契約締結までのやり取りは保存するべき
契約書締結までの交渉については、メール等のやりとりを通じて行われることも多い。
後日、契約書のみならず、こういったやり取りも契約の内容に関して疑義が生じたり紛争が生じたときの参考資料となり得るため、これらはPDF等で保存しておくことが望ましい。
特に、Emailは容量の関係から数年以内に内容を削除する設定としていることが多いため、先方との重要な契約関連の交渉についてはきちんと保存することがベストとなる。