EUで商標登録出願を行うには、直接出願かマドプロ経由での出願が必要となるところ、各国に対して個別に出願するだけでなく、EUTM制度(欧州連合商標)による出願を行うことができる。
EUTM制度とは
EUTM制度とは、EU全域に効力が及ぶ単一の商標登録をすることができる制度である。
かつては欧州共同体商標(CTM)と呼ばれていたが、2016年3月に改称されている。
EUTMのメリット
EU加盟27か国のすべてで個別に権利化し、更新する場合に比べると、大きな経済的メリットが得られる。
もし国毎に登録しても、1ヵ国あたりEUTMの半額程度の費用は必要なケースがあるので、EUTMはかなり費用を浮かせられることとなる。
また、更新手続きも1度で済むのが嬉しい。
欧州統一特許(Unitary Patent)と似たメリットではあるが、特許の場合は最低3~4か国で権利化しないと費用面のメリットが得られないので、経済的メリットはより大きいといえるかもしれない。
べルギー、オランダ、ルクセンブルクについては、個々の国へ直接出願することはできず、ベネルクス商標登録出願という手続きを踏む必要があるのだが、EUTMであればこの3国についてもカバーされる。
さらに、5年間商標を不使用の場合は取り消される可能性があるところ、EUTMの場合はEU加盟27か国のどこか1国で商標を使用していれば、不使用取消を免れられる。
なお要件を満たせば、マドプロを利用してEUTM出願をすることも可能である。
EUTMのデメリット
EUTMは一体不可分の権利なので、EU加盟国の一部のみを選択して出願することはできない。
したがって、1国で拒絶理由があった場合は全体で拒絶されるし、異議申立を受ける可能性も高まる点は注意である。
この辺りは、マドプロ出願でいうセントラルアタックのリスクと近い概念となる。
例えば、商標が加盟国のどこかの言語でその商品の一般名称となっていれば、その名称が他の加盟国では知られていない商標でも、拒絶されることとなる。
また、これは正確にはデメリットではないが、EU非加盟国、例えば英国について権利化したい場合は別途個別に出願する必要が生じる点は注意が必要である。
EU加盟国でも一部の地域に権利を及ばすことはできない
デンマーク王国はデンマーク本国、フェロー諸島、そしてグリーンランドの3つの地域で構成される。
ここで注意したいのは、デンマークはEU加盟国ではあるにもかかわらず、EUTMがフェロー諸島とグリーンランドには適用されない点である。
もしこれらの地域にも商標権の保護を及ばせたいのであれば、デンマーク王国全体を統括するデンマーク特許商標庁を通じた手続きが必要となる。
イタリアでも同様の話があり、EUTMはサンマリノ共和国やバチカン市国では有効ではないが、イタリアとの特別な条約により、イタリア国内商標庁に商標登録出願をすればサンマリノ共和国やバチカン市国でも保護される。
したがって、これらの地域にまで商標権の保護を及ばせるのであれば、デンマークやイタリアへ直接出願することが求められる。
しかし、今後グリーンランドについてはデンマークの自治領であり続けるかは不透明かもしれないが…