商標同士が類似する様子

商標のクリアランス業務を行い始めた当時は、自分の商標の類否判断にいまいち自信が持てず、外部弁護士の見解を伺うことが多かった。

商標業務に携わる前までは、外観、称呼、観念の類否から総合的に判断する、くらいの知識しか無かったが、今後はそうも言ってられなさそうと焦ったものである。

当時を思い出しながら、実務でも独力である程度の判断ができるよう、ここで商標の審査基準などを整理しておきたい。

判断基準

商標の類否は、出願商標及び引用商標がその外観、称呼又は観念等によって需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に観察し、出願商標を指定商品又は指定役務に使用した場合に引用商標と出所混同のおそれがあるか否かにより判断する。

判断に際し、指定商品又は指定役務における一般的・恒常的な取引の実情を考慮し、当該商標が現在使用されている商品又は役務についてのみの特殊的・限定的な取引の実情は考慮しないものとする。

商標の類否においては、全体観察のみならず、商標の構成部分の一部を他人の商標と比較して類否を判断する場合がある。

この点も重要なので、最後のパートで述べておきたい。

外観、称呼、観念の類否の認定

外観、称呼、観念それぞれの認定方法について触れていく。

特許庁が公開している商標審査基準「第4条第1項第11号(先願に係る他人の登録商標)」をまとめたに過ぎないが、ざっと内容を知りたい場合は以下を参照してみて欲しい。

外観類否の認定

外観とは、商標に接する需要者が、視覚を通じて認識する外形をいう。商標の外観の類否は、商標に接する需要者に強く印象付けられる両外観を比較するとともに、需要者が、視覚を通じて認識する外観の全体的印象が、互いに紛らわしいか否かを考察する。

例えば、「Japax」と「JapaX」のように、大文字と小文字の違い程度では、外観類似と認められる場合が多い。

称呼類否の認定

商標の称呼の類否は、比較される両称呼の音質、音量及び音調並びに音節に関する判断要素のそれぞれにおいて、共通し、近似するところがあるか否かを比較するとともに、両商標が称呼され、聴覚されるときに需要者に与える称呼の全体的印象が、互いに紛らわしいか否かを考察する。

以下の(ア)から(オ)の例示は、称呼が類似する例となるが、商標全体として、類否を判断したものではない点には注意してほしい。

(ア) 音質(母音、子音の質的きまりから生じる音の性質)に関する判断要素
  • 同音数の称呼+相違する1音が母音共通:「ダイマックス」「ダイマックス」
  • 同数音の称呼+相違する1音が子音共通:「プロセッティ」 「プロセッティ」
  • 同数音の称呼+相違する1音が清音/濁音/半濁音の差:「ビューレックス」 「ビューレックス」
(イ) 音量(音の長短)に関する判断要素
  • 相違する音が長音の有無:「モガレマン」 「モガレマン」
  • 相違する音が促音の有無:「コレクシト」 「コレクシト」
  • 相違する音が長音と促音の差:「コロネト」 「コロネト」
  • 相違する音が長音と弱音の差:「タカラト」 「タカラト」
(ウ) 音調(音の強弱及びアクセントの位置)に関する判断要素
  • 相違する1音がともに弱音:「ダネル」 「ダネル」
  • 弱音の有無の差:「ブリテックス」 「ブリテックス」
  • 同数音からなる比較的長い称呼で1音だけ異なる:「サイトロン」 「サイトロン」
  • 語頭において共通する音が同一の強音:「プロトン」 「クロトン」
  • 強めのアクセントの位置が共通:「SUNRICHY」 「SUNLICKY」
(エ) 音節に関する判断要素
  • 比較的長い称呼で1音だけ多い:「ビプレックス」 「ビプレックス」 
  • 一つのまとまった感じとして語が切れる: 「バーコラルジャックス」 「バーコラルデックス」
(オ) その他、称呼の全体的印象が近似すると認められる要素
  • 2音相違するが、上記に挙げる要素の組合せ:「コレクシット」 「コレスキット」
  • 相違する1音が拗音と直音の差: 「シャボネット」 「ボネット」
  • 相違する音の一方が外国語風の発音をするときであって、これと他方の母音又は子音が近似: 「TYREX」 「TWYLEX」
  • 相違する1音の母音又は子音が近似: 「サリージ」 「サリージ
  • 発音上、聴覚上印象の強い部分が共通:「ハヤ」 「パッヤ」
  • 前半の音に多少の差異があるが、全体的印象が近似:「ポピスタン」 「ホスピタン」

観念類否の認定

商標の観念の類否は、商標構成中の文字や図形等から、需要者が想起する意味又は意味合いが、互いにおおむね同一であるか否かを考察する。

  • 観念が類似する例:「でんでんむし物語」と「かたつむり物語」
  • 観念が類似しない例:「EARTH」と「terre」

以下、商標審査基準の解説を引用する。

(解説)当該指定商品に関する我が国の需要者の外国語の理解度からすれば、「EARTH」からは「地球」の観念を生じるが、フランス語「terre」(テール)からは「地球」の観念を生じないため観念は異なる。なお、商品名等にフランス語が一般に採択されている商品等の分においては、当該観念が生じる場合がある。

結局、どの項目が重要?

日本では、これらを総合的に判断するとしつつも、実務上は称呼が最も重要視されている

両商標の称呼が同一であると「類似」と判断される可能性が高く、2音以上異なると「非類似」と判断される可能性が高くなる。

1音違いの場合は、上述に紹介した事例に当てはまると「類似」とされる可能性に寄ってくるものと思われる。

なお、その次に外観が重要、最後に観念と続く傾向があると言われている。

結合商標の類否判断

結合商標の類否に関しては、結合商標全体として対比するほか、場合によっては分離した商標の構成部分の一部を対比する必要が生じるため、事情が複雑となる。

分離観察の可否については、以下の記事で記載しているので参考にしてみてほしい。

結合商標の分離観察の可否

自社で新しい製品を販売するとき、製品名について他社商標のクリアランスを行う上で、次のような場合に結合商標の類否判断に迷うことがある。 自社...

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